ひとりよがりなFalse Face

水戸けい

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あっという間に昇りつめ、手の中に放つ。

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「はぁ」

 今からこんな状態で大丈夫かと、恭平は元気な股間を見下ろした。

 家の中には誰もいない。両親も妹も、帰ってくるまでにあと三時間以上はある。譲との約束は一時間後で、迎え入れる準備も万端に整えた。

 ふう、と息を吐いた恭平は、自分のベッドを見つめて喉を鳴らす。

 ここで、譲を抱いた。

 正確には、犯した、と言うべきなのだろう。強引に、からかいの延長として手を伸ばし、開き、自分をうずめた。腕を自分の服で戒められた譲が、身悶え腰を突き出し声を上げて――。

 そこまで思い出せば、もう我慢は利かなかった。手早く下着ごとズボンをずらし、持ち上がった陰茎を扱きはじめる。ベッドに顔をうずめ、乱れる譲を思い出し、彼に触れた高揚を、彼の中に打ち付けた快楽を思い起こせば、面白いほど簡単に恭平は猛りきった。

「くっ、ぅ」

 あっという間に昇りつめ、手の中に放つ。

「は、ぁ」

 射精の余韻と情けなさを交えて吐き出せば、空虚が胸に生まれた。手を伸ばしてティッシュを手にし、出したものをふき取って横になる。

 譲は、どんな顔をしてこの部屋に上がってくるのだろう。とっさに、譲は眠ってしまっていたんだと嘘をついた。体を綺麗に拭い、服をきっちりと着せ、匂いも消した。どうして自分がそんなことをしてしまったのか、恭平はきちんと理解できていなかった。

 どうして俺は、誤魔化そうとしたんだろう。どうして堂々としていられなかったのだろう。罪悪感からだろうか。譲に拒絶をされることを、嫌悪されることを恐れたからか。

「今更」

 思ってみても、どうしようもない。恭平はごまかし、譲はそれを信じた。あんなとんでもない事は、夢だと思って当然だろう。けれど少し、残念な気持ちもあった。身勝手な望みだと思いつつも、恭平はあの時の事を思い出す。本当にそうかと詰め寄られれば、長い間ずっと隠し続けていた気持ちを吐露できたかもしれない。

「譲は、信じたんだ」

 夢だと思う方が、しっくりくるような出来事だったのだから。夢ということにして片付けようとしたのは、自分なんだから。それを残念だと思うこと自体が、間違っている。詰め寄られ、吐露し、拒絶をされるよりもいいじゃないかと、恭平は自分に言い聞かせた。

「譲。好きだ」

 愛してる、と気を失った譲に告げた途端、体の中心からすみずみまで、あたたかく心地よいものが広がった。気を失った譲を抱きしめ身を擦り寄せれば、想いが体内に留まりきれず、両目からあふれ出た。
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