もふもふ好きのお姫様

魔人族国家バシレウスについて

　妖精族エルフとの会談を終えて集落を出た私たちは、今魔人族の住む国家、バシレウス王国へと馬車を進めています。ケイのいない馬車は空虚で寂しいですが、今は王女として任されている重大なお仕事が最優先です。
　私は雑念を払うために頭を振って、一応今から行く国の復習をします。

　魔人族の住む国家、バシレウス王国。
　誇り高き一族たる魔人族が形成する唯一の国家にして、魔王が国を治める王国です。国王は血筋によって受け継がれているのではなく、加護の強さによって受け継がれるという体制をとっているのにも関わらず、王は必ず敬われ、そして慕われているそうで、統一性や仲間意識が高い国であるということが伺えます。
　簡潔に言えば、見習うべき点がいっぱい存在している模範的な国だということです。荒れた地形にも関わらず、作物への争いもなく、戦争もしない平和な国。魔王が収めているというだけで恐れられている国。
　不思議がたくさん詰まっているバシレウス王国にも、私の好奇心はがんがん反応してしまいます。本当に、今から到着が楽しみです。ケイがいないのは残念ですが、それでも、気になるのは気になるのです。
　けれど、その好奇心も、頭の中にとある少女の顔が思い浮かぶと不安なものへと変化してしまいます。

「………魔人族国家か………………。」

　ついつい漏れた呟き口調の小さな聞き取れるかぎりぎりの言葉に、アインスお兄様がピクリと小さく反応します。そして、思案顔で私に対して呟きを返してきました。

「シャルの友人のアスィミ嬢は、確か魔人族のお嬢さんだったよね？」

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