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浴槽の中で膝を抱え、ため息をつく。
以前、喧嘩した後風呂からあがると、将仁さんはもう出かけてしまっていたことがあった。あの時はそれを寂しく感じたが、今は将仁さんと顔を合わせるのが気まずかった。
ここに来るまではお互い見つめあって、二人で他愛もない話をたくさんしたいと思っていたはずなのに、将仁さんと向き合うのが怖いとさえ思っていた。
あんなに言葉を尽くしても伝わらなかった想いを、一体どう言えば理解してもらえるのか。俺は答えが分からなかった。お互いの主張を曲げなければ何時間話し合おうと決着はつかないだろうし、傷つけあうだけのような気もする。
いっそ久世さんのことなんて何も気にしませんって嘘をついた方がいいのかな。
もう一度重いため息をついたところで、いきなり浴室の扉が開いた。
裸の将仁さんが入ってきて、同じ浴槽にざぶんと座った。湯が大きく波打つ。
「わっ、ちょっと、いきなりどうしたんですか?」
顔にかかった水滴を拭いながら、将仁さんに尋ねた。
「悪い」
そう言うと将仁さんは俯いてしまい、どんな表情をしているのか、伺い知れなかった。
「いえ…、驚いただけだし、大丈夫ですけど」
将仁さんが下を向いたまま、俺の指先を軽く握った。
「なんか最近俺、お前に謝ってばかりだな」
将仁さんが顔を上げた。
「さっきお前が真司のたとえ話をしたろ?あれ聞いて、ようやく少しお前の気持ちが分かったよ。俺が陽子のことをどう思っているかじゃなく、お前が陽子と俺が一緒に居るところを見てどう思うのか、それを考えるべきだった。…すまない」
俺は黙って首を振った。
分かってくれた。
胸に温かな想いが溢れる。
「許してくれるか?」
俺はまたも何も言わず、こくこくと頷いた。その俺の頬に目尻から雫が伝う。
「泣くほど哀しい想いをさせて…。お前のこと、俺、たくさん傷つけたんだな」
将仁さんが下唇を噛んで言う。俺は鼻を啜った。
「違う…哀しくて泣いてるんじゃない。俺の気持ち、理解してくれようとしたのが嬉しくて…もう駄目かと思ったから…」
将仁さんが俺の手首を掴み、力強く引く。俺は将仁さんの腕の中にあっという間にすっぽりとおさまった。
俺は驚きつつも、背中を将仁さんに預けるように座り直した。
以前、喧嘩した後風呂からあがると、将仁さんはもう出かけてしまっていたことがあった。あの時はそれを寂しく感じたが、今は将仁さんと顔を合わせるのが気まずかった。
ここに来るまではお互い見つめあって、二人で他愛もない話をたくさんしたいと思っていたはずなのに、将仁さんと向き合うのが怖いとさえ思っていた。
あんなに言葉を尽くしても伝わらなかった想いを、一体どう言えば理解してもらえるのか。俺は答えが分からなかった。お互いの主張を曲げなければ何時間話し合おうと決着はつかないだろうし、傷つけあうだけのような気もする。
いっそ久世さんのことなんて何も気にしませんって嘘をついた方がいいのかな。
もう一度重いため息をついたところで、いきなり浴室の扉が開いた。
裸の将仁さんが入ってきて、同じ浴槽にざぶんと座った。湯が大きく波打つ。
「わっ、ちょっと、いきなりどうしたんですか?」
顔にかかった水滴を拭いながら、将仁さんに尋ねた。
「悪い」
そう言うと将仁さんは俯いてしまい、どんな表情をしているのか、伺い知れなかった。
「いえ…、驚いただけだし、大丈夫ですけど」
将仁さんが下を向いたまま、俺の指先を軽く握った。
「なんか最近俺、お前に謝ってばかりだな」
将仁さんが顔を上げた。
「さっきお前が真司のたとえ話をしたろ?あれ聞いて、ようやく少しお前の気持ちが分かったよ。俺が陽子のことをどう思っているかじゃなく、お前が陽子と俺が一緒に居るところを見てどう思うのか、それを考えるべきだった。…すまない」
俺は黙って首を振った。
分かってくれた。
胸に温かな想いが溢れる。
「許してくれるか?」
俺はまたも何も言わず、こくこくと頷いた。その俺の頬に目尻から雫が伝う。
「泣くほど哀しい想いをさせて…。お前のこと、俺、たくさん傷つけたんだな」
将仁さんが下唇を噛んで言う。俺は鼻を啜った。
「違う…哀しくて泣いてるんじゃない。俺の気持ち、理解してくれようとしたのが嬉しくて…もう駄目かと思ったから…」
将仁さんが俺の手首を掴み、力強く引く。俺は将仁さんの腕の中にあっという間にすっぽりとおさまった。
俺は驚きつつも、背中を将仁さんに預けるように座り直した。
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