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王の野望編
第36話
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洞窟は、やがて水没した箇所が増えていった。
分岐点も多くなり、道は狭くなっていった。
行き止まりに突き当たることも多かった。
私は帰ることができるのか不安になりながらも先へと進んでいくと、
やがて、巨大な地底湖のような場所にたどり着いた。
その場所は、壁に松明が掲げられ、ぼんやりと明るかった。
明らかに何者かの手が入っている様子だ。
よく目を凝らしてみると、そこには数匹の魚人型の悪魔がいた。
彼らは私に気付くと、それぞれに武器を手にした。
「お願い、こっちに来ないで。
私も、できることならあなた達と戦いたくない。」
私がそういっても相手は聞く耳を持たない。
仕方なく、私は彼らを左手の力で消滅させた。
「私達が共生することは不可能なのかな?」
私は一人残された広い空間で呟いた。
すると、地底湖の水が噴水のように天井へ向かって吹き上げた。
いや、よく見ると、吹き上げた水の隙間から、
こちらを覗く大きな目が見えた。
まさか、リヒヤール?
私はその大きさに唖然とした。
大蛇のようなその姿は、
体の一部しか見えていないが、10メートルはありそうな天井に頭が付きそうだ。
顔の真ん中に大きな眼が一つあり、
顔の側面にも4つづつ、計8個の小さな眼があった。
口は大きく裂け、家の一つも丸のみできそうなほどだ。
「お前がディメイアの力を持つ人間か?
まさか、ここまでくるとはな。」
広い空間中に響き渡る声でリヒヤールは言った。
「海を渡ってやってくるものだと思っていたが、
洞窟を通ってやってくるとは・・・。
誰かの入れ知恵か?」
リヒヤールは穏やかに尋ねてきた。
「ルザーフに聞きました。
海の上では勝ち目はないと。」
私は正直に答えた。
「ルザーフ?あいつ、まだ生きていたのか。
私達の前にも姿を現さず、
人間と仲良しごっことは、
奴は気でも狂ったのか?
それも、あれほど嫌っていたディメイアの力を持つ娘だと?」
リヒヤールは腑に落ちない様子だった。
ルザーフはディメイアを嫌っていた?初耳だ。
ますますルザーフが気味悪くなってきた。
一体何を考えているのだろう。
「リスバートに聞いた。
私達の力を次々に吸収しているそうだな?
何が目的だ?」
リヒヤールは続けざまに質問してくる。
「旅を始めた理由は、
王に憑りついているというアルケスを倒すためでした。
今は、力を集めつつ、民を苦しめる悪魔達を征伐しています。」
私がそう答えると、
「征伐と?リスバートに聞いたのであろう?
初めに手を出したのはお前達人間だと。」
リヒヤールは穏やかに即答する。
やはり、あの話は本当なのだろうか?
「もしそれが本当であれば謝りたいところですが、
それで許されることではないでしょう。
しかし、このまま人々が苦しむことも避けたいのです。
私達は共生できないのですか?」
私は思っていたことを口にしてみた。
「わがままな娘だ。しかし、
その道もあったのかもしれんな。
アルテア様の力さえあれば、私達は元の姿に戻ることができた。
しかし、その道もディメイアとウェナの争いによって閉ざされた。
ウェナの力なしでは、もはや叶わん。」
私はその言葉の意味が分からず問いかけた。
「ディメイアとウェナ様が何をしたって?
ウェナ様の力と悪魔の件がどう関係あるの?」
すると、リヒヤールはしばらく黙った後に、こう言った。
「私からこれ以上話すことはない。
知りたければディメイアにでも聞くがいい。」
私は心の中でディメイアに問いかけてみたが、
何も返ってこなかった。ディメイアも話したくないことなのだろうか?
それとも今まで通りだんまりを決めているだけなのだろうか?
「さて、どうする?
私の事も倒すのか?」
リヒヤールは更に地底湖から這い出してきた。
くねくねと曲がってもなお、
天井をこすりそうな胴体は、その大きさを物語っていた。
あまりの大きさに私は戦意を喪失しかけていた。
今回ばかりは流石に無理かもしれない・・・。
分岐点も多くなり、道は狭くなっていった。
行き止まりに突き当たることも多かった。
私は帰ることができるのか不安になりながらも先へと進んでいくと、
やがて、巨大な地底湖のような場所にたどり着いた。
その場所は、壁に松明が掲げられ、ぼんやりと明るかった。
明らかに何者かの手が入っている様子だ。
よく目を凝らしてみると、そこには数匹の魚人型の悪魔がいた。
彼らは私に気付くと、それぞれに武器を手にした。
「お願い、こっちに来ないで。
私も、できることならあなた達と戦いたくない。」
私がそういっても相手は聞く耳を持たない。
仕方なく、私は彼らを左手の力で消滅させた。
「私達が共生することは不可能なのかな?」
私は一人残された広い空間で呟いた。
すると、地底湖の水が噴水のように天井へ向かって吹き上げた。
いや、よく見ると、吹き上げた水の隙間から、
こちらを覗く大きな目が見えた。
まさか、リヒヤール?
私はその大きさに唖然とした。
大蛇のようなその姿は、
体の一部しか見えていないが、10メートルはありそうな天井に頭が付きそうだ。
顔の真ん中に大きな眼が一つあり、
顔の側面にも4つづつ、計8個の小さな眼があった。
口は大きく裂け、家の一つも丸のみできそうなほどだ。
「お前がディメイアの力を持つ人間か?
まさか、ここまでくるとはな。」
広い空間中に響き渡る声でリヒヤールは言った。
「海を渡ってやってくるものだと思っていたが、
洞窟を通ってやってくるとは・・・。
誰かの入れ知恵か?」
リヒヤールは穏やかに尋ねてきた。
「ルザーフに聞きました。
海の上では勝ち目はないと。」
私は正直に答えた。
「ルザーフ?あいつ、まだ生きていたのか。
私達の前にも姿を現さず、
人間と仲良しごっことは、
奴は気でも狂ったのか?
それも、あれほど嫌っていたディメイアの力を持つ娘だと?」
リヒヤールは腑に落ちない様子だった。
ルザーフはディメイアを嫌っていた?初耳だ。
ますますルザーフが気味悪くなってきた。
一体何を考えているのだろう。
「リスバートに聞いた。
私達の力を次々に吸収しているそうだな?
何が目的だ?」
リヒヤールは続けざまに質問してくる。
「旅を始めた理由は、
王に憑りついているというアルケスを倒すためでした。
今は、力を集めつつ、民を苦しめる悪魔達を征伐しています。」
私がそう答えると、
「征伐と?リスバートに聞いたのであろう?
初めに手を出したのはお前達人間だと。」
リヒヤールは穏やかに即答する。
やはり、あの話は本当なのだろうか?
「もしそれが本当であれば謝りたいところですが、
それで許されることではないでしょう。
しかし、このまま人々が苦しむことも避けたいのです。
私達は共生できないのですか?」
私は思っていたことを口にしてみた。
「わがままな娘だ。しかし、
その道もあったのかもしれんな。
アルテア様の力さえあれば、私達は元の姿に戻ることができた。
しかし、その道もディメイアとウェナの争いによって閉ざされた。
ウェナの力なしでは、もはや叶わん。」
私はその言葉の意味が分からず問いかけた。
「ディメイアとウェナ様が何をしたって?
ウェナ様の力と悪魔の件がどう関係あるの?」
すると、リヒヤールはしばらく黙った後に、こう言った。
「私からこれ以上話すことはない。
知りたければディメイアにでも聞くがいい。」
私は心の中でディメイアに問いかけてみたが、
何も返ってこなかった。ディメイアも話したくないことなのだろうか?
それとも今まで通りだんまりを決めているだけなのだろうか?
「さて、どうする?
私の事も倒すのか?」
リヒヤールは更に地底湖から這い出してきた。
くねくねと曲がってもなお、
天井をこすりそうな胴体は、その大きさを物語っていた。
あまりの大きさに私は戦意を喪失しかけていた。
今回ばかりは流石に無理かもしれない・・・。
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