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31 立花のばか

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 心菜と立花が席に着くと、みんな他人のフラペチーノやオレをしげしげと観察し始めた。即決していた有栖川は『あぁー!!失敗したかもー!!』と頭を抱えて丸まっている。
 なんというか、本当になんなのだろうか。未だにこんな子供っぽだなんて。
 心菜はそっと息を吐いた。そして、立花の席の前に苺オレフラペチーノとチョコチップスコーン1つをプレートごと渡した。

「フラペチーノ溶けちゃうよ。早く“食べよう”」
「いや、ここな、ここは“飲もう“でしょ」

 優奈のツッコミにクスッと笑って、心菜は手を合わせて微笑みを浮かべた。

「いただきます」

 冷たいキャラメルフラペチーノを一口飲んで、心菜は口の中に広がった幸せな味に目を細めた。

(美味しい………)

 夢中で飲んでいると、隣からのじーっと見つめられている視線に気がついた。

「?」

 不思議に思ってキャラメルフラペチーノの吸いながら視線の方を向くと、立花がこちらを柔らかい表情でじーっと見つめていた。何を見ているのだろうか。
 心菜はフラペチーノを置いて、チョコチップスコーンへと手を伸ばした。
 パクッと口の中に含んでもぐもぐもぐもぐと咀嚼すると、ざくざくとした大きなチョコチップが混じってとても美味しかった。
 だが、やっぱり隣からの視線はじーっと注がれたままだ。流石にここまでくると食べずらい。

「………立花、何?」
「え、あ、………食べずらい?」

 心菜はこくんと頷いた。誰でも見つめられながら食べると言うのは苦行だろう。

「ごめん、美味そうに食うからついつい眺めたくなっちゃって………」

 心菜はこれでもかというほどに目を見開いて耳まで赤く染めた。

「………ば、ぁ」
「?」
「………ーーばーか」

 心菜は耳に長い髪をかけながら上目遣いで立花を罵った。耳まで真っ赤に染めていて、目元が潤んでいることもあり、何故か罵られているように聞こえないということには、本人は気がついていない。

「………あほ、ばか、ばか立花」
「ーーなんっつーか、可愛いな」

 心菜はぎゅっと眉間に皺を寄せた。何故ここで可愛いと言われるのだろうか。心菜には何が何だかさっぱり分からない。

「ここなはね、超~絶!可愛いの!!」

 一緒にカフェを楽しんでいる心菜を除いたメンバー全員が、優奈の言葉に頷いた。
 心菜は思いっきり、頭を抱えて蹲りたくなった。

*******************

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