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気がついたら、上司と…2
しおりを挟む「――大体、こんなプランで大丈夫じゃないですか?」
「そうだな。 あとは営業部へのプレゼン次第だろう」
「ですね」
大まかではあるが、快斗の意見も盛り込まれた内容となり、満足げに笑む。
…決して手放しで人を褒めないが、良い所は良いと言って、年や肩書きにこだわらず、誰もの意見に耳を傾けられる上司の下につけて、本当に幸せだと思う。
まかり間違えば、会社の『駒』として使われるだけ使われて終わりがちな社会の波に揉まれながら、こういう『いい人』に巡り会えた幸運な人は、どれだけいるだろう。
(ホント、ラッキーだよな)
大企業の看板を目指し入社した当初は他の部署を希望していた快斗だったが、就いた先で先陣を切り、仕事をこなす斎藤の人柄に触れるたびに、今の仕事に対する気持ちを改めずにいられなかった。
「すまなかったね」
「えっ?」
「本来であれば、これは田中のミスだ。 彼女に一任して、その挽回に努めさせるべきなんだが…」
「仕方ないですよ。 何にでも、タイミングってありますから」
「…そうだな」
本来であれば、業務中にまとめるべき案件である。
しかしながら、販売促進における大事な資料を集め損ねた田中女史は、精神的ストレスから会議中に倒れ、続行不可となってしまった。
「離婚って」
資料を片づけ終え、リビングと一繋ぎになっているキッチンへ立った斎藤の耳に、聞こえるか聞こえないかの声音で呟く。
「そんな、大変なのかな」
仕事中に倒れてしまった田中という同僚は、現在離婚を決めた夫と家庭裁判所で争っている最中だった。
子供の親権、離婚の慰謝料――それらを裁判で争うことは大変だと思うが、別れを決めるのはもっとドライな感情しかなかったはずだ。
(男の方は、そうはいかないだろうけど)
後ろ向きな感情を引きずりがちな男とは違い、過去を振り返るくらいなら前へ進んでやる、という、気概眩しく見えるのが、女性という生き物の特徴だろう。
オレが別れた彼女たちもそうだったし、と思うと、仕事中に倒れた田中の心労は、結婚したことのない快斗に推し量れなくとも、仕方のないことなのかもしれなかった。
「カイトのそれは俺に対する質問だと…受け取ってもいいのかな?」
「へっ? って、違います! や、でも…あの」
小さな呟きのつもりで放った言葉を拾われたことに気づいた快斗が赤面しながら立ち上がると、ワイシャツの袖をたくしあげ、台所仕事をする斎藤の姿を目にしたまま固まり、続く言葉を無くしてしまう。
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