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こくはく
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「お兄ちゃんが、最近ずっとイライラしているんだ。それは、お母さんも一緒で、2人が家にいると言い合いになって、2人とも大きな声を出すから、ぼくすごく怖くて…。聞いていると、段々悲しくなってくるんだ…」
基が深く息を吸う。泣くのをこらえるように、深く深く何度も呼吸をした。
「お兄ちゃん、イライラするのを抑えるのに、学校に入ったって言ってた」
元に教えるように、基はそっとそう言った。
「こんなこと、やっちゃいけないって…分かってる。悪いこと、だって、…しちゃいけないんだって、ぼくだって分かってる。でも、お兄ちゃんがお母さんとケンカしないためなら、ぼくは協力することができるって思って…」
基の声には、自分でもどうしようもないことに対する、やるせなさとか、怖さみたいなものがある気がした。
学校へ侵入したのが、基の兄という事実。
昨日と同じだ。自分では、どうしようもない感覚。
「お兄ちゃん、ぼくのことは気にしてくれるんだ。ぼくが怖がって、もうできないって言ったら、大丈夫だって言ってくれて…。でも!なのに…昨日の、夜っ」
基の言葉が止まる。
そこで、3人とも基の言いたいことを理解した。
昨日の夜、つまり朝の騒ぎになっていた、ガラスが割れたことを意味しているんだろう。
そのガラスを割ったのは、多分基の兄ということになる。
「馬鹿か?お前は、自分の兄ちゃんが言ったからって、ダメなことはダメだろうが!兄ちゃんが、警察に捕まっても良いのかよ?ガラスまで割ったら、完全に悪いことになるだろ!」
静は、拳を握りすぎて手が白くなっていた。興奮している証拠だ。
きっと、自分の兄に置き換えて考えてしまったんだろう。してしまったことで、この後に待っている言いようのない不安や怖さを、自分の兄に来るものと考えて怒っていた。
「もう、やめた方が良い」
静の手の上に、自分の手を置いて基にそう言う。
「うん、ぼくも中に賛成」
静は納得がいかなかった。
「ウチらが、昨日の内に羽賀センに言ってたらどうしてたんだよ!」
静が突っかかっても、基は悲しそうに笑った。
「それでも良いって思ってたんだ。ううん、本当はそうなったら良いって…思ってた」
「は?」
「中くんと、静ちゃんが、先生に言ってくれたら良かったのに、って…」
「お前、自分で何言ってるか分かってんのかよ!」
静の怒りはずっと続いていた。
基が深く息を吸う。泣くのをこらえるように、深く深く何度も呼吸をした。
「お兄ちゃん、イライラするのを抑えるのに、学校に入ったって言ってた」
元に教えるように、基はそっとそう言った。
「こんなこと、やっちゃいけないって…分かってる。悪いこと、だって、…しちゃいけないんだって、ぼくだって分かってる。でも、お兄ちゃんがお母さんとケンカしないためなら、ぼくは協力することができるって思って…」
基の声には、自分でもどうしようもないことに対する、やるせなさとか、怖さみたいなものがある気がした。
学校へ侵入したのが、基の兄という事実。
昨日と同じだ。自分では、どうしようもない感覚。
「お兄ちゃん、ぼくのことは気にしてくれるんだ。ぼくが怖がって、もうできないって言ったら、大丈夫だって言ってくれて…。でも!なのに…昨日の、夜っ」
基の言葉が止まる。
そこで、3人とも基の言いたいことを理解した。
昨日の夜、つまり朝の騒ぎになっていた、ガラスが割れたことを意味しているんだろう。
そのガラスを割ったのは、多分基の兄ということになる。
「馬鹿か?お前は、自分の兄ちゃんが言ったからって、ダメなことはダメだろうが!兄ちゃんが、警察に捕まっても良いのかよ?ガラスまで割ったら、完全に悪いことになるだろ!」
静は、拳を握りすぎて手が白くなっていた。興奮している証拠だ。
きっと、自分の兄に置き換えて考えてしまったんだろう。してしまったことで、この後に待っている言いようのない不安や怖さを、自分の兄に来るものと考えて怒っていた。
「もう、やめた方が良い」
静の手の上に、自分の手を置いて基にそう言う。
「うん、ぼくも中に賛成」
静は納得がいかなかった。
「ウチらが、昨日の内に羽賀センに言ってたらどうしてたんだよ!」
静が突っかかっても、基は悲しそうに笑った。
「それでも良いって思ってたんだ。ううん、本当はそうなったら良いって…思ってた」
「は?」
「中くんと、静ちゃんが、先生に言ってくれたら良かったのに、って…」
「お前、自分で何言ってるか分かってんのかよ!」
静の怒りはずっと続いていた。
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