【一話完結】３分で読める背筋の凍る怖い話

予感

菅野はとても勘のいい男だ。
今までの人生で幾度となくその勘に助けられてきた。


この道はやめておいた方がいいんじゃないか。いつもの帰り道そんなことを思うと、
翌日ニュースでは通り魔が出没していたりする。


友人との食事でも、
「この店はやめよう。何となく嫌な予感がする」
そう言って店を変えれば、食中毒事件が発生していたり。


今までこの予感によって菅野は危険を回避してきた。
初めは恐ろしくもあったが、今はむしろ感謝している。
この力のおかげで、自分は安全なのだから。


しかし、この日は少し違った。


いつもの様に会社から帰る道中。
菅野は予感した。


「この道はやめておいた方がいいな」


そう思って、菅野は道を変えた。
よくあることだ。年に３.４回はこんな予感を覚える。


いつもと違うのはその後だった。


道を変えた先でも、予感がするのだ。


「あれ？こっちも嫌な感じがするな」


そんなことは初めてだった。
だがそれほど驚くこともなく、再度道を変えた。
帰り道なんてものは遠回りしても良ければいくらでもある。


本来のルートに比べるとだいぶ遠回りにはなるが、それでも安全だから。






「どうして？」


また、予感がする。
しかもさっきよりも色濃く、脳裏に焼きついて離れない予感。


「道を変えても、予感がし続ける」


今までは一度避ければその後は何もなかった。
通り魔も別の道には現れないし、食中毒も他の店では起きない。


ちゃんと危険から避けて来れたのに。
どうして今日は。


菅野の足が止まる。恐怖で体が動かない。
暗い夜道、目の前にいるのは雨でもないのにレインコートを着ていて、顔半分までフードを下ろしている。
口元はマスクで隠されていて、手には包丁が握られている。


「そうか、今日は、俺を追ってきていたんだ」


薄れゆく意識の中、痛みはもう感じなかった。