113 / 161
113
しおりを挟む
それから特に俺達は喧嘩もしないで、硝の誕生日パーティ当日となった。
朝から硝は客に貰ったオーダーメイドのスーツに着替え、パンツ一枚で煎餅布団の上であぐらをかいている俺の前に颯爽と立った。
「今日は準備があるから、早く行くね」
「分かった」
俺は今夜着飾ったこいつの為に、何人もの客がドンペリだのシャンパンだのを開けるんだろうと思った。
硝が稼いで暮らしが潤うのは嬉しいはずなのに、俺の眉間には皺が寄っていた。
「明日は休みだから、二人でゆっくりしようね」
硝がそんな俺にキスをしながら言う。
その仕草さえどうせ客のご機嫌取りもこういう風にやっているんだろうという思いを俺に抱かせ、むかついた。
「いいから、さっさと行けよ」
俺が冷たく言うと、硝は何度もこちらを振り返りながら出て行った。
俺は硝が出ていった扉を少しの間睨み、また布団の上に横になった。
寝ようとしたのに、眠気はやってこない。
ふいに自分のスマホが音をたてた。
「何だよ。忘れ物でもしたか?」
硝だとばかり思ってでた電話の相手が、笑い声をあげる。
「私だよ、理沙。誰と間違えたの?」
俺は気まずくなって、「いや、別に」と素っ気なく返した。
「海。今日暇?またご飯でも食べない?」
「いや、今日はちょっと」
先日の硝の怒りを思い出し、俺は言葉を濁した。たぶん理沙と会ったら、飯だけでは済まないだろう。
「えっ、残念。海が仕事探してるって言ってたから、紹介してあげようと思ったのに」
「どうせ、やばいのだろ」
俺は息を吐いて言った。
「ううん。ちゃんとしてるお仕事だよ?友達のとこ運送業やってて、ドライバーが足りないんだって。けっこう自給いいよ。どう?」
理沙にそんな友人がいるなんて話、初めて聞いたが、ドライバーなら面倒な人間関係もなさそうだし、さぼってもばれにくそうだと思った。
「そうだな。せっかくだし、紹介してもらってもいいか?今日その友達に仕事の話聞く事できる?」
朝から硝は客に貰ったオーダーメイドのスーツに着替え、パンツ一枚で煎餅布団の上であぐらをかいている俺の前に颯爽と立った。
「今日は準備があるから、早く行くね」
「分かった」
俺は今夜着飾ったこいつの為に、何人もの客がドンペリだのシャンパンだのを開けるんだろうと思った。
硝が稼いで暮らしが潤うのは嬉しいはずなのに、俺の眉間には皺が寄っていた。
「明日は休みだから、二人でゆっくりしようね」
硝がそんな俺にキスをしながら言う。
その仕草さえどうせ客のご機嫌取りもこういう風にやっているんだろうという思いを俺に抱かせ、むかついた。
「いいから、さっさと行けよ」
俺が冷たく言うと、硝は何度もこちらを振り返りながら出て行った。
俺は硝が出ていった扉を少しの間睨み、また布団の上に横になった。
寝ようとしたのに、眠気はやってこない。
ふいに自分のスマホが音をたてた。
「何だよ。忘れ物でもしたか?」
硝だとばかり思ってでた電話の相手が、笑い声をあげる。
「私だよ、理沙。誰と間違えたの?」
俺は気まずくなって、「いや、別に」と素っ気なく返した。
「海。今日暇?またご飯でも食べない?」
「いや、今日はちょっと」
先日の硝の怒りを思い出し、俺は言葉を濁した。たぶん理沙と会ったら、飯だけでは済まないだろう。
「えっ、残念。海が仕事探してるって言ってたから、紹介してあげようと思ったのに」
「どうせ、やばいのだろ」
俺は息を吐いて言った。
「ううん。ちゃんとしてるお仕事だよ?友達のとこ運送業やってて、ドライバーが足りないんだって。けっこう自給いいよ。どう?」
理沙にそんな友人がいるなんて話、初めて聞いたが、ドライバーなら面倒な人間関係もなさそうだし、さぼってもばれにくそうだと思った。
「そうだな。せっかくだし、紹介してもらってもいいか?今日その友達に仕事の話聞く事できる?」
0
お気に入りに追加
346
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
組長様のお嫁さん
ヨモギ丸
BL
いい所出身の外に憧れを抱くオメガのお坊ちゃん 雨宮 優 は家出をする。
持ち物に強めの薬を持っていたのだが、うっかりバックごと全ロスしてしまった。
公園のベンチで死にかけていた優を助けたのはたまたまお散歩していた世界規模の組を締め上げる組長 一ノ瀬 拓真
猫を飼う感覚で優を飼うことにした拓真だったが、だんだんその感情が恋愛感情に変化していく。
『へ?拓真さん俺でいいの?』
見ぃつけた。
茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは…
他サイトにも公開しています
くまさんのマッサージ♡
はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。
2024.03.06
閲覧、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。
2024.03.10
完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m
今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。
2024.03.19
https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy
イベントページになります。
25日0時より開始です!
※補足
サークルスペースが確定いたしました。
一次創作2: え5
にて出展させていただいてます!
2024.10.28
11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。
2024.11.01
https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2
本日22時より、イベントが開催されます。
よろしければ遊びに来てください。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる