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俺は俯きたいのを堪え、その眼を見つめ返した。
「説明って、見れば分かるでしょ?もう疲れた。将仁さんと付き合っていくの。将仁さん気付かなかったみたいだけど、俺真司さんとあれからもずっと連絡をとってたんだ。最初はメールだけのやりとりだったけど、久世さんのことがあってから、実際に会って相談に乗ってもらって。それで俺、この前将仁さんのお父さんに会って酷いことたくさん言われて、辛くて、将仁さん実家に帰っていないし、一人じゃ抱えきれなくて、それで真司さんに相談したら、すぐ来てくれて…こういう関係になっちゃった。事後報告で悪いけど別れてください」
「そんな、嘘だろ?なんで辛い時に俺じゃなくてこいつを頼ったんだ」
将仁さんは俺の手首を離すと、自分の前髪をくしゃりと握った。俺の言ったことの意味を理解するのを拒むかのように、かなり長い間将仁さんはぴくりとも動かなかった。
やがて大きく深呼吸すると、将仁さん目を閉じ頭を振った。
「分かった。確かに俺や俺の家族がお前のことを傷つけたのは事実だ。本当にすまないと思ってる。親父にはもう俺達に関わるなとはっきり伝えた。あんなことは二度と起こらないと約束する。……そいつとのことはお前の心の傷を理解してやれなかった俺も悪い。だから春、別れるなんて言わないで俺とやり直そう。お互いの気持ちを素直に話したら、また元通りになれるさ。俺達はいつもそうやって乗り越えてきたじゃないか。な?」
そう言うと将仁さんは無理矢理口角をあげ、俺に微笑んだ。
俺は涙を堪えるため顔を歪めて将仁さんを見た。
俺がこんな計画を立てたのは、これなら将仁さんが絶対に俺のことを許さないと思ったからだ。
長く付き合ってきて将仁さんが恋愛に潔癖な性格というのは分かっていた。
ドラマで浮気の描写があるだけで「信じられない」とテレビを消してしまうほどだ。
そんな彼が俺のために、自分を曲げて許そうとやり直そうとしてくれている。
この人の愛は何て深いんだろう。
俺は泣きだしそうになるのを堪えて、目を閉じ頭を振った。
ここで縋りついたら、計画が水の泡だ。
そんな俺の肩に長い腕が回った。
「説明って、見れば分かるでしょ?もう疲れた。将仁さんと付き合っていくの。将仁さん気付かなかったみたいだけど、俺真司さんとあれからもずっと連絡をとってたんだ。最初はメールだけのやりとりだったけど、久世さんのことがあってから、実際に会って相談に乗ってもらって。それで俺、この前将仁さんのお父さんに会って酷いことたくさん言われて、辛くて、将仁さん実家に帰っていないし、一人じゃ抱えきれなくて、それで真司さんに相談したら、すぐ来てくれて…こういう関係になっちゃった。事後報告で悪いけど別れてください」
「そんな、嘘だろ?なんで辛い時に俺じゃなくてこいつを頼ったんだ」
将仁さんは俺の手首を離すと、自分の前髪をくしゃりと握った。俺の言ったことの意味を理解するのを拒むかのように、かなり長い間将仁さんはぴくりとも動かなかった。
やがて大きく深呼吸すると、将仁さん目を閉じ頭を振った。
「分かった。確かに俺や俺の家族がお前のことを傷つけたのは事実だ。本当にすまないと思ってる。親父にはもう俺達に関わるなとはっきり伝えた。あんなことは二度と起こらないと約束する。……そいつとのことはお前の心の傷を理解してやれなかった俺も悪い。だから春、別れるなんて言わないで俺とやり直そう。お互いの気持ちを素直に話したら、また元通りになれるさ。俺達はいつもそうやって乗り越えてきたじゃないか。な?」
そう言うと将仁さんは無理矢理口角をあげ、俺に微笑んだ。
俺は涙を堪えるため顔を歪めて将仁さんを見た。
俺がこんな計画を立てたのは、これなら将仁さんが絶対に俺のことを許さないと思ったからだ。
長く付き合ってきて将仁さんが恋愛に潔癖な性格というのは分かっていた。
ドラマで浮気の描写があるだけで「信じられない」とテレビを消してしまうほどだ。
そんな彼が俺のために、自分を曲げて許そうとやり直そうとしてくれている。
この人の愛は何て深いんだろう。
俺は泣きだしそうになるのを堪えて、目を閉じ頭を振った。
ここで縋りついたら、計画が水の泡だ。
そんな俺の肩に長い腕が回った。
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