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王女は良い子
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「殿下、少しだけ私達の昔話に付き合っていただけますか?」
レナの心にすっと入り込んでくる、優しい声音が響きました。
表情も今までの硬い人形のような無表情ではなく、僅かな微笑が含まれるもので、若草色の柔らかな瞳を持つレナのふわふわとした温かな性格が伝わってくる感じがしました。
「レナ!?」
この時やっと2人の正反対のような性格の違いに私は気が付きました。レムは硬くて真っ直ぐで嘘がつけなくて曲がったことが嫌いでしっかりとしているけれど感情的な性格。レナは柔らかくて優しくて情に脆くてのほほんとしているけれど状況をしっかりと把握して柔軟に行動できる理知的な性格。似ているようで正反対で補い合わないといけない性格だと当時の私はぼんやり考えたのを今でもはっきりと覚えています。
「……?わたし、いわれなくてもちゃーんとあいてのおはなしをきけますよ?」
そして、レナに対して全くの見当違いな返答をしました。
「ふふふ、そうですか。殿下は良い子ですね。」
レナは慈愛に満ちた温かな優しい笑顔を私に向けました。
「?あたりまえのことですよ?」
ですが、私には自分がなぜ“良い子”だと言われるのかが分かりませんでした。
「……当たり前のことを当たり前にできるからこそ、良い子なのです。」
今度はレムが説明しました。
困惑したかのような物言いに私が困惑しました。
「じゃあ、いーこでいてもだーれもほめてくれないわ。だから、わたしにいーこでいるひつよーなんてありません。でも、おとーさまたちにごめーわくはおかけしたくないからいーこでいる、ただそれだけです。
……わるいこでいたほーがおとーさまとおかーさまはわたしにかまってくれるのかな……。」
「殿下……。」
最後の言葉は誰にも決して聞かせる気のない独白に近しいものでした。
ですが、レムとレナはしっかりと聞き取れてしまったようです。
どうして分かったかって?
それは簡単。2人の私を呼ぶ声に、悲痛な憐憫の色がとても濃く混ざっていたからです。
*******************
読んでいただきありがとうございます♪♪♪
レナの心にすっと入り込んでくる、優しい声音が響きました。
表情も今までの硬い人形のような無表情ではなく、僅かな微笑が含まれるもので、若草色の柔らかな瞳を持つレナのふわふわとした温かな性格が伝わってくる感じがしました。
「レナ!?」
この時やっと2人の正反対のような性格の違いに私は気が付きました。レムは硬くて真っ直ぐで嘘がつけなくて曲がったことが嫌いでしっかりとしているけれど感情的な性格。レナは柔らかくて優しくて情に脆くてのほほんとしているけれど状況をしっかりと把握して柔軟に行動できる理知的な性格。似ているようで正反対で補い合わないといけない性格だと当時の私はぼんやり考えたのを今でもはっきりと覚えています。
「……?わたし、いわれなくてもちゃーんとあいてのおはなしをきけますよ?」
そして、レナに対して全くの見当違いな返答をしました。
「ふふふ、そうですか。殿下は良い子ですね。」
レナは慈愛に満ちた温かな優しい笑顔を私に向けました。
「?あたりまえのことですよ?」
ですが、私には自分がなぜ“良い子”だと言われるのかが分かりませんでした。
「……当たり前のことを当たり前にできるからこそ、良い子なのです。」
今度はレムが説明しました。
困惑したかのような物言いに私が困惑しました。
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……わるいこでいたほーがおとーさまとおかーさまはわたしにかまってくれるのかな……。」
「殿下……。」
最後の言葉は誰にも決して聞かせる気のない独白に近しいものでした。
ですが、レムとレナはしっかりと聞き取れてしまったようです。
どうして分かったかって?
それは簡単。2人の私を呼ぶ声に、悲痛な憐憫の色がとても濃く混ざっていたからです。
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