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【苦悩】
14.
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トヨホギの願いは瞳に映り、ホスセリを動かした。
ホスセリの唇がトヨホギのそれと重なる。拒絶の意志はないと示すために、トヨホギは目を閉じて薄く唇を開いた。それでもホスセリは迷うように唇をついばみ、トヨホギの反応を確かめる。
トヨホギは迷いと緊張のために、こわばっていた。それでもけなげに口づけを受け止める理由はなんだろうと、ホスセリは閉じられたまぶたの奥に隠されたトヨホギの瞳を求めた。
言葉よりも真実を雄弁に語るそれを見せてほしい。
しかしそれを口にするのは、無粋な気がした。
トヨホギは重なる唇から、ホスセリの迷いを感じ取っていた。やはり彼も本心からこのような関係を望んでいるわけではないと、安心する。それと同時に、シキタカはどうなのだろうという疑問が湧いた。
(シキタカは、こんな歪な関係を望んでいるのかしら)
問いたくても、いま聞けるものではないとわかっている。シキタカは傍で様子を見ているのだと、トヨホギは察していた。気配は感じないが、狩りが得意な彼ならば、悟られずに部屋に入り、息をひそめるなどたやすいはずだ。
(シキタカが、見ている)
ぞくりと、トヨホギの背骨に官能が走った。自然と腕が動いて、ホスセリの肩を掴む。
ホスセリは驚き、唇を離した。トヨホギはゆっくりと目を開く。そこに淫靡の兆しを見つけて、ホスセリは荒々しくトヨホギの唇をふさいだ。
「んっ、ふ……」
迷いを振り払うように、ホスセリはトヨホギの口腔をむさぼった。
呼気をも奪われそうなほど激しく口を吸われて、トヨホギの目に涙がにじんだ。
「ふっ、んぅ……、うっ、ふ……、ううっ」
トヨホギはホスセリの衣を強く握り、応えようと舌を伸ばした。ホスセリはその舌を吸いながらトヨホギを抱きしめ、寝台に横たえる。
「ふっ、んぅ、う……っ、う、う」
救いを求めるように、トヨホギはホスセリにしがみついた。ホスセリは荒々しくトヨホギの服をはぎとり、白い肌に噛みついた。
「あっ……」
トヨホギの肩に、うっすらと歯形が残る。ホスセリはそれに舌を這わせた。沁みるような痛みと官能が生み出され、トヨホギの心を揺さぶった。
「ああ、あ――」
ホスセリは苦しんでいるのだと、トヨホギは察した。その原因は体の傷にほかならない。それがあるために、ホスセリは己でトヨホギを貫けないのだから。
「ホスセリ……、ああ」
呼びながら髪をまさぐり、彼の顔を胸に包む。ホスセリは胸の谷を強く吸って、所有の証を刻んだ。胸にしっかりと浮かんだうっ血に、トヨホギの心が憐憫に疼く。そして魂がとっさに呼んだ名前は、シキタカだった。
(どうして)
ホスセリの唇がトヨホギのそれと重なる。拒絶の意志はないと示すために、トヨホギは目を閉じて薄く唇を開いた。それでもホスセリは迷うように唇をついばみ、トヨホギの反応を確かめる。
トヨホギは迷いと緊張のために、こわばっていた。それでもけなげに口づけを受け止める理由はなんだろうと、ホスセリは閉じられたまぶたの奥に隠されたトヨホギの瞳を求めた。
言葉よりも真実を雄弁に語るそれを見せてほしい。
しかしそれを口にするのは、無粋な気がした。
トヨホギは重なる唇から、ホスセリの迷いを感じ取っていた。やはり彼も本心からこのような関係を望んでいるわけではないと、安心する。それと同時に、シキタカはどうなのだろうという疑問が湧いた。
(シキタカは、こんな歪な関係を望んでいるのかしら)
問いたくても、いま聞けるものではないとわかっている。シキタカは傍で様子を見ているのだと、トヨホギは察していた。気配は感じないが、狩りが得意な彼ならば、悟られずに部屋に入り、息をひそめるなどたやすいはずだ。
(シキタカが、見ている)
ぞくりと、トヨホギの背骨に官能が走った。自然と腕が動いて、ホスセリの肩を掴む。
ホスセリは驚き、唇を離した。トヨホギはゆっくりと目を開く。そこに淫靡の兆しを見つけて、ホスセリは荒々しくトヨホギの唇をふさいだ。
「んっ、ふ……」
迷いを振り払うように、ホスセリはトヨホギの口腔をむさぼった。
呼気をも奪われそうなほど激しく口を吸われて、トヨホギの目に涙がにじんだ。
「ふっ、んぅ……、うっ、ふ……、ううっ」
トヨホギはホスセリの衣を強く握り、応えようと舌を伸ばした。ホスセリはその舌を吸いながらトヨホギを抱きしめ、寝台に横たえる。
「ふっ、んぅ、う……っ、う、う」
救いを求めるように、トヨホギはホスセリにしがみついた。ホスセリは荒々しくトヨホギの服をはぎとり、白い肌に噛みついた。
「あっ……」
トヨホギの肩に、うっすらと歯形が残る。ホスセリはそれに舌を這わせた。沁みるような痛みと官能が生み出され、トヨホギの心を揺さぶった。
「ああ、あ――」
ホスセリは苦しんでいるのだと、トヨホギは察した。その原因は体の傷にほかならない。それがあるために、ホスセリは己でトヨホギを貫けないのだから。
「ホスセリ……、ああ」
呼びながら髪をまさぐり、彼の顔を胸に包む。ホスセリは胸の谷を強く吸って、所有の証を刻んだ。胸にしっかりと浮かんだうっ血に、トヨホギの心が憐憫に疼く。そして魂がとっさに呼んだ名前は、シキタカだった。
(どうして)
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