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気がついたら、上司と…6
しおりを挟む「君が」
「!」
ぽつり、と斎藤が零した言葉に、快斗の片が大袈裟に感じるほど飛び跳ねる。
「そんな下世話なことを、聞いてくるとはね」
「す、すみませんッ! ホント、そんなつもりじゃ…!」
「一度だけ」
「…へっ?」
腰の辺りに響く低音が、パニックを起こしかけた快斗を我に返らせ、視線を引く。
「アフターつきのクラブへ部長と一緒に行ったのが、ここ最近した性生活だったかな」
「へ、ぇ…」
意外にも感じるほどあっさりとした斎藤の告白に、快斗は思わず声を上げてしまう。
(絶対誤魔化されると思った)
斎藤は、海千山千の輩と戦い続ける、企業戦士である。
快斗にはまだないそのスキルを行使し、煙に巻かれるのではないかと思っていたのに、斎藤はそんなことをせず、誠実な答えをくれた。
すごい意外だった、という気持ちが顔に出ていることに気づかないまま斎藤を見ていると、
『どうしてそんな目で俺を見る?』
と眼差しで問われ、快斗は再び赤面すると同時に視線を逸らした。
「いやっ、まさか課長がこんな話に付き合ってくださるとは思わなくてッ」
「まぁね。 でも、聞かれたことには何でも答えるつもりだった手前、あれは駄目これは駄目と、選ぶ訳には行かないだろう?」
「それは、そう、かもしれません、けど…」
まさか、憧れと尊敬の眼差しで見ている相手と、こんな生々しい話をすることになるなんて、思いもしなかった。
大体こんな話など、飲み会の席でだらしなく緩んだ箍から零れ出た戯言というのなら、分かる話だ。
それを、酒も飲んでいない、素面の状態でするなんて…
(気まずくなるだけだろっ)
このあとどう言って、この微妙な空気を変えたらいいんだ、とグルグルする頭で、普段通りの会話の流れへ戻そうと考える。
「…」
と、首筋まで真っ赤に染まった快斗をじいっと見ていた斎藤の手が、不意に快斗の下肢に伸び、ビクッ! とする。
「君なんか俺より若いんだし、ココだってまだまだイケてるんだろう?」
「か、かか…課長ッ?」
スーツ越しに、ペニスのカタチを確かめるように揉む指遣いにギョッとしながらも、腰を引き、斎藤から逃れようとする。
「固さだってありそうなのに…カイトだって、彼女、いないんだろう?」
しかし腰をシンクの方に引いてしまったせいで斎藤の手から逃れられず、玉の辺りまで揉まれたい放題になってしまう。
(やっ、ヤバイ…!)
久々に他人に触られたせいで、いとも簡単に快感を揺り動かされそうな気配がする。
このままじゃまずい、と慌てた快斗は、斎藤の肩に手をかけ、絶妙なタッチで触れてくるその指を引き剥がそうとする。
「止めてください! シャレにならないですって!」
「まさか、この程度で? …若いなぁ」
(…!)
逃げたいのに逃れられない状況に追い込まれた快斗の腕が、久しぶりに他人から与えられた快感に飲まれ、震え出す。
まさか上司に股間を握られ、イかされそうになるなんて思いもしなかった指先でシャツを掴むと、自分の指遣いでカタチを変え始めた快斗の肌が、薄紅色に色づいていることに気がつく。
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