春に落ちる恋

まめ太郎

文字の大きさ
上 下
212 / 336

159

しおりを挟む
 俺が食器を洗って、寝室に入ると、もうすでに将仁さんは寝息を立てていた。
 明日は土曜日で俺は休みだが、将仁さんは休日出勤だろう。
 俺はため息をつくと、将仁さんの隣に横になった。
 途端、無意識だろうが、将仁さんが俺の腰を引き寄せ、腕の中に閉じ込めた。
 耳元で将仁さんの生温かい呼吸を感じる。
 駄目だ、俺。変な気を起こすな。

 俺達は一ケ月近く、体を重ねていなかった。
 疲れきっている将仁さんにエッチがしたいなんて到底言える雰囲気ではなく、俺自身はけっこう溜まっているのだ。
 ふいに将仁さんが抱きしめる腕に力をこめた。
「駄目だってば」
 小声で呟くが、将仁さんの腕は緩まない。
 俺は眉を顰め、一人股間を硬くしたまま、明け方までほとんど眠れなかった。

 翌日、将仁さんは寝起きとは思えないほどの隈をこしらえながら出勤して行き、帰りも深夜だった。
 どうせ日曜も出勤なんだろうと思いながら、俺は隣で眠りについた。
 日曜の朝、横を見ると、何と将仁さんがまだ眠っていた。
 枕元の目覚ましを見ると、11時近い。
 俺は慌てて、将仁さんの体を揺さぶった。

「将仁さん。起きて。11時ですよ」
 将仁さんは何度か瞬きすると、ようやく上半身を起こした。
「ああ、言ってなかったか。今日は久々に休みなんだ」
 大きなあくびをしながら将仁さんが言う。
「一日中?」
「一日中」
 その答えがあんまり嬉しくて、俺は将仁さんに抱きついた。
 将仁さんは倒れそうになりながらも、俺を支え、背中を撫でてくれる。
「春。起きたばかりで悪いが、朝食はもう少し後でも大丈夫か?」
「もちろん…。ねえ俺達、今同じ気持ちだよね」
「ああ。たぶんな」
 そう言うと目を閉じ、俺と将仁さんは唇を合わせた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

とろとろ【R18短編集】

ちまこ。
BL
ねっとり、じっくりと。 とろとろにされてます。 喘ぎ声は可愛いめ。 乳首責め多めの作品集です。

男色医師

虎 正規
BL
ゲイの医者、黒河の毒牙から逃れられるか?

壁穴奴隷No.19 麻袋の男

猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。 麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は? シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。 前編・後編+後日談の全3話 SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。 ※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。 ※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

首輪 〜性奴隷 律の調教〜

M
BL
※エロ、グロ、スカトロ、ショタ、モロ語、暴力的なセックス、たまに嘔吐など、かなりフェティッシュな内容です。 R18です。 ほとんどの話に男性同士の過激な性表現・暴力表現が含まれますのでご注意下さい。 孤児だった律は飯塚という資産家に拾われた。 幼い子供にしか興味を示さない飯塚は、律が美しい青年に成長するにつれて愛情を失い、性奴隷として調教し客に奉仕させて金儲けの道具として使い続ける。 それでも飯塚への一途な想いを捨てられずにいた律だったが、とうとう新しい飼い主に売り渡す日を告げられてしまう。 新しい飼い主として律の前に現れたのは、桐山という男だった。

処理中です...