小さな別れは、淡く儚い恋を呼ぶ

桐生桜月姫

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99 心菜の復帰

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▫︎◇▫︎

 運送会が終わった約1週間後、心菜は久方ぶりの学校への登校を果たしていた。
 理由は簡単、心菜は運動会終了後に数日間にわたって高熱を出してしまったのだ。元々身体がそこまで強くない心菜は、どうやら連日にわたる運動会練習で身体がバテてしまったようだ。
 心菜は嫌になる自分の身体に溜め息を吐くと、優奈と一緒に教室へと向かう。

「ここな、本当にもう大丈夫なの?」
「………大丈夫だよ。本当にもう、ゆーなちゃんは心配性だなー」
(………………感の良すぎるゆーなちゃんにバレれば、一髪アウト。お家のベッドの逆行だなんて、私は絶対にイヤ!!何が何でも、隠し通さなきゃ………!!)

 ちょっとだけ元気のない心菜は、困ったように空元気な笑みを浮かべて優奈の背中にぽんぽんと手を載せる。正直に言って、まだ本調子ではない心菜には、学校への投稿だけでも身体への負担が大きかったのだ。

「………まあいっか。熱ぶり返したら、即刻家に叩きつけるからね?」
「それはこっちの台詞セリフ。ゆーなちゃんも運動会後、体調崩したんでしょう?ゆーなちゃんの方が、私よりも身体が弱いんだから、ちゃんと注意しないとダメだよ?」

 わかりやすくそっぽを向いた優奈にクスッと笑った後、心菜はふっと息を吐く。そして、教室の扉に手をかけた。

(………何回やっても、この感じは嫌いだな………)

 ーーーがらっ、

 ゆっくり扉を開けると、教室中の視線が集まってくる。心菜は何食わぬ顔で歩いて自分の机に荷物を置いて、椅子に腰掛けようとするが、そこは自分の席ではなくなっていた。
 急いで立ち上がって荷物を持ち上げた心菜は、助けを求めるように優奈の顔を見つめる。おそらく自分は、今とても情けない顔をしてしまっているだろう。

「ここなの席はこっち。昨日席替えがあったからね」
「ん、」

 優奈に案内された席について、虚空を見つめるようにして心菜は遠くを見つめた。
 窓際の最後部席。前の席はそこそこ気に入っていたのだが、いきなり席替えがされてしまってたから、お別れも出来なかった。心菜ははあーっと溜め息を吐いて、周囲を見渡す。目の前の席は数回しか話したことのない女の子。斜め前は、何回か突っ掛かられたことのある男の子。

(面倒臭そうな席だ)

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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