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ほうこく
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「てなわけで、犯人は自分から告白しに行って、学校に侵入した方法も解決。基たちは、母の実家に戻って行って、全部解決。一件落着って感じかな?良かった、スッキリ出来て…」
言い終わる自分の表情に、変わりはないつもりだ。だけど、父さんは違っていたらしい。
「ちょ、ちょっと!…ちょっと待って中!君は、何を言っているのか、分かっているのかい?」
父さんの顔が近付いた。
「うん、基が元気になって良かった」
「違う、そこじゃないよ。3日も通信をしないで、何事かと思ったら、またそんなことをして…。本当に、中に何かあったのかと、ママと相談していたんだよ?」
言いながらも、父さんは納得したように呟いた。
「学校への不審者騒ぎ。犯人は、卒業生…か。確かにありうる話だけど…」
「うん」
「ガラスが割られていたことについては、どうなったのか…」
話しながら、父さんは手元にあるタブレットを操作していた。
「えーっと…、これか。『学校に告白し、警察に自首。中学生は書類送検』って、これだけか?もっと、原因とか、その後の対応とか…」
画面の向こうの父さんは、久しぶりに会うのに、そのことには触れなかった。
「良いかい中?学校のガラスを割るような子たちに関わって、君が怪我をしていたら、どうするつもりだったんだい?」
父さんは険しい顔だったけれど、心配をしているようだった。
だから、それには触れない。
「うん、でも話してみたら、そんなに悪い人たちじゃなかったよ?ガラスを割っても、怖い人じゃなかったし。…そういうの、ヘンケンって言うんだってよ?」
心配されるのが嫌なわけじゃないけれど、他人事のように言うと父さんは、大きく息を吐いた。
「それはそうなんだけど、何を悠長なことを」
「ま、それでうまくいったんだから、それで良しとしてよ?」
画面から下がった父さんが、困ったように笑った。
「入学してからすぐにあった、変質者の時もそう言ったよね、中?」
覚えていたけれど、首を傾げる。
「そうだったかもね?」
「『防犯ブザーがあって、その人は捕まったんだし、何も被害はなかったんだから、良しとしてよ??』ってさ」
一言一句同じセリフを言い、父さんは脱力したように椅子にもたれた。
「中、このことも、ママには言わない方がいいだろうね」
「倒れちゃうから?」
父さんは「いいや?」と笑う。
「そうじゃない。今度こそ心配で、家から出なくなっちゃうよ?それでも良い?」
父さんの言葉に、しばらく考える。
そんな自分に、父さんは面白そうに言葉を続けた。
「ママのことだ。可愛い中のために、毎日張り切って主婦をしてくれるだろうね。今まで出来なかった分の反動も含めて、ステキなママをしてくれると思うよ?毎回の食事に、朝夕の学校への送り迎え、毎日のように先生との情報交換、宿題の付き添い、遊んでいてもちゃんと見守っていてくれるだろうし、家に帰ってからも、それは続くだろう。お風呂も一緒で、そうそう、夜の添い寝まで喜んでしてくれるだろうなぁ」
料理研究家って、細かい手順が得意だからね。分刻みでスケジュールが組まれているんだろうなぁ?と重ねて言う呟きに、少し困った。
それは、嬉しいという気持ちもそこに含まれていたから。
素直に喜んで良いものか、仕事をする母がすごくイキイキしていることも、自分は知っている。
言い終わる自分の表情に、変わりはないつもりだ。だけど、父さんは違っていたらしい。
「ちょ、ちょっと!…ちょっと待って中!君は、何を言っているのか、分かっているのかい?」
父さんの顔が近付いた。
「うん、基が元気になって良かった」
「違う、そこじゃないよ。3日も通信をしないで、何事かと思ったら、またそんなことをして…。本当に、中に何かあったのかと、ママと相談していたんだよ?」
言いながらも、父さんは納得したように呟いた。
「学校への不審者騒ぎ。犯人は、卒業生…か。確かにありうる話だけど…」
「うん」
「ガラスが割られていたことについては、どうなったのか…」
話しながら、父さんは手元にあるタブレットを操作していた。
「えーっと…、これか。『学校に告白し、警察に自首。中学生は書類送検』って、これだけか?もっと、原因とか、その後の対応とか…」
画面の向こうの父さんは、久しぶりに会うのに、そのことには触れなかった。
「良いかい中?学校のガラスを割るような子たちに関わって、君が怪我をしていたら、どうするつもりだったんだい?」
父さんは険しい顔だったけれど、心配をしているようだった。
だから、それには触れない。
「うん、でも話してみたら、そんなに悪い人たちじゃなかったよ?ガラスを割っても、怖い人じゃなかったし。…そういうの、ヘンケンって言うんだってよ?」
心配されるのが嫌なわけじゃないけれど、他人事のように言うと父さんは、大きく息を吐いた。
「それはそうなんだけど、何を悠長なことを」
「ま、それでうまくいったんだから、それで良しとしてよ?」
画面から下がった父さんが、困ったように笑った。
「入学してからすぐにあった、変質者の時もそう言ったよね、中?」
覚えていたけれど、首を傾げる。
「そうだったかもね?」
「『防犯ブザーがあって、その人は捕まったんだし、何も被害はなかったんだから、良しとしてよ??』ってさ」
一言一句同じセリフを言い、父さんは脱力したように椅子にもたれた。
「中、このことも、ママには言わない方がいいだろうね」
「倒れちゃうから?」
父さんは「いいや?」と笑う。
「そうじゃない。今度こそ心配で、家から出なくなっちゃうよ?それでも良い?」
父さんの言葉に、しばらく考える。
そんな自分に、父さんは面白そうに言葉を続けた。
「ママのことだ。可愛い中のために、毎日張り切って主婦をしてくれるだろうね。今まで出来なかった分の反動も含めて、ステキなママをしてくれると思うよ?毎回の食事に、朝夕の学校への送り迎え、毎日のように先生との情報交換、宿題の付き添い、遊んでいてもちゃんと見守っていてくれるだろうし、家に帰ってからも、それは続くだろう。お風呂も一緒で、そうそう、夜の添い寝まで喜んでしてくれるだろうなぁ」
料理研究家って、細かい手順が得意だからね。分刻みでスケジュールが組まれているんだろうなぁ?と重ねて言う呟きに、少し困った。
それは、嬉しいという気持ちもそこに含まれていたから。
素直に喜んで良いものか、仕事をする母がすごくイキイキしていることも、自分は知っている。
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