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三枝はそんな俺に笑顔を返すと、突然話題を変えた。
「硝のね、評判がかなりいいんです。表紙を飾った雑誌の売り上げはどれも好調だし、今度海外のショーにもゲストとして呼ばれている。まあ、小さいショーですがね」
そこで言葉を切ると、三枝はこちらに体を乗り出してきた。
「僕は最初に硝を見た時、すごい逸材だが何てもったいないんだろうと思ったんです。なにがもったいないって、顔の火傷のことですよ。どうやってそれを隠すかばかり考えましたが、違った。彼はあの火傷があることによって、完成されるんです。可哀想な被害者にも、ミステリアスな悪魔にも、彼はなんにだってなれる。そんなモデルは今まで一人もいなかった」
三枝の瞳は奇妙な色に輝き、見開かれていた。
その陶酔した物言いは薬でもやっていそうで、俺は本能的に後ずさった。
「まあ、早いうちにちゃんと彼の魅力に気づけて良かったです」
そう言って、三枝はふっと笑った。笑うと急に三枝の雰囲気は柔らかくなったが、俺は警戒心を解かなかった。
「来月には硝と本契約を結ぶことになるでしょう。こちらはもちろんそれを望んでいますし、硝だって最近は楽しそうに仕事をやっていますから、否はないはず。そうすると残された問題は海君。貴方だ」
三枝が俺を見つめ口角を上げた。
「あなた達、ただの友人ではないんでしょう?」
「あいつがゲイだとまずいって言いたいんですか?」
質問を質問で返すと、三枝は首を振った。
「いいえ、違います。海君が男なのはなんにも問題ありません。この業界、同性愛者なんて珍しくもなんともない。ただね、君の過去、それはどうにも見過ごせないんですよ」
トントンと三枝が人差し指で机を叩く。
「申し訳ないが、海君の過去、調べさせてもらいました。暴行、恐喝、詐欺、エトセトラ。逮捕歴がないのが不思議なくらいだ」
俺は三枝の言葉に下唇を噛んだ。
俺が男なのが問題だと言われたのなら、100倍にして言い返してやるつもりだった。しかし過去の悪行のことを指摘されると、返す言葉が見つからない。
三枝の調べた最低な過去は全て事実で、俺が自ら率先して行ってきたことなのだから。
「絶対に許さない。殺してやる」
そう叫んだ春の顔が頭をよぎり、俺はぎくりと体を強ばらせた。
「硝のね、評判がかなりいいんです。表紙を飾った雑誌の売り上げはどれも好調だし、今度海外のショーにもゲストとして呼ばれている。まあ、小さいショーですがね」
そこで言葉を切ると、三枝はこちらに体を乗り出してきた。
「僕は最初に硝を見た時、すごい逸材だが何てもったいないんだろうと思ったんです。なにがもったいないって、顔の火傷のことですよ。どうやってそれを隠すかばかり考えましたが、違った。彼はあの火傷があることによって、完成されるんです。可哀想な被害者にも、ミステリアスな悪魔にも、彼はなんにだってなれる。そんなモデルは今まで一人もいなかった」
三枝の瞳は奇妙な色に輝き、見開かれていた。
その陶酔した物言いは薬でもやっていそうで、俺は本能的に後ずさった。
「まあ、早いうちにちゃんと彼の魅力に気づけて良かったです」
そう言って、三枝はふっと笑った。笑うと急に三枝の雰囲気は柔らかくなったが、俺は警戒心を解かなかった。
「来月には硝と本契約を結ぶことになるでしょう。こちらはもちろんそれを望んでいますし、硝だって最近は楽しそうに仕事をやっていますから、否はないはず。そうすると残された問題は海君。貴方だ」
三枝が俺を見つめ口角を上げた。
「あなた達、ただの友人ではないんでしょう?」
「あいつがゲイだとまずいって言いたいんですか?」
質問を質問で返すと、三枝は首を振った。
「いいえ、違います。海君が男なのはなんにも問題ありません。この業界、同性愛者なんて珍しくもなんともない。ただね、君の過去、それはどうにも見過ごせないんですよ」
トントンと三枝が人差し指で机を叩く。
「申し訳ないが、海君の過去、調べさせてもらいました。暴行、恐喝、詐欺、エトセトラ。逮捕歴がないのが不思議なくらいだ」
俺は三枝の言葉に下唇を噛んだ。
俺が男なのが問題だと言われたのなら、100倍にして言い返してやるつもりだった。しかし過去の悪行のことを指摘されると、返す言葉が見つからない。
三枝の調べた最低な過去は全て事実で、俺が自ら率先して行ってきたことなのだから。
「絶対に許さない。殺してやる」
そう叫んだ春の顔が頭をよぎり、俺はぎくりと体を強ばらせた。
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