隻腕の聖女

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王の野望編

第41話

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翌朝、レイウィンを出発し、
ウルスを目指して、南へ向かった。

ウルスが近くなってくると、
整備された道になり、いよいよ戻ってきたことを感じた。

城の姿がはっきり見えてきた頃、
誰かが私を待ち構えるように道の真ん中で立っているのに気付いた。

近づいていくとその正体がわかった。

ルースだ。

私はルースの横で馬を止めて降りた。

「私になにか用?」
私は少しつっけんどんに答えた。

「つれないねぇ、
  折角特大なプレゼントを
  持ってきてあげたのに。」
見れば、ルースは右手に包みを持っていた。
大きさや形から察すると、
少し短めな剣といったところだろうか?

「ディメイアの事が嫌いだったらしいけど
  なぜ、私の肩を持つの?」
私はリヒヤールと話して、
疑問に思っていたことをぶつけてみた。

「あいつは嫌いだよ。
  でも、君のことが好きなのさ。
  野暮なこと聞くなよ。」
ルースはまたもうまくはぐらかす。

「それより、こいつは要らないのか?
  持って帰っちゃうぞ。」
ルースがいたずらする子供のように聞いてくる。

私はルースの態度に少しイライラしたので、
静かにそのまま去ろうとする素振りを見せた。

「待てって。悪かった。
  でも、こいつはあんたが
  本当に欲しいと望むものだ。」
ルースが珍しく慌てる。

「私が欲しいのはあなた達
  悪魔のいない世界だけど、
  それ意外に何かあったかな?」
私は痺れを切らし始めた。

「別に俺が持っていても構わないが、
  俺はウェナのことも嫌いでね。」

どういうこと?と聞く前にルースは包みを開ける。
包みのなかには人間の右腕が入っていた。

その腕は、薄緑に淡く輝いていた。

「あんたの右腕だ。
  こいつがあった方が
  アルケスとも戦いやすいだろ?」
ルースは薄緑色に輝く腕を、
私の元々右腕があった場所に押し付け、
数回撫でた。

すると、まるで初めからそこにあったかのようにくっついて、すぐに動かせるようになった。

私の右腕が戻ってきたのだ。

「あなたの目的は一体何?
  どうしてここまでしてくれるの?」
私はルースのことを誤解していたのかもしれない。
今のルースはどうみても敵には思えない。

「言っただろ?
  俺は君の事が好きなのさ。
  でも、俺に惚れるなよ?
  俺は悪魔だからな。」
ルースは不敵な笑みを浮かべて、
私の顔に近づいてくる。

私は慌ててルースをはね除けた。

「顔が真っ赤だぜ。
  はピュアだな。」
ルースはそのまま後退りしていくと、
段々輪郭がぼやけて消えていき、
徐々に侵食するように彼の姿は欠けていく

私は慌てて止めようとしたが、
その頃には彼の姿はもうなかった。

私の腕はどこから手に入れたのだろうか。
彼の真意は?

まだまだ不思議なことはあったが、
いずれにせよ、右腕が返って来てとても嬉しかった。

もう二度と返ることはないと思っていたが、
こんな形で返ってくるとは・・・。
それも悪魔の手によって。

きっとウェナ様もどこかで私を見守ってくれるているに違いない。
私の心は希望に満ちた。

私はでしっかりと手綱を握り、
ウルスの街へと馬を駆った。
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