隻腕の聖女

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7つの断章編

第21話

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レイリアは、私に策を話した。

訊いてみれば、策というほどのものではなかった。
単純に、レイリアに私の右手の力を使って欲しいというものだった。

どうやら、前回の悪魔との戦闘の際、
私がレイリアを治療した後に放った力が、
レイリア自身も見たことがないほど強力だったと感じていたらしい。

恐らく、私の力がレイリアに何らかの作用を及ぼし、
強力な魔力を引き出したのではないかということだった。

私は、半信半疑ながらも、レイリアに治癒の力を使った。

彼女に傷はないため、見た目に変化はない。
本当にこれでうまくいくのだろうか?

ベアトリスの使い魔と蛇型の悪魔が格闘を続ける傍で、
私はレイリアにありったけの力を使って、治癒の力を使い続けた。

やがて、私の右腕に宿った光が、
徐々に失われていった。

「これでどう?」
私はレイリアに尋ねた。

レイリアは首を傾げた後に、あまりパッとしない感じで頷く。

失敗したかもしれない。
私もベアトリスもほどんど力を使い切っている。

これがもし失敗ならば、一度出直してきたほうがいいかもしれない。
私は、逃走の算段を立て始めていた。

ベアトリスの使い魔の動きは徐々に鈍っていて、
蛇型の悪魔にすっかり覆われてしまっている。
そう長い時間はもたないだろう。

これがどう考えてもラストチャンスだ。

私は、レイリアの動きを見守った。

リスバートの背の上で、
蛇型の悪魔に向かって左手を突き出す。

彼女の左手がバチバチと音を立てながら光を宿す。
光はやがて、周囲を明るく照らすほどになり、
彼女よりも大きくなった。

「これがレイリアの力・・・。」
私は初めてレイリアが力を使うところを目撃し、
その凄さにようやく気付いた。

いつの間にか私の隣にやってきていたベアトリスも、
呆然と立ち尽くしながら彼女のことを見つめていた。

蛇型の悪魔も、その明るさから、ようやく異変に気付き、
ベアトリスの使い魔から離れ、レイリアに向かって襲い掛かった。

しかし、その攻撃がレイリアに届く前に、
彼女の左手から眩いほどの光が放たれ、
蛇型の悪魔を一直線に貫いた。

あまりの眩しさに、私は目を閉じた。
目を閉じてもなお、光の軌道が私の網膜に焼き付いていた。

直後、ゴロゴロ、という爆音が鳴り響く。
あまりの爆音に、地面が軽く揺れる。

彼女の驚異的な力の正体は、雷だった。

私が目を開けると、
そこには全身真っ黒に焦げた蛇型の悪魔と、
ベアトリスの使い魔の姿があった。

そして、レイリアから空に向けて虚無の道ができており、
その周囲は、黒く焦げたり、赤熱していた。

「すごい・・・。」
私は、驚きでしばらくその場に立ち尽くしていた。
ベアトリスも私の横で同様に立ち尽くす。

やがて、雨が降り出した。
体がビショビショになる位の大雨だ。

私達は、悪魔達が残していった魔力の球を急いで拾い集め、
近くにあった洞穴に逃れて、雨が上がるのを待った。

「イヴおねぇさんの力、私とすごく相性がいいみたい。
 私も、いままで見たことがない威力だった。」
レイリアが私に嬉しそうに報告する。

その言葉に、ベアトリスも、リスバートも少し躊躇っていた。

「本当にあんなことができるとはな・・・。」
リスバートは心底驚いた様子だ。

ベアトリスは気もそぞろといった感じで小さく頷く。

「またレイリアのお陰でルザーフの使者を倒すことができたわね。」
私の言葉に、レイリアが一層嬉しそうな笑みをこぼす。

私は、レイリアが仲間にいてくれてよかったと、心底思った。
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