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第六話
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全校集会でクラスメイトの死が告げられた。しかし、悲劇はここから始まった。五日後にもう一人死んだのだ。また、クラスメイトだった。今度は交通事故だった。さらに四日後、三人目が死んだ。彼女もクラスメイトで、死因はマンションからの飛び降り自殺。
学校側は、クラスメイトが立て続けに死んだことでショックを受けたことが原因ではないかと考えていた。しかし、咲良は嫌な予感がしていた。
「ねぇ、咲良」
「何?」
「偶然かな?」
何が、とは聞かなくても咲良には分かっていた。
「遙香も、変だと思う?」
「うん、さすがに三人連続は普通じゃ考えられないと思う」
―去年から私が襲われてきたことと関係があるかもしれない。でも、これがそうだとして、何で急に矛先が変わったのだろうか。
「日直、挨拶」
「起立。礼」
数学の授業が始まり、話はそこで中断となった。
――あれ以来、姉とは話していなかったけど、そろそろ頃合いかもしれない。
咲良がそんなことを考えていたら、机がポンポンと叩かれた。どうやら、教師に当てられていたらしい。
「集中しろよ」
「すみません……」
「ここ最近、飯田に限らずボーッとしているやつが多いから気をつけろ」
三人もの仲間が死んだのだ。皆、いつもの精神状態ではない。教師もそれが分かっていてあえて注意したのだろう。まともに咎める意思はないようだ。
「先生」
ガタッ、という音とともに、男子生徒が立ち上がった。
「何だ? トイレか?」
皆の視線が向くと、彼は言った。
「授業に集中できてない飯田さんは、死んだ方がいいと思います」
教室が凍り付いた。普段であっても許されない発言だが、最近の状況でこの冗談はまずい。誰もがそう思い、教師の顔色を窺った。
だが、教師は落ち着いていた。
「私はそんなことは思わないがな」
皆が安堵したとき、男子生徒はニヤッと笑う。
「じゃあ、僕が殺しますね」
ゾワッ、と咲良の身の毛がよだった。直後に男子生徒は咲良にとびかかった。その手にはカッターナイフが握られている。突然の出来事に咲良は対処が遅れた。
(あ……)
振り下ろされるカッターナイフがスローモーションに見えた。
遙香が目を見開き、純麗が手を伸ばすが間に合わない。
(私、死―)
死を察した咲良。
ドスッ。
心臓を一突きだった。
しかし。
「え」
心臓を刺されていたのは男子生徒。
そして、刺したのは。
「先生?」
男子生徒に突き刺さるナイフ。その柄を握っていたのは教師だった。
「死んだ方がいいのはお前だ」
教師はそう言い放った。
数秒遅れて遙香と純麗が駆け寄った。
「咲良!」
「大丈夫!?」
「……うん、私は……大丈夫だけど……」
咲良は目の前の惨状に体が震えたが、純麗は咲良にケガがないことを冷静に確認したあと、教師に向き直った。
「シン派の者か」
教師は淡々と答えた。
「あなたは……もしかしてテルカ様ですか?」
「聞いているのはこちらだ。答えろ」
「ええ、いかにも私はシン派の者ですが」
純麗の鋭い視線を受けて、教師は弁明する。
「そんなに睨まないでください。私はシン派の中でも穏健派ですので」
教師は男子生徒に刺さったままのナイフから手を引いた。男子生徒は床に倒れ、血だまりが広がっていく。
それまであまりのことに言葉を失っていた生徒たちが悲鳴を上げた。
「私の役目は終わりですね。次の者に引き継がなくては。テルカ様、次の者が穏健派とは限らないのでご注意を。それでは私は戻ります」
「待て!」
純麗が呼び止めようとしたが、答えはなく、代わりにおかしな反応が返ってきた。
「え、あ、え? なんだこれ……何が起きたんだ!? おい! 大丈夫か!? 誰か保健室と職員室に連絡を! 救急車を呼ぶよう伝えてくれ!」
「ばれたらまずいって言ったのにぃ~」
椅子の上でしゃがみながら回転する少女、純麗。もちろん、姿形は河合あんずである。
「そんなこと言ってる場合じゃない」
「あ、遙香もしかして怒ってる? ねぇ怒ってるの?」
椅子の回転を止めた純麗が煽る。
それを見届けた遙香は表情を消して一言だけ喋った。
「すみれ」
「あ、はい。すみませんでした」
普段はその持ち前の性格で後れを取ることがない純麗だが、遙香が本気で怒った時はその限りではない。とにかく、純麗は手のひらを返して謝った。
頃合いだと思った咲良が純麗に尋ねる。
「それで、お姉ちゃん。昨日のこと教えてくれるんだよね?」
昨日、教師が生徒を刺し殺すという前代未聞の事件が起きたことにより、学校が休校になったため、ことの真実を知るために咲良と遙香があんずの家に押しかけたのだ。
「う~ん……まぁ、たぶんもうあっちにはばれてるだろうからいっか」
純麗は諦めたかのようにため息をついた。
そして、語り始める。
「昔々の話です。この宇宙が生まれるよりほんの少し前、最初の宇宙は誕生しました――」
学校側は、クラスメイトが立て続けに死んだことでショックを受けたことが原因ではないかと考えていた。しかし、咲良は嫌な予感がしていた。
「ねぇ、咲良」
「何?」
「偶然かな?」
何が、とは聞かなくても咲良には分かっていた。
「遙香も、変だと思う?」
「うん、さすがに三人連続は普通じゃ考えられないと思う」
―去年から私が襲われてきたことと関係があるかもしれない。でも、これがそうだとして、何で急に矛先が変わったのだろうか。
「日直、挨拶」
「起立。礼」
数学の授業が始まり、話はそこで中断となった。
――あれ以来、姉とは話していなかったけど、そろそろ頃合いかもしれない。
咲良がそんなことを考えていたら、机がポンポンと叩かれた。どうやら、教師に当てられていたらしい。
「集中しろよ」
「すみません……」
「ここ最近、飯田に限らずボーッとしているやつが多いから気をつけろ」
三人もの仲間が死んだのだ。皆、いつもの精神状態ではない。教師もそれが分かっていてあえて注意したのだろう。まともに咎める意思はないようだ。
「先生」
ガタッ、という音とともに、男子生徒が立ち上がった。
「何だ? トイレか?」
皆の視線が向くと、彼は言った。
「授業に集中できてない飯田さんは、死んだ方がいいと思います」
教室が凍り付いた。普段であっても許されない発言だが、最近の状況でこの冗談はまずい。誰もがそう思い、教師の顔色を窺った。
だが、教師は落ち着いていた。
「私はそんなことは思わないがな」
皆が安堵したとき、男子生徒はニヤッと笑う。
「じゃあ、僕が殺しますね」
ゾワッ、と咲良の身の毛がよだった。直後に男子生徒は咲良にとびかかった。その手にはカッターナイフが握られている。突然の出来事に咲良は対処が遅れた。
(あ……)
振り下ろされるカッターナイフがスローモーションに見えた。
遙香が目を見開き、純麗が手を伸ばすが間に合わない。
(私、死―)
死を察した咲良。
ドスッ。
心臓を一突きだった。
しかし。
「え」
心臓を刺されていたのは男子生徒。
そして、刺したのは。
「先生?」
男子生徒に突き刺さるナイフ。その柄を握っていたのは教師だった。
「死んだ方がいいのはお前だ」
教師はそう言い放った。
数秒遅れて遙香と純麗が駆け寄った。
「咲良!」
「大丈夫!?」
「……うん、私は……大丈夫だけど……」
咲良は目の前の惨状に体が震えたが、純麗は咲良にケガがないことを冷静に確認したあと、教師に向き直った。
「シン派の者か」
教師は淡々と答えた。
「あなたは……もしかしてテルカ様ですか?」
「聞いているのはこちらだ。答えろ」
「ええ、いかにも私はシン派の者ですが」
純麗の鋭い視線を受けて、教師は弁明する。
「そんなに睨まないでください。私はシン派の中でも穏健派ですので」
教師は男子生徒に刺さったままのナイフから手を引いた。男子生徒は床に倒れ、血だまりが広がっていく。
それまであまりのことに言葉を失っていた生徒たちが悲鳴を上げた。
「私の役目は終わりですね。次の者に引き継がなくては。テルカ様、次の者が穏健派とは限らないのでご注意を。それでは私は戻ります」
「待て!」
純麗が呼び止めようとしたが、答えはなく、代わりにおかしな反応が返ってきた。
「え、あ、え? なんだこれ……何が起きたんだ!? おい! 大丈夫か!? 誰か保健室と職員室に連絡を! 救急車を呼ぶよう伝えてくれ!」
「ばれたらまずいって言ったのにぃ~」
椅子の上でしゃがみながら回転する少女、純麗。もちろん、姿形は河合あんずである。
「そんなこと言ってる場合じゃない」
「あ、遙香もしかして怒ってる? ねぇ怒ってるの?」
椅子の回転を止めた純麗が煽る。
それを見届けた遙香は表情を消して一言だけ喋った。
「すみれ」
「あ、はい。すみませんでした」
普段はその持ち前の性格で後れを取ることがない純麗だが、遙香が本気で怒った時はその限りではない。とにかく、純麗は手のひらを返して謝った。
頃合いだと思った咲良が純麗に尋ねる。
「それで、お姉ちゃん。昨日のこと教えてくれるんだよね?」
昨日、教師が生徒を刺し殺すという前代未聞の事件が起きたことにより、学校が休校になったため、ことの真実を知るために咲良と遙香があんずの家に押しかけたのだ。
「う~ん……まぁ、たぶんもうあっちにはばれてるだろうからいっか」
純麗は諦めたかのようにため息をついた。
そして、語り始める。
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