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87 心菜は悔しい

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「………ごめんね、ちゃんとリレー走りきれなくて。私がもうちょっと頑張ったら勝てたかもなのにね」
「はっ、そんなに中学生の最も早いメンバーをかき集めたリレーの世界は甘いのか?甘くないだろう?お前がどんな結果だろうとも、結局はうちのクラスはグループ対抗リレーでは勝てなかった。それが事実だ。というか、大野ってヤツ化け物過ぎんだろ。最下位からのごぼう抜きって俺初めて見たぞ?」

 心菜のクラスは、心菜の出たグループ対抗リレーで2位を取って、競技の部で負けた。最後の走者たる心菜がバトンを繋いだ男の子が、大野という全国レベルの陸上競技者にあっけなく抜かれてしまい、1位から2位に陥落したのだ。そして、わずか2点差で競技の部の優勝を逃した。

「………本当に、速かった………」

 もう、あそこまで完膚なきまでに叩きのめされれば、諦めもあっさりと出来てしまうというものだ。けれど、心菜はそれでも満足できなかった。自分が後ろの子にこかされかけてロスったタイムがなければ、次の子が抜かれなかったのではないか、自分がもっと一生懸命に走っていれば、もっと差を広げてあげられたのではないか、考えても仕方がない、過ぎたことが頭の中にぐるぐるとよぎってしまう。
 頭の中ではちゃんと理解していたとしても、どうしても考えられずにはいられないのだ。心菜はチームの命運を背負って、決戦たる最後のリレーを走ったのだから。クラスメイトみんなに、信頼と信用を預けられて走ったのだから。

「………くやしいなあー、わたし、けっこうがんばって走ったんだよ?でも、ぜんぶぜーんぶおもいどーりにならなかった」

 ぽつりと泣き言が溢れて、そして視界がうるうると歪む。歪な世界で、彼は困ったような表情をして、それでいて納得したかのような表情をしている。

「なんつーひょうじょうしてんのよっ、わたしは、………泣いちゃわるいわけ?」
「いや、………好きなだけ泣け。そして、全部流しちまえ」

 ぽんぽんと頭を撫でられて、心菜はぼろぼろと涙をこぼした。なんとなく頭を触られるのは悔しいが、それでも暖かくて、少しだけ嬉しくなってしまいのが嫌で、心菜はうぅーっと声をこぼした。

「………お前は溜め込みやすいから、このぐらいの頻度で爆発させるぐらいがちょうどいいんだよ。泣き虫久遠」

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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