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第11章 テイマーの街

第180話 カウンター殺し

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「お待たせしました。続いて決勝トーナメント一回戦第2試合、アイシャVSジョージ!!」

アイシャさんの対戦相手は、俺が予選に出場した時に同時に決勝に進出した選手だ。

「あの対戦相手って知ってますか?直接対戦していないんでよく知らないんですよね」

俺はゼノンさんとダルトンさんに対戦相手について尋ねてみた。

「ジョージは別の大会でもそこそこ優秀な成績を出していたな。去年はいなかったけどな」

「そうやったけ。俺はあんまし覚えてへんな」

「そりゃあジョージは剣士だし、大会も剣士専用のだったからな。だが決勝に上がるというのは簡単じゃないからな」

ダルトンさんが言っていた通りジョージ選手は剣を携えている。大きさは片手でも持てるぐらいで、軽装備なことから動き回るタイプと推測する。

「アイシャさんって剣士が相手だとどうなんですかね?予選は入り乱れていたんでそこまで問題なさそうでしたが」

「うーん、そこは俺たちでは何とも言えないな。アイシャはカウンター重視だからそもそも武器相性が出にくいからな」

「相手が同じカウンタータイプやと少しきついくらいやな。か、あいつよりもよほど速いやつじゃなければ問題はないやろな」

確かに、アイシャさんは予選では動き回る相手の背後をとったり、潰しあっているところを漁夫の利狙いのパターンが多かった。だからこそ、攻撃や動きを見切れるのかどうかが、アイシャさんの重要なところといった所なのか。

「試合開始!!」

話しているうちに準備が完了したようで、試合開始の合図がされた。今までの試合では、合図と同時に戦闘が始まったが、それまで打って変わって両者は警戒するまままだ攻め入る様子を見せない。

「さすがにアイシャのカウンター戦法を警戒しているようだな」

「前の試合見とったら、攻め入りにくいやろうな。下手に突っ込んでカウンターされるリスクのほうが大きいからな」

ジョージ選手はぐるぐるとゆっくり歩きながらアイシャさんの様子をうかがっている。一方のアイシャさんは特に動くことはないが、視線だけはジョージ選手に向けている。

「さっさと戦えよ!!」
「俺たちは面白い試合が見てえんだよ」
「歩いているだけで何もしねえじゃねえかよ」

俺たちとは逆サイド側に位置している観客席からそのような大きな野次が飛び始めた。今まで出ることがなかったからか、思わず驚いてしまった。

「おうおう、みんな元気やな~。本人の気も知らんで」

「まあ戦う姿を見に来ている人がほとんどだからな。出るのも無理はないな。こんな野次に簡単に狼狽えるような奴らじゃないだろうから問題はないだろうが」

両者とも集中しているのか、野次を聞いても特に影響が出ている気配はない。だが沈黙もここまでなようで、アイシャさんがジョージ選手のほうに体を向ける。

そして、今まで相手を見てから動いていたアイシャさんが、自ら動きだした。鋭い蹴りをジョージ選手に放ったが、さすがに警戒されている相手には厳しく、躱されてしまった。

「まさかのアイシャさんからの仕掛けで始まりましたね。やっぱあれだけ警戒されていると綺麗には決まらなさそうですが」

「確かに今の動きだけを見ればそう見えるな。でもアイシャの表情を見ればあの蹴りはまだ様子見ってところだろうな」

「初対決なんやろうな、ある程度で肌で感じないとわからない部分もあるやろうし。まあアイシャが先手を打った時点で勝負は8割方決まっているようなもんや」

「え?一体それは...」

「話はあとや、とりあえず試合のほうに注目しよか」

アイシャさんが最初の蹴りをかましてから、常に先手を打ち続けそれをジョージ選手がうまくいなしつつも時折反撃も見せてくる。アイシャさん持ち前のスピード反撃も躱すが、先手を打っているため満足いくようなカウンターを決めるには至っていないように見える。

「(やっぱ決定打が出てこないな。カウンター戦法をあれだけガチガチに警戒されてしまうとかき回すのは厳しいのか)」

ジョージ選手の反射神経も素晴らしいものを持っており、目にもとまらぬ蹴りの応酬にもきっちり対応している。予選で敗退した並みの選手であればそれだけでも倒されるぐらいの攻撃だ。

「まだ大きな展開はないものの、よくもまあアイシャのあの連続攻撃に対応できるな。正直侮っていた部分はあるな。今回が初顔合わせの初なのに」

「やっぱそれだけの実力を持っているということですね。絶対に背後に回らせないように徹底しているように見えます」

アイシャさんのカウンターの多くは背後に回ってからの強力な一撃である。決まり手の中にはそれ以外も当然持ち合わせていると思うが、やはり背後に回れていないからか攻め手にかけているように見える。

「...いや、ここからアイシャの反撃やな」

途中から静かに見ていたゼノンさんがそう言って、自信満々に言い切った。
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