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22 心菜の質問

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「じゃあ、帰ろっか。久遠家どこ?」

 2人で飲み物を飲んで10分ぐらい座っていたところで、立花が切り出してきた。心菜の家は両親が心配性だから、そろそろ帰ったほうがいい時間だ。というか、もう心配をかけてしまっているかもしれない。

「南公園の近所」
「分かった。送る」

 結局、心菜は立花にお金を返すことができずに家に帰ることになってしまった。帰り道、彼はさりげなく面白い話を沢山聞かせてくれた。彼の先輩がしてしまったことに関していまだに罪悪感が残ってしまっているのだろう。沢山の人をずっと観察してきた心菜には、手に取るように分かってしまった。

(気にする必要なんて無いのに………)

 けれど、心菜にはその小さな気遣いが心地良くて、何より嬉しかった。だからこそ、彼が優奈の猛アタックを無視している理由が気になってしまった。優しい彼の思考が知りたいと思ってしまった。

「………ねえ、立花」
「なんだ?」
「ゆーなちゃんが立花のこと好きなの知ってる?」

 心菜が立ち止まってのに合わせて、立花も道の真ん中で立ち止まった。そして、永遠のように長く感じられる間が空いて、大きな風が2人の間を吹き上げ終わるのと同時に、立花がゆっくりと口を開いた。

「………知ってる」
「ーーーーじゃあ、どうしてゆーなちゃんの告白に気づかないふりなんかしてるの?」

 心菜が気づいた時にはもう遅く、踏み込んではいけないラインに踏み込んでしまった。心菜は自分の顔から血の気がさあぁっと引いていくのを感じた。こんな失態は久々だ。心菜は自分が気を抜き過ぎていたこと今更ながら気がついた。

「ご、ごめんなさい!!」
「あ、いや、いいんだ。………久遠は高梨の幼馴染だから、高梨の肩持ちたくなるんだろ?」
「………っ、」

 心菜はくちびるを噛み締めてこくんと1つ頷いた。心菜は初めてに近く、長い恋を継続している幼馴染を応援したかった。必死になって、認めてもらおうと、見てもらおうと、好きになってもらおうとしている幼馴染に、どうしても報われてほしかった。

『努力は報われない、誰も認めてくれない』

 何故か最悪のタイミングで自分の好きな歌の歌詞を思い出した心菜は、無性に泣き出したくなってしまった。

(あぁ、ゆーなちゃんの恋は、報われない)

 静かな独白の後、歌の続きが聞こえる。

『だから、歩くのをやめてしまうのか?』

 立花の綺麗なトランペットが重なって聞こえる。

(………彼女は、………絶対に諦めない)

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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