小さな別れは、淡く儚い恋を呼ぶ

桐生桜月姫

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84 最後の競技へ

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(………不覚)
「「っ、」」

 プイッと2人が横に振り向くと、そこには噂の少年がむすっとした表情で立っていた。なんともまあ間のいいことだ。心菜ははぁーっとため息をついて立花に向けた視線をすっと狭めた。

「それで?立花。私に不本意極まりないニックネームをつけてくれたことに対する、弁明はある?」
「………俺は事実しか言っていないから、弁明も何もないね」
「………………ねえ、ゆーなちゃん、適度に怪我しないようにボコってくれる?」
「あいあいさー!!」

 こうして始まった追いかけっこは、とても長い時間続いて、心菜はそんな体力だけを消費していく無駄で面倒でいて、そして不毛な争いというか、不毛な追いかけっこをずっと続ける2人を眺めながら、ゆっくりと真面目な顔で歩みを進めていった。歩みを進める先は入場門。心菜はすっと息を吐いてぎゅっと拳を握り込む。

『最後の競技、グループ対抗リレーの出場選手は、入場門に集まってください』

 中学生最後の運動会最後の競技にして、最後の悪あがきの競技、今までの競技の比にならない点数が与えられる最も重要にして重大な競技、グループ対抗リレーが、今始まる。

▫︎◇▫︎

 深呼吸をした心菜の背中を、果音がとんと押した。心菜は入場門前でゆっくりとアキレス腱を伸ばしながら、くるっと果音の方に視線を向けた。

「ここちゃん、キンチョーしてる?」
「まあね、今2位だもん」
「………なんで分かるの?」

 果音が不思議そうに首を傾げると、心菜が逆に首を傾げた。アキレス腱を伸ばすのを止めると、果音に真っ直ぐと向き合った。

「だって、計算してたもん」

 3年間中学入学からずっと得点係を行ってきた心菜は、どの競技がどのくらいの得点を与えられるのかを把握している。よって、今どのチームがどのくらいの点数で、どこが勝っているのかは簡単にわかってしまうのだ。

「いや、それにしても、お昼ご飯の後は数競技した後に、結果が分からないように得点板綺麗きっちり見れないように外されてたじゃん!?」
「? ………それが何?」
(かのんちゃんはどうしてこんなに驚いているの?)

 心菜がのんびりと問いかけると、果音がはあぁーっとわざとらしく、大きなため息をこぼした。

「………相変わらずの天才気質」

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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