上 下
175 / 195
第11章 テイマーの街

第174話 装備を見に来たのだが

しおりを挟む
試合開始直後からアクセル全開で飛ばしているゼノンさんは、目にもとまらぬ速さで次々と敵を倒していっている。かなり強固に見える重装備をつけている剣士に対してもパンチ一撃で装備ごと破壊していくその様は、まさしく破壊王と評したくなってしまうほどだ。

「確かに、試合前に言っていたことがよくわかりました。想像以上に暴れまわっていますね」

「去年までもそうだったんだが、あいつは大人数でのバトルロワイアル形式になるとああやって加減せず戦うことが多い。タイマン勝負の時はそうでもないんだがな」

初めてゼノンさんの試合を見た時にも、ここまで暴れるような戦法は取っていなかった。冷静に敵の動きを把握し最適な攻撃をしていた。

その後も出場選手のほとんどはゼノンさんに敗れてしまった。ゼノンさんの戦い方を知っている者がいたようで残った選手3人はゼノンさんから距離をとっていたようだ。

「試合時間は3分13秒、アイシャさんが言っていた通り本当に3分で終わりましたね。圧倒的な強さですね」

「...それでもまだまだ余力は残しているはず。彼の強さはこんなものではない」

「それじゃあ俺は失礼する。もし敵として対峙するときは遠慮なしでな」

そういってダルトンさんはその場を後にした。最後の表情は今までのものとはまるで違い、かなり冷酷なものだった。ゼノンさんと何度も戦ったって言ってたか。

「明後日からはお互い敵同士になるもんな。これ以上のなれ合いは不要ってことだな」

俺は飛び入り選手、アウェーなのに対して他の決勝進出選手のほとんどはこの闘技場でしのぎを削ってきている猛者だ。胸を借りるつもりで立ち向かうしかない。

「宿のほうに戻りましょうか?」

「そうだな、その前に少し武器屋に寄らせてくれ」

俺は手にはめるグローブを見てみたかった。金属製の武器はスライムたちの手で作ることが可能だが、グローブはいくつか試してもらったもののそこまで良質なものを作ることはできなかった。

理由の1つに素材の確保だとリーンは推測していた。金属は希少な物も洞窟の探索で確保することは、今の俺たちであればそこまで苦労しない。しかし、グローブに使う専用の素材に関しての知識は深くない。どの素材が適しているかもあまり把握できていない。

そのため、グローブに関しては店で販売されているものを使用している。いつかいい素材が手に入った時にはリーンに良質なものを作ってもらいたいな。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ミラーゼルには闘技場がいくつもあるからか、武器の店は今までみた中でもかなり大きい。2階建てになっており、1階は武器、2階は防具が並んでいる構成だった。

今は【グレートモスリーグ】開催中ということもあってか夕方を過ぎているにも関わらず、かなりの人数の客がいるようで盛り上がっている。

「こんなに多くの品物が割引されているのは相当珍しいですよね。これもやはり大会の影響なのですかね?」

「そうだろうな。店側も人が集まりやすい時期に合わせて買いたくなるように戦略を組んでいるんだろうな」

粗利額とかは見当もつかないが、店の存在を知ってもらうことによってリピーターを手に入れようとしているんだろうな。中にはセール期間しか興味ない者もいるがそこは店主の腕の見せ所だな。

「私とルーは店の外で待っていますね。かなり人が多いのでルーも疲れると思います」

「そうだな、それじゃあ少し待っててくれ。すぐに終わらせる」

ルーは実力はあるがまだまだ子供だ。この人ごみの中待つのはつらいはずだ。色々と気になるものは多いがルーたちのためにもお目当てのものだけ探して出るようにしよう。

グローブがいくつか並んであるコーナーを見つけたので急いで向かったが、

「お、決勝に残った兄ちゃんじゃないか」

俺は1人のおっさんに指をさされてしまった。すると、一気に注目を浴びてしまった。そこからいろんな人たちに声をかけられてしまった。どこから来たとか、肩に乗っているスライムについてなど一方的に話しかけられた。

「(本当シルたちが外に出てくれて助かったな。多分ルーが大暴れしているだろうな)」

アクアたちは知能が高いため、むやみに暴れることはないがそれでも機嫌が悪そうに見える。人に埋もれていると突然人がはけ始めた。

「お、シンジやん。なんやこの人だかりは」

ゼノンさんも同じ時間帯に居合わせたようで、目の前に現れた。周りに集まっていた人たちはゼノンさんのほうに視線が向いた。そのおかげですぐに商品を選びことができた。

「シンジといつ当たるかわからんが、敵となったら容赦せんからな。覚悟しとくんやで」

「もちろんです」

ゼノンさんは右手を差し出してきた。俺はその手を握り戦いの意を表した。周りの人たちはさらに声を上げて盛り上がった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)

音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。 魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。 だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。 見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。 「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。

追放されたテイマー半年後に従魔が最強になったのでまた冒険する

Miiya
ファンタジー
「テイマーって面白そうだったから入れてたけど使えんから出ていって。」と言われ1ヶ月間いたパーティーを追放されてしまったトーマ=タグス。仕方なく田舎にある実家に戻りそこで農作業と副業をしてなんとか稼いでいた。そんな暮らしも半年が経った後、たまたま飼っていたスライムと小鳥が最強になりもう一度冒険をすることにした。そしてテイマーとして覚醒した彼と追放したパーティーが出会い彼の本当の実力を知ることになる。

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます

ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう どんどん更新していきます。 ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。

おばあちゃん(28)は自由ですヨ

七瀬美緒
ファンタジー
異世界召喚されちゃったあたし、梅木里子(28)。 その場には王子らしき人も居たけれど、その他大勢と共にもう一人の召喚者ばかりに話し掛け、あたしの事は無視。 どうしろっていうのよ……とか考えていたら、あたしに気付いた王子らしき人は、あたしの事を鼻で笑い。 「おまけのババアは引っ込んでろ」 そんな暴言と共に足蹴にされ、あたしは切れた。 その途端、響く悲鳴。 突然、年寄りになった王子らしき人。 そして気付く。 あれ、あたし……おばあちゃんになってない!? ちょっと待ってよ! あたし、28歳だよ!? 魔法というものがあり、魔力が最も充実している年齢で老化が一時的に止まるという、謎な法則のある世界。 召喚の魔法陣に、『最も力――魔力――が充実している年齢の姿』で召喚されるという呪が込められていた事から、おばあちゃんな姿で召喚されてしまった。 普通の人間は、年を取ると力が弱くなるのに、里子は逆。年を重ねれば重ねるほど力が強大になっていくチートだった――けど、本人は知らず。 自分を召喚した国が酷かったものだからとっとと出て行き(迷惑料をしっかり頂く) 元の姿に戻る為、元の世界に帰る為。 外見・おばあちゃんな性格のよろしくない最強主人公が自由気ままに旅をする。 ※気分で書いているので、1話1話の長短がバラバラです。 ※基本的に主人公、性格よくないです。言葉遣いも余りよろしくないです。(これ重要) ※いつか恋愛もさせたいけど、主人公が「え? 熟女萌え? というか、ババ專!?」とか考えちゃうので進まない様な気もします。 ※こちらは、小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

処理中です...