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【初夜】

13.

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 やわらかで悲しみに満ちた気遣いの声と花芯への愛撫が、トヨホギの胸を塞ぐ。快楽にあえぎながら、トヨホギは自分の内側が熱杭を歓迎しはじめるのを感じた。圧迫の息苦しさは薄れないが、愛液が呑んだものの動きを滑らかにしている。

(私は、この熱を知っている――?)

 ホスセリの肉体でないことは、明白だった。けれど彼の化身であるというホスセリの言葉を、肉感としてトヨホギは捉えた。

「はっ、ぁ、はんっ、ぁあ、あ、ホスセリ」

「トヨホギ。そう、ただ感じてくれればいい……。身をゆだねて、受け入れてくれ」

 切ないホスセリの願いに、トヨホギは従った。頭の先まで支配されたような圧迫が、ゆるゆると出入りするごとに悦楽へと変化してゆく。やがて突き上げてくる律動は早くなり、トヨホギの体の揺れはホスセリに受け止められた。どっしりとした落ち着きのある、大木に支えられているような安堵感と、穿たれ乱される快楽に翻弄され、トヨホギは獣のように細く高い悲鳴を上げた。

「ああっ、あ、はんっ、は、あぁう」

「トヨホギ、トヨホギ」

 ホスセリの声はどこまでも優しくて、淫蕩にたわんだトヨホギは彼に抱かれているのだと認知した。

「ああっ、ホスセリ、熱いわ……、体の奥が、すごく……っ、ああ」

「溶けてしまえばいい、トヨホギ。ただ悦楽に身悶えて、肌身を震わせていればいい」

 ホスセリがトヨホギの花芯を強くひねった。

「ホスセリ……、あっ、ああ……、ああぁああ――っ」

 強すぎる快感にトヨホギの意識は白く弾け、仰け反り吼えた彼女の蜜壷は、きつく熱杭を搾り上げた。

「クッ」

 トヨホギを突いていた者が短くうめき、腰を震わせ精を放つ。腹の奥が熱に打たれて弾けたと感受しながら、トヨホギは遠い場所へと意識を落とした。

「トヨホギ」

 自分を呼ぶ、優しい声にほほえみを返そうとしながら、トヨホギは意識を失い弛緩した。

   ***

 意識を失ったトヨホギの髪を、ホスセリは悲しげな顔で愛おしそうに掻きあげる。

「トヨホギ」

 身をかがめて彼女の頬に唇を当てると、ホスセリは彼女の足元に座している相手に顔を向けた。

「本当に、よかったんだろうか」

「この道のほかに、俺たちが救われる道はないだろう。兄者」

 ホスセリは眉間にシワを寄せ、苦しげに「その通りだ」とうなずいた。

「シキタカ」

 ホスセリは厳しい顔をしている弟に、物憂い目を向けた。自分よりも肉厚の、いかにも武人といった体躯。褐色の肌。意思の強そうな眉に、固い眼差し。引き結ばれた頑固そうな唇に、ホスセリは彼が納得をしきっていないのではと思った。

「エミナの国王は兄者だ。他の誰でもない。トヨホギの夫となれるのも、兄者だけだ。……だから、これでいい」

「シキタカ」
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