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新しい職場では仕事が楽しい

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失業保険を満期でもらう前に就職してしまったのでその点を後悔しつつ、圭吾さんの下で働くことになった。

圭吾さんの職場は有名な通信会社だった。正確には大手の子会社だ。元々この会社は圭吾さん達数名で学生時代に立ち上げたもので開発したアプリが目に止まり大手通信会社に合併されたという事らしい。

指示は的確だし、部下を慮る懐の深さもある。
立ち上げメンバーの圭吾さんがなぜ一部署の部長でいるのか謎だった。
そこで部屋でくつろぐ圭吾さんに遠慮なく尋ねた。すると
「経営に興味ねぇからだよ」となんでもない事のように歯を見せ笑った。

ぐぬぅ、イケメン過ぎる!

俺は以前と同じ、営業の仕事をしている。が、人数ギリギリの職場ではないので無理のない営業兼、時間内に内部の仕事もこなす。前の職場が、ほぼ外回りばかりだったから正直メリハリがあって楽しいッ!
仕事して楽しいなんて初めて思ったかもしれない。
圭吾さんの仕事の振り方も頑張ればこなせるという量で、こうなんていうか全て圭吾さんの手のひらのうえで踊ってる感じ。心地良くて文句もでない。

そして休みの日は圭吾さんが我が家にやってきては荷物を置いていく。狭い我が家に。

「圭吾さん、我が家には物を置く場所は無いですって!」
「んー?そんなに増えたかあ?」
「増えましたって!!圭吾さんの目は節穴ですかっ!!」

荒げた声と共に指差した場所には、コップに差した2本の歯ブラシ、触り心地の良い生地出来たペアのパジャマ。
キッチンには見た事のない調味料、マグカップ、プラスされた食器類…。
ガラガラだった棚に2人分の物が収納されつつある。

俺がしっかりしてないから、構ってくれるだけ……俺だから気を遣わなくていいから楽なんだろうな。

「圭吾さん、俺しっかりするから安心してくださいよ」
笑って安心させたかったのに、我ながらぎこちなかった。笑いをつくる表情筋が仕事しない。こんな時に営業下手が出てくるとは…。

「……!」

ベッドに伏せて真剣に取り合ってくれなかった圭吾さんがガバリと起き上がって、俺の顔を掴む。
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