楽園の在処

まめ太郎

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「もういいから。早くっ」
 俺はそう言いながら、硝の勃ったものを握った。
「ダメだよ。まだ」
 硝は俺の乳首に吸いつき、じゅっじゅと強く吸う。
「ああっ。くっ」
「海の好きなとこ、全部舐めて齧って…気持ちよくしてからじゃないと、いれたりしない」
 文句を言おうとする俺の口に、硝が噛みつくようにキスをする。
 とても30分じゃ終わりそうもない気配に、俺は甘いため息をこぼした。

 翌朝、硝が俺を起こし、着替えまで手伝った。
 昨日、あれだけ好き勝手に楽しんだのだから当然だと思いながら、俺はあくびをかみ殺した。
「じゃあ、行ってくるわ」
「うん。無理しないでね。嫌だったら、辞めて帰って来ていいからね」
 まるで過保護な母親のようだと思いながら、俺は適当に相槌をうった。

「まさか海がバイト一週間も続くなんて」
 寝転がっている俺の腰を揉みながら、硝が失礼な感想を述べた。
「まあ、爺さんに怒鳴られる度、辞めてやろうかとは思うけどな」
 硝は俺の言葉にふっと笑った。

 爺さんは見た目を裏切らず、頑固じじいそのものだった。
 挨拶がきちんとできていないと俺の頭を小突き、床の水拭きが甘いと怒鳴りつける。
 その度に俺は怒りをふつふつと煮えたぎらせ、露骨に舌打ちなどをしてまた殴られる羽目になるのだが、賄いで爺さんの作る麻婆豆腐丼や、レバニラ炒めを食べると、その味に感動してしまい、いつの間にか怒りを忘れてしまうのだ。
 あとは佳代さんが爺さんとは正反対に優しいのも続けられている要因だろう。
 爺さんに怒られ、唇を尖らせている俺を、カウンターの奥に連れて行き、「ごめんねえ。あの人、海君に期待してる分、口うるさくなっちゃってるのよ」と杏仁豆腐をご馳走してくれたりする。
 この店は甘味も繊細な味で美味いのだが、それも全て爺さんの手作りだということを聞き、なんだかんだと爺さんに尊敬のまなざしを向けてしまう俺だった。

「料理ってすげえよな」
 俺はぽつりとそう言った。
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