上 下
37 / 194
第4章 北の鉱山街バーム

第36話 うざすぎる皇子

しおりを挟む
 「おいどういうことだ!」

ミラノさん達はシャルケに対して反感を買ってしまった。

 「ミラノさん落ち着いてください。」

 「うむ、そうだぞ。何かあればすぐに父上にいうだけだ。」

 「く、」

ミラノさん達はなんとか怒りを鎮めている。だが俺の足元ではさらに怒っている者がいた。

 「キュ、キュー!!」

アクアだ。あんなコボルトをこれ以上ないぐらい完璧に解体したのを、横から取られたんだ。当たり前だ。

 「うん、おい!お前のとこのスライムが何やら俺に向かって何かしようとしてるのだが?」

 「……アクア、落ち着いてくれ。頼む」

 「キュ……キュー、」

ありがとうアクア。相手が相手だ。何かすれば不利になるのはこっち側だ。

 「しかし、スライムもまともに管理できないとは、困ったスライムテイマーだな。」

 「なっ!くっ……」

バァーーーーーン!!


すると、後ろの壁がいきなり壊れ始めた。

 「なんだ、壁の老朽化か?ふん、こんなのに気にする必要はないな。」

シャルケはそう言うが、ミラノさん達は反対に気にした。これをやったのはアクア達だ。おそらくシャルケへの怒りがそうさせたのだ。やっぱり解体したのにあんなこといわれたからか。(アクア達が怒こった一番の理由はシンジのことを馬鹿にしたことだ。)横からシャルケに聞こえないようにミラノさんが聞いてきた。

 「おい、今の壁のやつ、お前んとこのスライム達だよな。なんだよあれは。しかもとんでもねえ殺気まで出してたし。」

 「あ、たぶんアクア達。」

やっぱりミラノさん達は気づいてたようだ。しかし、やっぱり殺気出してたんだな。全然気づかなかったけど。

その後の探索も酷いものだった。大軍を除いてはほとんどシャルケが倒していった。だがやはり戦い方は下手くそすぎる。なんとかうちのスライム達が解体してくれるおかげで素材は残るからマシだが、毎回壁が壊れるんだよな。

しかも大軍の時は「お前ら倒すの遅いぞ!これだから冒険者どもは」とけなしてくる。討伐数は明らかに俺たちの方が多いのにだ。

探索が2時間を過ぎた頃、「お腹が空いたぞ!何か用意しろ!」と無茶振りとしか思えない要求を出してきた。

 「はぁー、作るか。おーいみんな頼むな。」

いつもなら嬉々としてやる料理も今日に限ってはつまらない。スライム達も心なしかだるーんとして見える。いつもなら一緒に料理をしているリーンも食卓準備しかしなかった。

 「シンジすげえな。こんな洞窟でシチューが飲めるなんてな。」

 「ははは、あ、一応100ダリルもらいますね。」

 「ああ、構わん。むしろもっと要求してもいいぐらいなのにな。」

 「おい!こっちにも用意しろ!」

はぁー、またお前か。

 「え、と、それじゃあ100ダリル渡してくれればシチューを出しますんで。」

 「はぁ?何を言っているんだ。なぜ料理ごときに払う必要がある。それに皇子だぞ!」

こ、コイツーーー。本気でぶん殴ってやりたい。ああ、アクア達も抑えて、皿が割れちゃう。仕方ないから無償で渡す。

 「ふん、これなら宮殿のシェフの方がよっぽどうまいな。」

 「(いちいちうるさいんだよ。シンジの腕をどう見たらそうなるんだ。こんな洞窟の中、まず料理なんかできないぞ。その上この味だ。比べる土俵が違うんだよ、まずな。)」

なんとか料理を出して、ご機嫌を取り戻す。スライム達もなんとか怒りは静まって美味しそうに食べている。

片付けを済まして、先を目指す。途中で、先ほどまでとは格が違うモンスターが現れた。ローグベアーというクマ型モンスターだ。

 「ひっ、ふん、こんな奴俺の出る幕ではないな。スライムテイマー、お前が行け!」

モンスターを見るやいなや、一歩だけ下がって見栄を張るシャルケ。バカにしている手前、負けられないんだろう。仕方ない。

 「まぁ、こいや、」

ローグベアーはパワーと腕の硬さが特徴で剣士にとってはかなり不利となる相手だ。

 「ほい、であ!」

俺はあえて壁際によって、腕を振ったところを避け、そのまま腕をキャッチして壁を蹴り回転しながらローグベアーの頭を地面に突き刺す。イメージはロープ蹴り上げ式のDDTだ。

 「ふん、やはり雑魚であったか。やはり俺の出る幕ではなかったようだな。」

 「(何を言ってるんだこいつは。ローグベアー相手にタイマンであんな簡単に倒せる奴はなかなかいないぞ。しかも無傷だ。あの動きは初めて見るが、それでもほぼ体を傷つけることなく倒している。なんていう戦闘技術だ。これがドラゴンを倒した男か。」

ローグベアーをアクア達に解体してもらう。少し大きいので、ミニスラに一旦部位ごとに切ってもらい、その部位をアクアとリーンとテイロが手分けして解体している。

「よし、この魔石はもらっていくからな。」

 「んん、、、、了解だ。」

なんとか俺とミラノさん達は踏みとどまる。あのいかにも自分のおかげみたいな口調が本当に腹立たしい。

 「お、ここだなシンジ、採掘場所は。」

 「ええ、そうですね。」

着いた場所の壁はいろんな鉱石が埋め込まれている。以前入った洞窟もそれなりにあったが、ここの壁は格が違った。魔力を感じる。これが魔鉱石というやつなのかな。

 「それじゃあ、ここは俺たちの出番だ。みんな手分けしてやるぞー!」

膝当てやエルボーパットになってくれてるミニスラ達が元に戻って、アクア達から指示を受ける。

作業は、アクアが壁を掘りまくり、簡単な物や小さい物はミニスラが、大きく加工が難しいものはテイロが担当し、出てきた鉱石をリーンがまとめることになった。

 「おいおい!本当にすごいじゃねえかシンジのスライム達は。この街の優れた技術に匹敵してるじゃねえか。」

ミラノさんはこの光景に驚く。そして褒められたのだと思ったスライム達は腕を伸ばし喜びを表しながら作業を続けた。

 「ふーん、こいつらはなかなか便利だな。20匹近くいることだし、1匹もらっても問題ないだろう。」

 「キュ?キューーー!」

シャルケが1匹のミニスラに手を出そうとした。



ドゴ!!!


 「痛え!おいふざける…」

 「ああ?」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

家族に無能と追放された冒険者、実は街に出たら【万能チート】すぎた、理由は家族がチート集団だったから

ハーーナ殿下
ファンタジー
 冒険者を夢見る少年ハリトは、幼い時から『無能』と言われながら厳しい家族に鍛えられてきた。無能な自分は、このままではダメになってしまう。一人前の冒険者なるために、思い切って家出。辺境の都市国家に向かう。  だが少年は自覚していなかった。家族は【天才魔道具士】の父、【聖女】の母、【剣聖】の姉、【大魔導士】の兄、【元勇者】の祖父、【元魔王】の祖母で、自分が彼らの万能の才能を受け継いでいたことを。  これは自分が無能だと勘違いしていた少年が、滅亡寸前の小国を冒険者として助け、今までの努力が実り、市民や冒険者仲間、騎士、大商人や貴族、王女たちに認められ、大活躍していく逆転劇である。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~

柊彼方
ファンタジー
「一族から出ていけ!」「お前は忌み子だ! 俺たちの子じゃない!」  テイマーのエリート一族に生まれた俺は一族の中で最弱だった。  この一族は十二歳になると獣と契約を交わさないといけない。  誰にも期待されていなかった俺は自分で獣を見つけて契約を交わすことに成功した。  しかし、一族のみんなに見せるとそれは『獣』ではなく『魔物』だった。  その瞬間俺は全ての関係を失い、一族、そして村から追放され、野原に捨てられてしまう。  だが、急な展開過ぎて追いつけなくなった俺は最初は夢だと思って行動することに。 「やっと来たか勇者! …………ん、子供?」 「貴方がマオウさんですね! これからお世話になります!」  これは魔物、魔族、そして魔王と一緒に暮らし、いずれ世界最強のテイマー、冒険者として名をとどろかせる俺の物語 2月28日HOTランキング9位! 3月1日HOTランキング6位! 本当にありがとうございます!

召喚されたけど要らないと言われたので旅に出ます。探さないでください。

udonlevel2
ファンタジー
修学旅行中に異世界召喚された教師、中園アツシと中園の生徒の姫島カナエと他3名の生徒達。 他の三人には国が欲しがる力があったようだが、中園と姫島のスキルは文字化けして読めなかった。 その為、城を追い出されるように金貨一人50枚を渡され外の世界に放り出されてしまう。 教え子であるカナエを守りながら異世界を生き抜かねばならないが、まずは見た目をこの世界の物に替えて二人は慎重に話し合いをし、冒険者を雇うか、奴隷を買うか悩む。 まずはこの世界を知らねばならないとして、奴隷市場に行き、明日殺処分だった虎獣人のシュウと、妹のナノを購入。 シュウとナノを購入した二人は、国を出て別の国へと移動する事となる。 ★他サイトにも連載中です(カクヨム・なろう・ピクシブ) 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

器用貧乏の意味を異世界人は知らないようで、家を追い出されちゃいました。

武雅
ファンタジー
この世界では8歳になると教会で女神からギフトを授かる。 人口約1000人程の田舎の村、そこでそこそこ裕福な家の3男として生まれたファインは8歳の誕生に教会でギフトを授かるも、授かったギフトは【器用貧乏】 前例の無いギフトに困惑する司祭や両親は貧乏と言う言葉が入っていることから、将来貧乏になったり、周りも貧乏にすると思い込み成人とみなされる15歳になったら家を、村を出て行くようファインに伝える。 そんな時、前世では本間勝彦と名乗り、上司と飲み入った帰り、駅の階段で足を滑らし転げ落ちて死亡した記憶がよみがえる。 そして15歳まであと7年、異世界で生きていくために冒険者となると決め、修行を続けやがて冒険者になる為村を出る。 様々な人と出会い、冒険し、転生した世界を器用貧乏なのに器用貧乏にならない様生きていく。 村を出て冒険者となったその先は…。 ※しばらくの間(2021年6月末頃まで)毎日投稿いたします。 よろしくお願いいたします。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

処理中です...