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「本田薫じゃ、いやだったんだよ」
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二人の笑い声が、よそよそしくあたたかな冬の空に舞い上がる。人々の間を走り、そのまま万丈セントラル公園のゲートを抜けて外に出た。
ゲートの外にある闇のたまり場のように暗い場所へ走りこみ、二人は互いを止めるように抱き合い、肩で息をしながら止まらぬ笑いをこぼし、顔を寄せた。
「ああ、譲」
ひとしきり笑って息が落ち着いてから、恭平が譲の左手を持ち上げ、ポケットから指輪を取り出し薬指にはめる。
きょとんとする譲に、恭平は彼の左手を目の高さに持ち上げ、シンプルなシルバーの指輪を見せた。
「これで、恋人がいるからって断れるだろ」
「恭平、これ」
驚きすぎて呆然とする譲に、恭平は自分の左手を見せる。恭平の薬指にも、同じ指輪があった。
「ヤドリギの下でキスをしたら、永遠に結ばれるんだろ? なら、結婚したも同然じゃねぇか」
「けっ、結婚?」
譲の声が裏返った。それを宥めるように、恭平が唇を寄せる。
「賭けの日にキスをしなかった理由が、わかるか?」
唇に触れたまま問えば、譲は疑問を瞳に乗せた。
「本田薫じゃ、いやだったんだよ」
唇で譲の下唇を甘く噛み、恭平が拗ねたように言えば、ふふっと譲がくすぐったそうな息を漏らした。
「なんだよ」
恭平が憮然とした声を出せば、譲が首を振って両腕で恭平を包み込んだ。
「かっこわりぃな」
「かっこいいよ」
恭平の呟きに、譲が心底の気持ちを込めて返す。
「……なぁ、譲」
「ん?」
笑みを含んだ譲の声に、恭平の不機嫌が溶けた。
「今日は、クリスマスイブだ」
「ああ」
そうだったと言外に続ける譲の耳に、そっと恭平がささやく。
「譲を、クリスマスプレゼントに欲しい」
ビクッと譲が震えて硬直した。
「二十五日の朝を、最高のプレゼントを抱きしめて迎えてぇんだよ」
ゲートの外にある闇のたまり場のように暗い場所へ走りこみ、二人は互いを止めるように抱き合い、肩で息をしながら止まらぬ笑いをこぼし、顔を寄せた。
「ああ、譲」
ひとしきり笑って息が落ち着いてから、恭平が譲の左手を持ち上げ、ポケットから指輪を取り出し薬指にはめる。
きょとんとする譲に、恭平は彼の左手を目の高さに持ち上げ、シンプルなシルバーの指輪を見せた。
「これで、恋人がいるからって断れるだろ」
「恭平、これ」
驚きすぎて呆然とする譲に、恭平は自分の左手を見せる。恭平の薬指にも、同じ指輪があった。
「ヤドリギの下でキスをしたら、永遠に結ばれるんだろ? なら、結婚したも同然じゃねぇか」
「けっ、結婚?」
譲の声が裏返った。それを宥めるように、恭平が唇を寄せる。
「賭けの日にキスをしなかった理由が、わかるか?」
唇に触れたまま問えば、譲は疑問を瞳に乗せた。
「本田薫じゃ、いやだったんだよ」
唇で譲の下唇を甘く噛み、恭平が拗ねたように言えば、ふふっと譲がくすぐったそうな息を漏らした。
「なんだよ」
恭平が憮然とした声を出せば、譲が首を振って両腕で恭平を包み込んだ。
「かっこわりぃな」
「かっこいいよ」
恭平の呟きに、譲が心底の気持ちを込めて返す。
「……なぁ、譲」
「ん?」
笑みを含んだ譲の声に、恭平の不機嫌が溶けた。
「今日は、クリスマスイブだ」
「ああ」
そうだったと言外に続ける譲の耳に、そっと恭平がささやく。
「譲を、クリスマスプレゼントに欲しい」
ビクッと譲が震えて硬直した。
「二十五日の朝を、最高のプレゼントを抱きしめて迎えてぇんだよ」
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