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12 優しい立花颯

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「で?彼女が壊れたのは分かったけど、久遠はなんで壊れてんの?」

 立花は『にゃははははっ!!』と下品?に笑いながら、優奈の肩に気安くぽんと手を置いて質問した。
 好きな人の手が肩に乗っている優奈は、顔を赤くした様子もなければ、カッチコチに緊張をした様子もない。ただただ幸せそうに、大好きな彼の顔を優しい笑顔で見ている。

「コンビニスイーツ」
「は?」
「だーかーらー、ここなは新作のだーい好きなコンビニスイーツが、発売日の今日食べられないことに、絶望して壊れているの!!」

 優奈は物分かりが悪い幼子に言い聞かせるように、立花に説明した。

「んー、じゃあ久遠はコンビニスイーツが食いたいのか?」
「………そうよ。なんか悪い?」

 立花の問いかけに、少しだけ精神を落ち着けた心菜がむすっとした表情で答える。

「いいや、悪くない。………久遠、ちょっと来い」
「え?ちょっ、」
「高梨ー!!先に学校に行っといてくれ!!」
「………んー!了解!!」

 心菜は立花に引っ張られて路地裏に連れてこられた。地域の子ども達、主に小学生の使う近道だ。心菜は小学校4年生の頃に優奈に連れてこられて以来、初めてここを通った。そして、行き止まりの小道に連れ込まれた。方向音痴な心菜はもうここがどこだかさっぱり分からない。

「………………」

 心菜は無言で辺りを見回した。ぐるぐると眩暈がしてくる複雑だ。

「俺の卒業した吹部の先輩にコンビニバイトの奴がいるから、取り置き頼んどいてやる」
「!!」

 心菜はびっくりして目を見開いた。どうして彼はよくも知らないクラスメイトの為にここまで心を砕いてくれるのだろうか。訳が分からない。恩でも売っておきたいのだろうか。

「そのかわり、俺の分もお前が奢れ。いいな?」
「ん、………ありがとう」
「まだ頼んでねーよ」

 立花はそう言うと、スマートフォンを取り出して電話をかけた。こういう時、スマホを持っていない心菜はスマホ持ちの人間が羨ましくなる。
 まあ、心菜も来年になれば手に入るわけだが。

「………ーーーー、ありがとうございます。それじゃあ、失礼します」

 いつの間にか電話が終わっていて、立花がVサインを心菜に送っている。心菜はにっこり笑った。これで心置きなく部活に専念できる。今日は帰ったら愛しのコンビニ新作チョコスイーツだ!!

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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