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第8章 なびく銀色の風

第85話 天使として

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 「はあ、はあ、はあ、」

私はなんでこんなにも弱いんだろう。私たち天使を生み出す神様はなぜ平等に生み出さないのか。なぜ私は神から見放されたのか。

 「はあ、もうダメかもしれない。」

人間界の調査に来て3日。私は天使の中で最下位に属する。仕事は主に人間界の見回りだ。人間の悪事や魔物の進行具合を調べるためだ。

みんなチームで探索するけど、私は一人。私は無能と言われいろんな天使に声をかけたが全て断わられた。私の力では戦力にはならない、と。

今はキエハナ地区を探索している。ここ近辺では大量にモンスターが消えている。万が一先駆パイオニアモンスターの出現があれば総員で戦いに行かなければいけない。彼らは本来の種族を明らかに凌駕している実力を兼ね備えている。最弱種の1つのゴブリンでさえDランク、コボルトやオークなどを簡単に押しのけてしまう。

 「何がいけなかったんだろ。」

私は生きている間常にそう思い続けてきた。天使としては明らかに弱い。人間界の一般人より少し強い程度。魔法もろくに使えない。

でも私は頑張った。頑張ったつもりだ。能力が無いんだったらせめて知識だけでも他の天使より優れていたかった。けど能力至上主義の天界では結局ほとんど意味がなかった。なんとか人間界の知識の量から調査隊に引っかかった。これがなかったら私はもう生きていなかったかもしれない。

それでももう終わりになるかもしれない。食料は尽きてしまい、まともに食べれてない。その上いつ襲われるかわからず夜も全然寝れてない。もしチームだったら夜の警戒も交代で寝ることができる。力を合わせれば多少格上のモンスターにも勝てる。けど私はゴブリンが限界だ。肉はまともに食べれない。飲み水もこの近くは海の影響で塩分濃度が近くの川でも高くなってる。飲めないこともないが飲みすぎてしまえば何かしらの異常が出てくる。

 「はあ、食事事情よりも魔力だな。もうだいぶからっからだ。」

一般的に魔力を得るにはちゃんとした食事、睡眠、魔力用ポーションだ。だが私にはもうどの手段も残ってない。次第に魔力が尽きてきた。運が良かったのはおそらくこの大量にモンスターが消えたおかげ
で戦闘の数が少なかったことだろう。

 「こんなこと思ってても仕方ない。今から食べれる果物でも探しに行かないと。」

私はとにかく生き延びて、いつか私を見捨てた人たちに、何より神様に見返してやるんだ。

~~~~~~~~

 「ガアーーーゴーー!」

 「!?この鳴き声!?もしかしてベアオーグリズリー!?」

まずい、キエハナ近辺ではあまりにも強いモンスターだ。ここはEランクの森だがこのモンスターはCランクの中でもかなり強い部類に入る。

 「でも私の力じゃ……いや、行くしかない!!」

私は天使、人間界の安全を守るために降り立ったんだ。実力差があってもその使命を破ることなんてできない。

私は置いていた長弓を持ち、矢筒も肩にかけて鳴き声が聞こえた方向に向かう。

~~~~~~~~

 「ガアーー!」

茂みに隠れて、鳴き声が聞こえた場所を見る。

 「間違いない、あの鳴き声に姿、ベアオーグリズリーだ。」

あの種族は生まれた時にかならず右目に切り傷を入れている。目の前にいるのも例外ではない。そして、体格も2メートルは超えている。

 「だけど、探知能力は低い。茂みに隠れながらならなんとかできるかな。」

私は矢筒から一本矢を取り弦に引っ掛ける。そしてなけなしの魔力を矢に注ぐ。こうすることによって矢の硬さやスピードが上がり威力や貫通力が上がる。

ベアオーグリズリーは眉間が特に弱点だ。他の熊よりもダメージが通りやすい。

ギリギリギリ……パシュン!

 「アーーガーーー!」

よし!綺麗に眉間に当たった。流石のベアオーグリズリーもその痛みに手で患部を覆い始める。この隙にまた矢を取り弦に引っ掛ける。

 「グル、」

 「!?」

気づかれた!?いや、そんなはずはない。魔力探知がまずできない種族だ。もしかしたら方向から逆算することもできるかもしれないが、知能も高くはない。だがその可能性も捨てきれない。見つからないようにコソコソと別の茂みに移動する。

 「グル?グー……」

やっぱり、見つかってなかった。結局ベアオーグリズリーは刺さった矢を折ってただ周りをキョロキョロと見渡すのみ。

もう一度!

 「カアーーー!」

よし!2発目も当たった、この作戦ならなんとかいけるかもしれない。矢はまだ30本残ってる。問題は私の魔力が尽きた時だ。

魔力を注いだときは通常の3倍は強化されている。
ただそれ以上に大事なのは貫通力の上昇だ。もし通常の矢で射って刺さらなかった時が一番まずい。このときは別の作戦を考えるしかない。

 「私は、絶対に諦めない!!」

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新章突入です!今回は少し新キャラの視点が入るためシンジ側の話は少し後になります。

いつもお気に入り登録やご感想ありがとうございます。最近は返事ができない時もありますがちゃんと見ています!
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