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デレるくらいなら死ぬ
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さっそく二人は行動を開始した。
まず、システム管理課へと向かう。
洲崎のデータに何かしらの痕跡がないか確かめるためだ。
斉藤曰く、管理課にツテがあるけれど佐野から頼んだ方が話が早い、ということで一緒についていくことにした。
システム管理課は真澄の部署よりさらに上の階にあり、この課だけ独立した作りになっているため頻繁に訪れるような場所ではなかった。
少し緊張しながら斉藤の後に続く。
「突然すみません!松田さん、ちょっとお願いがあるんですけど…」
斉藤が話しかけたのは、松田という女性社員だった。
たしか三木と同期だったはずだ。
「あら!久しぶりだね、斉藤君。今度はどんなお願いかし…ひぃっっっ!」
なごやかに話していた松田だったが、真澄がいることがわかると、化け物が出たかのような悲鳴をあげられた。
朗らかそうな印象だったが、その変貌ぶりに真澄も困惑するしかない。
「松田さん、落ち着いて。知ってると思うけど、こちら同期の佐野です」
「も、もちろん知ってますとも!ごめんなさい、いつもPCばっかり見てるから、突然三次元の眩しいものが現れてびっくりしちゃった」
少し挙動がおかしなところがあるが、照れながら汗を拭く姿を見ると、本来はやはり朗らかなタイプらしい。
斉藤によると、松田には仕事で何度も世話になっているらしく、また斉藤の彼女とも仲が良く、日頃から親しくしていることを手短に説明してくれた。
「ところで、私は何をすれば良いのかな?」
取り急ぎ、真澄は洲崎の身に起こっていることを説明する。
「…というわけなんです。どうか協力してもらえないでしょうか?」
「もちろん!そんなの協力するに決まってるよ。本来なら然るべき手続きが必要ではあるけど、それはこっちで何とかしてあげる。それに、その程度ならすぐ調べられるし」
そう言って、松田は画面に向き合った。
真澄が見慣れないその画面を、目で追うのが難しい速さで操作している。
数分もしないうちに、松田は何か掴んだようだ。
「…確かに、洲崎君のファイルを中村係長がいじった履歴がいくつかある。他も調べてみるね」
松田はさらに別の画面を開く。
今度は、真澄も見慣れている社内のメールシステムだった。
どうやら中村のメールフォルダにアクセスしているらしい。
「あ、これです、これ!洲崎が出してなかった報告書のメール」
見覚えのある件名に気づいた斉藤が、画面を指差す。
「…ていうか、これ、そもそも洲崎に送られてなくないですか?」
「そうみたい」
営業担当全員に送られるべきメールは、宛先から洲崎だけが外されていた。
「感じ悪いわね、この人。他にも見て。洲崎君にだけ締切ギリギリに送ってるメールがある」
中村のフォルダには、個別に洲崎へ送信しているメールがいくつかあった。
真澄達が把握している以上に、中村から嫌がらせを受けていた可能性がある。
「許せない…」
思わず本音が口からでてしまった。
二人とも同じ心境のようで、何も言わず頷いている。
「…よし!こうなったら徹底的に調べちゃうんだから。ちょっと待っててね」
松田はどこかへ電話をかけた。
そしてまた、パソコンを操作し始める。
「会議の資料が無くなったの、いつ頃かわかる?」
「たしか会議が火曜だったから…月曜まではあったって言ってました」
「じゃあ、怪しいのは月曜の夜あたりかな。実は今、防犯カメラのデータ送ってもらったの」
真澄達の会社では、数年前にフロア内部にも防犯カメラが備え付けられた。
当時、近隣のビルで窃盗が相次いでいたためだ。
設置の際には複数の社員から反対の声も上がったようだが、こういうことがあると設置は正解だったと実感する。
「これが、営業課のカメラの映像ね…あ、やっぱり最後に残ってるの、あの人みたい」
午後九時過ぎの映像には、一人でフロアに残る中村の姿があった。
自分の席に座っていた中村は、人がいないことを確認するように周りを見渡すと、席を立った。
そして、向かったのは営業一課の方向――。
「洲崎の席だ」
斉藤がつぶやく。
中村は洲崎のデスクを物色している。
そして書類の束を見つけると、一度は書類をシュレッダーにかけようとしたが、やめて自分の席へ戻ってきた。
「やだぁ…この人、シュレッダーのかけ方わからないみたいね」
「こいつ、ほんっとにポンコツだな」
真澄達の会社では、基本的に書類はシュレッダーにかけて捨てるようになっている。
ボタンを押すだけのシンプルな機械だが、自分で捨てるもの者もいれば、事務担当に頼む者もいる。
中村は後者だったのだろう。
「でも、ラッキーね。書類、自分の引き出しにしまったみたい。今もまだあるかも」
「俺、探してきます」
真澄は立ち上がった。
すぐにでも証拠を手に入れたかった。
「でも、さすがに危険じゃないか?引き出し漁ってるの見つかったらやばいぞ」
確かにそうだ。見つかったらただでは済まされないだろう。
でも、このまま躊躇していたら、証拠を隠滅される可能性もある。
「いや、俺はやる。斉藤、色々とありがとう。松田さんも協力してくれてありがとうございました。ここからは俺の単独でやります」
まず、システム管理課へと向かう。
洲崎のデータに何かしらの痕跡がないか確かめるためだ。
斉藤曰く、管理課にツテがあるけれど佐野から頼んだ方が話が早い、ということで一緒についていくことにした。
システム管理課は真澄の部署よりさらに上の階にあり、この課だけ独立した作りになっているため頻繁に訪れるような場所ではなかった。
少し緊張しながら斉藤の後に続く。
「突然すみません!松田さん、ちょっとお願いがあるんですけど…」
斉藤が話しかけたのは、松田という女性社員だった。
たしか三木と同期だったはずだ。
「あら!久しぶりだね、斉藤君。今度はどんなお願いかし…ひぃっっっ!」
なごやかに話していた松田だったが、真澄がいることがわかると、化け物が出たかのような悲鳴をあげられた。
朗らかそうな印象だったが、その変貌ぶりに真澄も困惑するしかない。
「松田さん、落ち着いて。知ってると思うけど、こちら同期の佐野です」
「も、もちろん知ってますとも!ごめんなさい、いつもPCばっかり見てるから、突然三次元の眩しいものが現れてびっくりしちゃった」
少し挙動がおかしなところがあるが、照れながら汗を拭く姿を見ると、本来はやはり朗らかなタイプらしい。
斉藤によると、松田には仕事で何度も世話になっているらしく、また斉藤の彼女とも仲が良く、日頃から親しくしていることを手短に説明してくれた。
「ところで、私は何をすれば良いのかな?」
取り急ぎ、真澄は洲崎の身に起こっていることを説明する。
「…というわけなんです。どうか協力してもらえないでしょうか?」
「もちろん!そんなの協力するに決まってるよ。本来なら然るべき手続きが必要ではあるけど、それはこっちで何とかしてあげる。それに、その程度ならすぐ調べられるし」
そう言って、松田は画面に向き合った。
真澄が見慣れないその画面を、目で追うのが難しい速さで操作している。
数分もしないうちに、松田は何か掴んだようだ。
「…確かに、洲崎君のファイルを中村係長がいじった履歴がいくつかある。他も調べてみるね」
松田はさらに別の画面を開く。
今度は、真澄も見慣れている社内のメールシステムだった。
どうやら中村のメールフォルダにアクセスしているらしい。
「あ、これです、これ!洲崎が出してなかった報告書のメール」
見覚えのある件名に気づいた斉藤が、画面を指差す。
「…ていうか、これ、そもそも洲崎に送られてなくないですか?」
「そうみたい」
営業担当全員に送られるべきメールは、宛先から洲崎だけが外されていた。
「感じ悪いわね、この人。他にも見て。洲崎君にだけ締切ギリギリに送ってるメールがある」
中村のフォルダには、個別に洲崎へ送信しているメールがいくつかあった。
真澄達が把握している以上に、中村から嫌がらせを受けていた可能性がある。
「許せない…」
思わず本音が口からでてしまった。
二人とも同じ心境のようで、何も言わず頷いている。
「…よし!こうなったら徹底的に調べちゃうんだから。ちょっと待っててね」
松田はどこかへ電話をかけた。
そしてまた、パソコンを操作し始める。
「会議の資料が無くなったの、いつ頃かわかる?」
「たしか会議が火曜だったから…月曜まではあったって言ってました」
「じゃあ、怪しいのは月曜の夜あたりかな。実は今、防犯カメラのデータ送ってもらったの」
真澄達の会社では、数年前にフロア内部にも防犯カメラが備え付けられた。
当時、近隣のビルで窃盗が相次いでいたためだ。
設置の際には複数の社員から反対の声も上がったようだが、こういうことがあると設置は正解だったと実感する。
「これが、営業課のカメラの映像ね…あ、やっぱり最後に残ってるの、あの人みたい」
午後九時過ぎの映像には、一人でフロアに残る中村の姿があった。
自分の席に座っていた中村は、人がいないことを確認するように周りを見渡すと、席を立った。
そして、向かったのは営業一課の方向――。
「洲崎の席だ」
斉藤がつぶやく。
中村は洲崎のデスクを物色している。
そして書類の束を見つけると、一度は書類をシュレッダーにかけようとしたが、やめて自分の席へ戻ってきた。
「やだぁ…この人、シュレッダーのかけ方わからないみたいね」
「こいつ、ほんっとにポンコツだな」
真澄達の会社では、基本的に書類はシュレッダーにかけて捨てるようになっている。
ボタンを押すだけのシンプルな機械だが、自分で捨てるもの者もいれば、事務担当に頼む者もいる。
中村は後者だったのだろう。
「でも、ラッキーね。書類、自分の引き出しにしまったみたい。今もまだあるかも」
「俺、探してきます」
真澄は立ち上がった。
すぐにでも証拠を手に入れたかった。
「でも、さすがに危険じゃないか?引き出し漁ってるの見つかったらやばいぞ」
確かにそうだ。見つかったらただでは済まされないだろう。
でも、このまま躊躇していたら、証拠を隠滅される可能性もある。
「いや、俺はやる。斉藤、色々とありがとう。松田さんも協力してくれてありがとうございました。ここからは俺の単独でやります」
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