もふもふ好きのお姫様

戻ってきたメイソン

私とアインスお兄様の苦しい言葉によって、綺麗で夢の空間のような室内に、これまた苦しい沈黙が訪れました。

チクタクチクタクという時計が時を刻む音と、魔法によって香り高い紅茶と甘い茶菓子が用意される音だけが、室内で音を鳴らすことを許されているかのような、そんな非現実的な錯覚を覚えていると、唐突に空気の読めない静寂を破る大きな音が、室内に響き渡りました。

ガチャン！！

ビクッと私の身体が震えてしまい、ケイが僅かに身じろぎしました。

「……はぁー、はぁー、ただいま、はぁー、戻り、はぁー、はぁー、まし、た、はぁー。」

音を破った主は、案の定メイソンでした。
心臓に悪い登場の仕方は以後、控えて欲しいものです。

「ねぇメイソン、息を切らさずにもう1回言ってみようかー。」

悪魔なアインスお兄様が、王子様風ににっこりと笑って、息が切れ切れのメイソンに無茶を要求しました。
否、アインスお兄様は元々王子様でした。

「……アインお兄様、流石にそれはやり過ぎです。メイソンが可哀想ではありませんか。」

流石に可哀想に見えたので、私がストップに入ると、何故かアインスお兄様の笑みが深くなりました。

「どうして、はぁー、だろう、はぁー、はぁー、普段は意地悪で、はぁー、悪魔っぽくて、はぁー、魔王みたいな王女殿下が、はぁー、今は、はぁー、天使に見える……。」

「やっぱり、一息で先程の言葉を言い直してください。」

「ひぇ！！」

これはメイソンの自業自得です。誰が悪魔で魔王ですか！！

「あははは、メイソンは一言多いんだよね。」

アインスお兄様が私の言葉とメイソンの短い悲鳴に爆笑しました。

「教育が足りず、申し訳ございません。」

そして、アインスお兄様のお言葉にレムが頭を下げました。

「レムのせいではないよ。」

真面目に言い切ったアインスお兄様はレム馬鹿です。

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