もふもふ好きのお姫様

ピクニックは行くまでも楽しい 1

扉を出ると、アインスお兄様が本を片手に気怠げに立っていました。従者というか、護衛？のような風貌の男がアインスお兄様を肘でツンツンします。本に夢中で私達に気がついていないアインスお兄様を注意しているようです。そんなこと気にする必要ありませんのに、いっつも彼は私に気を使ってくれます。今度胃薬でも支給しましょうか。

「お待たせいたしました、アインお兄様。アルお兄様は………。」

「待ちくたびれてどっか行った。ケイ、おはよう。」

やっと気がついて私の方に視線を向けたアインスお兄様は、にっこりと微笑みを浮かべて顎をしゃくりました。おそらく顎を向けた方向にアルノルトお兄様は向かったのでしょう。………何故開いた窓の方に視線を向けたのか、ということはこの際気にした方が負けですね。

「おはよー、あいんおにーちゃん。」

「ん、じゃあ行こっか。馬車、表で待ってるから。」

「えぇ！今からとっても楽しみです。」

そう、今日は楽しんだもの勝ちですから、いろいろ細かいことは気にしてはいけないのです。スキップと呼べるのか分からない微妙なステップを刻みながら、ケイと手を繋いで歩いていると、衛兵達が微笑ましそうにこちらに向けて頭を下げます。………そんなに表情が崩れてしまっているのでしょうか。
そうこうしているうちに、あっという間に、私達はお父様とお義母様、アルノルトお兄様の乗っている馬車に到着してしまいました。

「おはよう、シャル。今日は絶好のピクニック日和だな。」

「おはようございます、お父様。晴天になってとっても嬉しいです！！」

わしゃわしゃと頭を撫でるお父様は心の底から嬉しそうです。

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