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134 心菜の目覚め
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▫︎◇▫︎
「んっ、」
額にあたる心地の良い冷たさに、心菜の意識はゆっくりと浮上した。目の前はぼやぼやと歪んでいて、自分の不調さがいかに深刻なものであるかを知らしめてくる。頭痛のひどい頭を必死になって働かせて、心菜今ここがどこであるのかを必死になって考え始める。
知らない天井。知らない布団の感覚、知らない額の感覚。そして、手にくっついている暖かな感触。必死になって考えはするが、その全ての不可解さに、心菜はどうしても見当がつけられなかった。
ーーーぴくっ、
心菜が僅かに身じろいだためか、よく分からない手に触れていた暖かいものが動いた。そして、そこでやっと手に触れているものが誰かの手であることを理解した。けれど、誰のものかは分からない。
喉がからからで声も良く出せない心菜は、乾いた声を漏らす。
「………だ、れ………?」
我ながら幼い問いかけだと客観的に感じながら、心菜はじっと目の前が早く見えるようになることを願いながら、返答を待つ。
「………え………、えええぇぇぇええええ!?」
けれど、返ってきたのは本人すらも驚いているかのような素っ頓狂な悲鳴。少しだけ低めな男の声に、心菜はそれが、声に主が誰であるかを早々に見分けることができた。
「………た、ちばな………?けほっ、けほっ、」
自分が思っていたよりもずっとずっと喉が渇いていたようで、少ししゃべっただけなのに、思わぬ咳が出てしまった。心菜は少し不服に思いながらも、ようやく視界がはっきりとしてきた世界で、じっと赤い顔をしている彼のことを見つめた。辺りは暗くなり始めているのか、視界の端に映る窓からはオレンジ色の日差しが淡く差している。
「あら、目覚めたのね。久遠さん。立花さん。今お水を持ってくるわ」
おっとりとした先生の声を聞いて、ゆっくりと視線を向けると、そこには保健医の先生が立っていて、心菜はやっとここが保健室であることを理解した。
「………た、たおれ、たの………?」
「あぁ、」
涎が垂れていたのか口元を拭った立花を、熱にうなされた視線でぼーっと見つめながら、心菜は掠れた声で問いかけた。先生の話し方から予想するに、彼の心菜のことを見舞っているうちに心菜の手を握って眠ってしまっていたらしい。
********************
読んでいただきありがとうございます😊😊😊
「んっ、」
額にあたる心地の良い冷たさに、心菜の意識はゆっくりと浮上した。目の前はぼやぼやと歪んでいて、自分の不調さがいかに深刻なものであるかを知らしめてくる。頭痛のひどい頭を必死になって働かせて、心菜今ここがどこであるのかを必死になって考え始める。
知らない天井。知らない布団の感覚、知らない額の感覚。そして、手にくっついている暖かな感触。必死になって考えはするが、その全ての不可解さに、心菜はどうしても見当がつけられなかった。
ーーーぴくっ、
心菜が僅かに身じろいだためか、よく分からない手に触れていた暖かいものが動いた。そして、そこでやっと手に触れているものが誰かの手であることを理解した。けれど、誰のものかは分からない。
喉がからからで声も良く出せない心菜は、乾いた声を漏らす。
「………だ、れ………?」
我ながら幼い問いかけだと客観的に感じながら、心菜はじっと目の前が早く見えるようになることを願いながら、返答を待つ。
「………え………、えええぇぇぇええええ!?」
けれど、返ってきたのは本人すらも驚いているかのような素っ頓狂な悲鳴。少しだけ低めな男の声に、心菜はそれが、声に主が誰であるかを早々に見分けることができた。
「………た、ちばな………?けほっ、けほっ、」
自分が思っていたよりもずっとずっと喉が渇いていたようで、少ししゃべっただけなのに、思わぬ咳が出てしまった。心菜は少し不服に思いながらも、ようやく視界がはっきりとしてきた世界で、じっと赤い顔をしている彼のことを見つめた。辺りは暗くなり始めているのか、視界の端に映る窓からはオレンジ色の日差しが淡く差している。
「あら、目覚めたのね。久遠さん。立花さん。今お水を持ってくるわ」
おっとりとした先生の声を聞いて、ゆっくりと視線を向けると、そこには保健医の先生が立っていて、心菜はやっとここが保健室であることを理解した。
「………た、たおれ、たの………?」
「あぁ、」
涎が垂れていたのか口元を拭った立花を、熱にうなされた視線でぼーっと見つめながら、心菜は掠れた声で問いかけた。先生の話し方から予想するに、彼の心菜のことを見舞っているうちに心菜の手を握って眠ってしまっていたらしい。
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