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おかねはほしい
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ストーカー被害から救ってやった女美容師に髪をセットされ、その美容師の友人で芸能人のメイクをしているようなメイクアップアーティストだとかいう女に化粧を施される。んまあ、どんだけ時間をかけたところでこれから運動させられるから落ちるんだけどな。あとは、厄介客を追い払ってやったコンカフェ嬢に服を見立ててもらった。素体の出来がいいので、精巧なお人形さんのようになる。本人も鏡を見て「お、おう」と驚いていた。普段はがに股で、偉くもないのに偉そうに歩くくせに、履き慣れないハイヒールの靴なのもあって慎重な歩みになる。
これからロリコン野郎のところにキサキを連れて行く。どうせひん剥くくせに可愛い服を着せてこいって言うからよ。
キサキには目的地を伝えていない。
朝は叩き起こされ、あっちこっちに移動させられてさぞかし不機嫌だろう。と思えば、デートか何かだと思い込んでいたらしい。いつもの昇竜軒の前で「他の店に行きたい」とわがままを言い出した。
「せっかく普段しないような格好してんだから、おばちゃんに見せてやろう」
普段は動きやすさを重視して上下ジャージ姿であることが多い。この子のねえさんみたくピッタリしたライダースーツでもいいかもな。まあ、『デスゲーム』当日は、依頼者から他の参加者がしなさそうな目立つ格好をさせてくれと言われている。とはいえ機動性が損なわれてはよろしくないので、軍服でも着せようと思っているところ。胸がぺったんこなのも相まって、遠目には男の子に見えるかもしれない。
「それもそっか」
さっきまでは渋っていたくせに。オレに諭されて納得したのか、手のひらを返し、自ら進んで店に入っていく。精いっぱい悪ぶっているつもりでも、実は素直で、単純で、他人から優しくされるところっと騙されてしまう。もし、普通に『デスゲーム』へ参加させていたらあっという間に死ぬタイプだ。都合よく弾除けにされておしまい。だからオレが鍛えてやってるんだけどさ。
「いらっしゃ、あらー! あらまー!? どこのお嬢様かと思ったわよ! すんごく可愛いわ!」
おばちゃんがテーブルを拭く手を止めて、のしのしと近づいてきた。昇竜軒は、オレがキサキを弟子として迎え入れた思い出の場所だ。それとタバコが吸える。今時の都内はどこに行っても吸えないからな。喫煙所はあっても長蛇の列で順番待ちだしさ。
「ふふん」
褒められてご満悦なキサキだったが、昇竜軒で天津飯を食べてから向かった先で「その子が例の弟子ちゃんかね。ウワサ通りの可憐な、どこかの姫みたいじゃなあ」と類似する言葉をかけられた際には表情が引き攣っていた。
「今日の仕事は「やだ! 帰る!」
言い終わる前にカットインしてくんな。相手は反抗的なキサキを見て「いいねいいねぇ!」と、ブヨブヨの肉体を揺らし手を叩いて喜んでいる。なんでもう全裸なんだ。ちいさなぞうさんは準備万端でパオンしてるしさ。ちっさ。このオレに汚いモン見せんじゃねぇよ。
「帰る! 帰る帰るかえふぐゥッ……!」
さっき飯を食わせてやったばっかりだからしたくなかったけど、こんなに駄々をこねられたら殴って黙らせるしかないよな。
「やだ……やだよぉ……」
うずくまらずに、オレの足へ絡みついてくる。まだ仕事の内容までは言ってねぇんだけどなー。おっかしーなー。
「優しくしてやってくれ」
キサキにではなく、目の前の自立する肉塊へと伝えたつもりだ。このオレの一言で察したキサキが、手を離す。やっぱりお前は物分かりのいい子だよ。
「貴殿と違って、僕は女の子のおなかをパンチする趣味はない」
「だ、そうだ。よかったな」
オレを見上げるアイボリーの瞳にうっすらと涙の膜が張って、軽蔑の色をしていた。このクソデブはお前の処女に札束積んで買ってくれた好事家なのに。そんな顔するなよ。大事な『ねえさん』を死の淵から甦らせるための、手伝いをしてくれる善き大人なんだから。
「君みたいなほっそい子が大好きでねぇ」
「オレはあんたみたいな奴は嫌いだッ!」
「おやおや……」
その『ねえさん』がほんとはピンピンしていることを、キサキには口が裂けても言えない。なぜなら「ネタバラシはするな」と、依頼者からきつーく言われているからさ。酷なことをするよな全く。
「約束通り、あしたの朝に引き取りに来るからさ」
「あしたァ!?」
「どうぞごゆっくり」
これからロリコン野郎のところにキサキを連れて行く。どうせひん剥くくせに可愛い服を着せてこいって言うからよ。
キサキには目的地を伝えていない。
朝は叩き起こされ、あっちこっちに移動させられてさぞかし不機嫌だろう。と思えば、デートか何かだと思い込んでいたらしい。いつもの昇竜軒の前で「他の店に行きたい」とわがままを言い出した。
「せっかく普段しないような格好してんだから、おばちゃんに見せてやろう」
普段は動きやすさを重視して上下ジャージ姿であることが多い。この子のねえさんみたくピッタリしたライダースーツでもいいかもな。まあ、『デスゲーム』当日は、依頼者から他の参加者がしなさそうな目立つ格好をさせてくれと言われている。とはいえ機動性が損なわれてはよろしくないので、軍服でも着せようと思っているところ。胸がぺったんこなのも相まって、遠目には男の子に見えるかもしれない。
「それもそっか」
さっきまでは渋っていたくせに。オレに諭されて納得したのか、手のひらを返し、自ら進んで店に入っていく。精いっぱい悪ぶっているつもりでも、実は素直で、単純で、他人から優しくされるところっと騙されてしまう。もし、普通に『デスゲーム』へ参加させていたらあっという間に死ぬタイプだ。都合よく弾除けにされておしまい。だからオレが鍛えてやってるんだけどさ。
「いらっしゃ、あらー! あらまー!? どこのお嬢様かと思ったわよ! すんごく可愛いわ!」
おばちゃんがテーブルを拭く手を止めて、のしのしと近づいてきた。昇竜軒は、オレがキサキを弟子として迎え入れた思い出の場所だ。それとタバコが吸える。今時の都内はどこに行っても吸えないからな。喫煙所はあっても長蛇の列で順番待ちだしさ。
「ふふん」
褒められてご満悦なキサキだったが、昇竜軒で天津飯を食べてから向かった先で「その子が例の弟子ちゃんかね。ウワサ通りの可憐な、どこかの姫みたいじゃなあ」と類似する言葉をかけられた際には表情が引き攣っていた。
「今日の仕事は「やだ! 帰る!」
言い終わる前にカットインしてくんな。相手は反抗的なキサキを見て「いいねいいねぇ!」と、ブヨブヨの肉体を揺らし手を叩いて喜んでいる。なんでもう全裸なんだ。ちいさなぞうさんは準備万端でパオンしてるしさ。ちっさ。このオレに汚いモン見せんじゃねぇよ。
「帰る! 帰る帰るかえふぐゥッ……!」
さっき飯を食わせてやったばっかりだからしたくなかったけど、こんなに駄々をこねられたら殴って黙らせるしかないよな。
「やだ……やだよぉ……」
うずくまらずに、オレの足へ絡みついてくる。まだ仕事の内容までは言ってねぇんだけどなー。おっかしーなー。
「優しくしてやってくれ」
キサキにではなく、目の前の自立する肉塊へと伝えたつもりだ。このオレの一言で察したキサキが、手を離す。やっぱりお前は物分かりのいい子だよ。
「貴殿と違って、僕は女の子のおなかをパンチする趣味はない」
「だ、そうだ。よかったな」
オレを見上げるアイボリーの瞳にうっすらと涙の膜が張って、軽蔑の色をしていた。このクソデブはお前の処女に札束積んで買ってくれた好事家なのに。そんな顔するなよ。大事な『ねえさん』を死の淵から甦らせるための、手伝いをしてくれる善き大人なんだから。
「君みたいなほっそい子が大好きでねぇ」
「オレはあんたみたいな奴は嫌いだッ!」
「おやおや……」
その『ねえさん』がほんとはピンピンしていることを、キサキには口が裂けても言えない。なぜなら「ネタバラシはするな」と、依頼者からきつーく言われているからさ。酷なことをするよな全く。
「約束通り、あしたの朝に引き取りに来るからさ」
「あしたァ!?」
「どうぞごゆっくり」
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