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もう桜の季節だというのに、寒がりな俺は着こんでいたトレンチコートとマフラーを脱ぎ、こたつで足を伸ばした。
母が俺の前に、緑茶の入った湯飲みを置く。
俺はその湯飲みを手に取り、一口飲んだ。
俺好みに薄味で入れてある緑茶を味わい顔を上げると、優しく微笑んでいる母と目が合った。
緊張の糸がぷつりと切れた気がした。
駄目だ。
そう思った俺の頬にすうと一筋涙が通った。
「母さん。俺、将仁さんと別れたんだ」
俺の言葉に何も言わず、ただ母は眉を寄せた。
「俺ずっと頑張ってきたけど……もう無理だよ。あの人のいない生活がこんなにも辛かったなんて…。朝から晩まで彼のことを考えているのに、俺の隣に将仁さんはいないんだ。俺がっ、俺がそう仕向けたのに、もう耐えられそうにない」
俺は泣きながら俯くと、絞り出すように訴えた。
「ねえ、母さん。俺、ここに戻って来てもいいかな?ずっと一人でいると…悪いことばかり考えちゃって」
まさか死にたくなると母に告げることはできなかった。
母は痛ましそうに俺を見ると口を開こうとした。
その時、玄関の扉が開く音がした。
「鶴子さん、ガムテープ貸してもらっていいですか?あと、風呂も。京極さん手伝ってあげてるのに、風呂も貸してくんねえんだもん」
「悪かったよ。あとでビールおごるから」
「あのねえ。俺を誰だと思ってるんです?酒屋の息子にビールおごるって…」
大きな話声と足音が聞こえ、居間の障子が開いた。
俺が顔をあげるとずっと会いたいと思っていた顔がそこにあった。
将仁さんも目を見開いて座っている俺を見た。
俺達の間だけ時が止まったように何も言葉を発さずに、見つめあった。
「なんで…」
俺の目尻に溜まっていた涙がまた零れ落ちる。
母が俺の前に、緑茶の入った湯飲みを置く。
俺はその湯飲みを手に取り、一口飲んだ。
俺好みに薄味で入れてある緑茶を味わい顔を上げると、優しく微笑んでいる母と目が合った。
緊張の糸がぷつりと切れた気がした。
駄目だ。
そう思った俺の頬にすうと一筋涙が通った。
「母さん。俺、将仁さんと別れたんだ」
俺の言葉に何も言わず、ただ母は眉を寄せた。
「俺ずっと頑張ってきたけど……もう無理だよ。あの人のいない生活がこんなにも辛かったなんて…。朝から晩まで彼のことを考えているのに、俺の隣に将仁さんはいないんだ。俺がっ、俺がそう仕向けたのに、もう耐えられそうにない」
俺は泣きながら俯くと、絞り出すように訴えた。
「ねえ、母さん。俺、ここに戻って来てもいいかな?ずっと一人でいると…悪いことばかり考えちゃって」
まさか死にたくなると母に告げることはできなかった。
母は痛ましそうに俺を見ると口を開こうとした。
その時、玄関の扉が開く音がした。
「鶴子さん、ガムテープ貸してもらっていいですか?あと、風呂も。京極さん手伝ってあげてるのに、風呂も貸してくんねえんだもん」
「悪かったよ。あとでビールおごるから」
「あのねえ。俺を誰だと思ってるんです?酒屋の息子にビールおごるって…」
大きな話声と足音が聞こえ、居間の障子が開いた。
俺が顔をあげるとずっと会いたいと思っていた顔がそこにあった。
将仁さんも目を見開いて座っている俺を見た。
俺達の間だけ時が止まったように何も言葉を発さずに、見つめあった。
「なんで…」
俺の目尻に溜まっていた涙がまた零れ落ちる。
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