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第一章 未来異星世界
038 足りないもの
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約二時間が経過し、遺跡探索のいくつかのシチュエーションを体験した後。
「今の状態のままでは探索者としてはやっていけないな」
難しい表情を浮かべながらシミュレーター室を出たマグの内心をそのまま言葉にしたかのように、ケイルが腕を組みながら淡々と告げた。
自覚を伴い、身に沁みる。最も効果的なタイミングだ。
「お前達自身も理解できているだろう」
「ええ……」「はい……」
念を押すような彼の問いに、マグとアテラは力なく肯定せざるを得ない。
再現された遺跡は最初の小綺麗な通路同様、真新しい状態が維持されていた。
新設されたばかりの研究施設や工場、軍事施設のような感じだった。
管理システムが起動していれば、自動修復機能によって実物もそのままらしい。
そんな中を四方八方から襲いかかってくる敵と、突然起動する罠。
マグとアテラはそれらに翻弄され続け、全く状況を打破できなかった。
「今回再現したのは比較的高度なセキュリティが施された遺跡ではあるが……」
当然のことながら。
マグ達が目標とする場所は、より強固な防犯機能が施されていて然るべき。
それより難易度が低い状態で、対応できる気配が僅かたりともないのはまずい。
「アテラは少しマシだが、根本的に二人共装備が不足している。まずそこからだ」
超越現象が戦闘用でない以上、現状アテラの【アクセラレーター】頼り。
だが、これは最大十秒までしか使えない上、再起動させるには使用したのと同じ分だけ時間を要することが今回分かった。
その状態で敵に狙われるとマグを庇ってアテラが戦闘不能に。
続いてマグも、なす術もなくやられてしまう。どうしようもなかった。
「基本的に、遺跡探索というものは二人以上で行うものだ。俺自身も普段は信頼できる仲間と共に迷宮遺跡に潜っている。しかし……」
ケイルは、マグ達に心の準備をさせるように僅かに間を挟んでから続ける。
「それも全員が十分な戦闘能力を有していることが大前提。修復能力や数秒の一芸のみでは一人前とカウントできない」
今の状態では、そう言われるのも仕方がない。
反感も湧きようがない。
「二人共、先史兵装で武装するのは当然として。安定を求めるなら最低もう一人。共に遺跡に挑戦する仲間を探した方がいい。あるいは探索を諦めるか」
ケイルの忠告は道理だ。
その辺りのことを教え込むためのシミュレーターだったに違いない。
しかし、マグに諦めるつもりはなかった。
メタの依頼はともかく、アテラと同じ機械の体を得られる出土品を探すという目的だけなら委託という手もない訳ではない。
だが、それには莫大な依頼料が必要になるだろう。
クリルのところでの仕事は割がいいとは言え、探索の対価を出せる程ではない。
結局、マグ自身がある程度リターンの多い仕事をしなければならない。
とは言え、ローリスクは後ろ盾も何もない身分ではあり得ない訳で……。
現状では探索者が最有力候補であることに変わりはない。
勿論、最初から決めつけて他の選択肢を捨ててしまう必要はないが。
「諦めないと言うのであれば、己を知り、準備を万全に整えて挑むことだ」
そうした考えを表情から読んだのか、ケイルはアドバイスを加えて話を締める。
「…………はい」
マグは自分に言い聞かせるように目を閉じて反芻し、それから彼に頷いた。
進むにせよ、退くにせよ、もっと情報を収集しなければならない。
「ありがとうございました。ケイルさん、トリアさん」
「ありがとうございました」
だからマグとアテラは揃って頭を下げてASHギルドを出ると、まずはクリルに言われた通り彼女の店に向かうことにした。
「今の状態のままでは探索者としてはやっていけないな」
難しい表情を浮かべながらシミュレーター室を出たマグの内心をそのまま言葉にしたかのように、ケイルが腕を組みながら淡々と告げた。
自覚を伴い、身に沁みる。最も効果的なタイミングだ。
「お前達自身も理解できているだろう」
「ええ……」「はい……」
念を押すような彼の問いに、マグとアテラは力なく肯定せざるを得ない。
再現された遺跡は最初の小綺麗な通路同様、真新しい状態が維持されていた。
新設されたばかりの研究施設や工場、軍事施設のような感じだった。
管理システムが起動していれば、自動修復機能によって実物もそのままらしい。
そんな中を四方八方から襲いかかってくる敵と、突然起動する罠。
マグとアテラはそれらに翻弄され続け、全く状況を打破できなかった。
「今回再現したのは比較的高度なセキュリティが施された遺跡ではあるが……」
当然のことながら。
マグ達が目標とする場所は、より強固な防犯機能が施されていて然るべき。
それより難易度が低い状態で、対応できる気配が僅かたりともないのはまずい。
「アテラは少しマシだが、根本的に二人共装備が不足している。まずそこからだ」
超越現象が戦闘用でない以上、現状アテラの【アクセラレーター】頼り。
だが、これは最大十秒までしか使えない上、再起動させるには使用したのと同じ分だけ時間を要することが今回分かった。
その状態で敵に狙われるとマグを庇ってアテラが戦闘不能に。
続いてマグも、なす術もなくやられてしまう。どうしようもなかった。
「基本的に、遺跡探索というものは二人以上で行うものだ。俺自身も普段は信頼できる仲間と共に迷宮遺跡に潜っている。しかし……」
ケイルは、マグ達に心の準備をさせるように僅かに間を挟んでから続ける。
「それも全員が十分な戦闘能力を有していることが大前提。修復能力や数秒の一芸のみでは一人前とカウントできない」
今の状態では、そう言われるのも仕方がない。
反感も湧きようがない。
「二人共、先史兵装で武装するのは当然として。安定を求めるなら最低もう一人。共に遺跡に挑戦する仲間を探した方がいい。あるいは探索を諦めるか」
ケイルの忠告は道理だ。
その辺りのことを教え込むためのシミュレーターだったに違いない。
しかし、マグに諦めるつもりはなかった。
メタの依頼はともかく、アテラと同じ機械の体を得られる出土品を探すという目的だけなら委託という手もない訳ではない。
だが、それには莫大な依頼料が必要になるだろう。
クリルのところでの仕事は割がいいとは言え、探索の対価を出せる程ではない。
結局、マグ自身がある程度リターンの多い仕事をしなければならない。
とは言え、ローリスクは後ろ盾も何もない身分ではあり得ない訳で……。
現状では探索者が最有力候補であることに変わりはない。
勿論、最初から決めつけて他の選択肢を捨ててしまう必要はないが。
「諦めないと言うのであれば、己を知り、準備を万全に整えて挑むことだ」
そうした考えを表情から読んだのか、ケイルはアドバイスを加えて話を締める。
「…………はい」
マグは自分に言い聞かせるように目を閉じて反芻し、それから彼に頷いた。
進むにせよ、退くにせよ、もっと情報を収集しなければならない。
「ありがとうございました。ケイルさん、トリアさん」
「ありがとうございました」
だからマグとアテラは揃って頭を下げてASHギルドを出ると、まずはクリルに言われた通り彼女の店に向かうことにした。
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