29 / 42
指輪選び③
しおりを挟む
「それにしても、君は誰だ?」
ミルフィーユの疑問をいち早く感じとって質問したのは、他ならぬルイボスだった。彼の質問を受けたカリンの花言葉を言った女性は、にししーと笑いながら、スケッチブックと万年筆を掲げて胸を張った。
「あたしはこの店1番の指輪職人さね」
「へえー、じゃあ、僕らの指輪のデザインをお願いできるかな?」
「任せとき。んでもってお嬢さん、メガネ外して。デザインできへんから」
ミルフィーユは大人しく眼鏡をのけた。すると、店員さんはふむふむと頷いて、さらさらとスケッチブックにデザインを描き上げて色鉛筆を有り得ないところから出して色を塗り始めた。
(今、色鉛筆の入っている筒が谷間から出てこなかったかしら………?)
ミルフィーユの心の疑問には誰も答えず、店員さんは描き上げた紙を見てふむふむと頷いている。
「こんなんはどうさね?」
「うん、いいね。僕は満足だよ」
「わたくしも、異議ありませんわ」
うっとりするくらいに美しく繊細で、それでいて大胆な指輪に、2人は1発で合格を出した。
「まいどありー、んじゃ、できたら連絡するさかい、取りにくるさね」
「あぁ、恩にきる」
「ありがとう、えっと………、指輪のサイズは計らなくていいのかしら?」
「あ、忘れとった」
そう言って2人の指のサイズを測ったおっちょこちょいな店員さんは、ささっと仕事場に戻っていった。
「それじゃあ、帰りましょうか」
ミルフィーユの言葉に頷いたルイボスは、ミルフィーユを馬車までしっかりとエスコートしていった。その時、妙にくっついていることに気がついたのは、苦労性な従者タフィー・オランジェットだけだった。
*******************
読んでいただきありがとうございます😊😊😊
ミルフィーユの疑問をいち早く感じとって質問したのは、他ならぬルイボスだった。彼の質問を受けたカリンの花言葉を言った女性は、にししーと笑いながら、スケッチブックと万年筆を掲げて胸を張った。
「あたしはこの店1番の指輪職人さね」
「へえー、じゃあ、僕らの指輪のデザインをお願いできるかな?」
「任せとき。んでもってお嬢さん、メガネ外して。デザインできへんから」
ミルフィーユは大人しく眼鏡をのけた。すると、店員さんはふむふむと頷いて、さらさらとスケッチブックにデザインを描き上げて色鉛筆を有り得ないところから出して色を塗り始めた。
(今、色鉛筆の入っている筒が谷間から出てこなかったかしら………?)
ミルフィーユの心の疑問には誰も答えず、店員さんは描き上げた紙を見てふむふむと頷いている。
「こんなんはどうさね?」
「うん、いいね。僕は満足だよ」
「わたくしも、異議ありませんわ」
うっとりするくらいに美しく繊細で、それでいて大胆な指輪に、2人は1発で合格を出した。
「まいどありー、んじゃ、できたら連絡するさかい、取りにくるさね」
「あぁ、恩にきる」
「ありがとう、えっと………、指輪のサイズは計らなくていいのかしら?」
「あ、忘れとった」
そう言って2人の指のサイズを測ったおっちょこちょいな店員さんは、ささっと仕事場に戻っていった。
「それじゃあ、帰りましょうか」
ミルフィーユの言葉に頷いたルイボスは、ミルフィーユを馬車までしっかりとエスコートしていった。その時、妙にくっついていることに気がついたのは、苦労性な従者タフィー・オランジェットだけだった。
*******************
読んでいただきありがとうございます😊😊😊
0
お気に入りに追加
319
あなたにおすすめの小説
【完結】追放聖女は最強の救世主〜隣国王太子からの溺愛が止まりません〜
●やきいもほくほく●
恋愛
「フランソワーズ・ベルナール、貴様との婚約は破棄させてもらう」
パーティーの場で、シュバリタイア王国の王太子……セドリック・ノル・シュバリタイアの声が響く。
その隣にはフランソワーズの義理の妹、マドレーヌが立っていた。
(さて……ここまでは物語通りかしら)
フランソワーズ・ベルナールは前世で読んだ小説の悪役令嬢だった。
そして『聖女』として悪魔の宝玉を抑えて国を守っていたのだが……。
(これですべてが思い通りに終わると思っているんでしょうが……甘いのよ)
マドレーヌに貶められて罪に問われたフランソワーズは国外への逃亡を決意する。
しかし逃亡しようとしたフランソワーズの前に現れたのは隣国、フェーブル王国の王太子ステファンだった。
彼はある事情からフランソワーズの『聖女』としての力を欲していた。
フェーブル王国で、国を救った救世主として持ち上げられ、ステファンから溺愛されるフランソワーズは幸せな日々を過ごす。
一方、フランソワーズを追い出したシュバリタイア王国は破滅へと向かう──。
最初に私を蔑ろにしたのは殿下の方でしょう?
水谷繭
恋愛
公爵令嬢ジゼル・ブラッドリーは第一王子レイモンドの婚約者。しかしレイモンド王子はお気に入りの男爵令嬢メロディばかり優遇して、ジゼルはいつもないがしろにされている。
そんなある日、ジゼルの元に王子から「君と話がしたいから王宮に来て欲しい」と書かれた手紙が届く。喜ぶジゼルだが、義弟のアレクシスは何か言いたげな様子で王宮に行こうとするジゼルをあの手この手で邪魔してくる。
これでは駄目だと考えたジゼルは、義弟に隠れて王宮を訪れることを決めるが、そこにはレイモンド王子だけでなく男爵令嬢メロディもいて……。
◆短めのお話です!
◆なろうにも掲載しています
◆エールくれた方ありがとうございます!
私をもう愛していないなら。
水垣するめ
恋愛
その衝撃的な場面を見たのは、何気ない日の夕方だった。
空は赤く染まって、街の建物を照らしていた。
私は実家の伯爵家からの呼び出しを受けて、その帰路についている時だった。
街中を、私の夫であるアイクが歩いていた。
見知った女性と一緒に。
私の友人である、男爵家ジェーン・バーカーと。
「え?」
思わず私は声をあげた。
なぜ二人が一緒に歩いているのだろう。
二人に接点は無いはずだ。
会ったのだって、私がジェーンをお茶会で家に呼んだ時に、一度顔を合わせただけだ。
それが、何故?
ジェーンと歩くアイクは、どこかいつもよりも楽しげな表情を浮かべてながら、ジェーンと言葉を交わしていた。
結婚してから一年経って、次第に見なくなった顔だ。
私の胸の内に不安が湧いてくる。
(駄目よ。簡単に夫を疑うなんて。きっと二人はいつの間にか友人になっただけ──)
その瞬間。
二人は手を繋いで。
キスをした。
「──」
言葉にならない声が漏れた。
胸の中の不安は確かな形となって、目の前に現れた。
──アイクは浮気していた。
婚約者に浮気されていたので彼の前から姿を消してみました。
ほったげな
恋愛
エイミは大学の時に伯爵令息のハルヒトと出会って、惹かれるようになる。ハルヒトに告白されて付き合うようになった。そして、働き始めてハルヒトにプロポーズされて婚約した。だが、ハルヒトはミハナという女性と浮気していた。それを知ったミハナはハルヒトの前から姿を消し、遠い土地で生活を始めた。その土地でコウと出会い・・・?!
[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜
桐生桜月姫
恋愛
シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。
だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎
本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎
〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜
夕方6時に毎日予約更新です。
1話あたり超短いです。
毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。
【完結】アッシュフォード男爵夫人-愛されなかった令嬢は妹の代わりに辺境へ嫁ぐ-
七瀬菜々
恋愛
ブランチェット伯爵家はずっと昔から、体の弱い末の娘ベアトリーチェを中心に回っている。
両親も使用人も、ベアトリーチェを何よりも優先する。そしてその次は跡取りの兄。中間子のアイシャは両親に気遣われることなく生きてきた。
もちろん、冷遇されていたわけではない。衣食住に困ることはなかったし、必要な教育も受けさせてもらえた。
ただずっと、両親の1番にはなれなかったというだけ。
---愛されていないわけじゃない。
アイシャはずっと、自分にそう言い聞かせながら真面目に生きてきた。
しかし、その願いが届くことはなかった。
アイシャはある日突然、病弱なベアトリーチェの代わりに、『戦場の悪魔』の異名を持つ男爵の元へ嫁ぐことを命じられたのだ。
かの男は血も涙もない冷酷な男と噂の人物。
アイシャだってそんな男の元に嫁ぎたくないのに、両親は『ベアトリーチェがかわいそうだから』という理由だけでこの縁談をアイシャに押し付けてきた。
ーーーああ。やはり私は一番にはなれないのね。
アイシャはとうとう絶望した。どれだけ願っても、両親の一番は手に入ることなどないのだと、思い知ったから。
結局、アイシャは傷心のまま辺境へと向かった。
望まれないし、望まない結婚。アイシャはこのまま、誰かの一番になることもなく一生を終えるのだと思っていたのだが………?
※全部で3部です。話の進みはゆっくりとしていますが、最後までお付き合いくださると嬉しいです。
※色々と、設定はふわっとしてますのでお気をつけください。
※作者はザマァを描くのが苦手なので、ザマァ要素は薄いです。
婚約する前から、貴方に恋人がいる事は存じておりました
Kouei
恋愛
とある夜会での出来事。
月明りに照らされた庭園で、女性が男性に抱きつき愛を囁いています。
ところが相手の男性は、私リュシュエンヌ・トルディの婚約者オスカー・ノルマンディ伯爵令息でした。
けれど私、お二人が恋人同士という事は婚約する前から存じておりましたの。
ですからオスカー様にその女性を第二夫人として迎えるようにお薦め致しました。
愛する方と過ごすことがオスカー様の幸せ。
オスカー様の幸せが私の幸せですもの。
※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。
【完結】お姉様の婚約者
七瀬菜々
恋愛
姉が失踪した。それは結婚式当日の朝のことだった。
残された私は家族のため、ひいては祖国のため、姉の婚約者と結婚した。
サイズの合わない純白のドレスを身に纏い、すまないと啜り泣く父に手を引かれ、困惑と同情と侮蔑の視線が交差するバージンロードを歩き、彼の手を取る。
誰が見ても哀れで、惨めで、不幸な結婚。
けれど私の心は晴れやかだった。
だって、ずっと片思いを続けていた人の隣に立てるのだから。
ーーーーーそう、だから私は、誰がなんと言おうと、シアワセだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる