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第6章
第21,5話
しおりを挟むミーツが闘技場入りして一回目の決闘が始まるという頃、ミーツと愉快な仲間たちの仲間たちであるダンク一行は、転移屋と呼ばれる高いPを払ってヤマト国内の指定された場所に転移してくれる店に並んでいた。
ミーツの決闘はヤマト国内で話題になっており、ダンクたちが所属しているギルドがある地区の者たちが、リーダーの存在に興味津々でなけなしのPを払ってでも闘技場に向かう人たちで転移屋に殺到して並んでいたのだった。
ダンクたちが所属しているギルドは、ギルドに所属している筆頭パーティのリーダーが決闘することで、ギルドは臨時休業で閉めて、Z地区ギルドマスター兼受付嬢一人で闘技場に行っていることで、ダンクらはギルドの転移陣を使用できない状態であったのだ。
「これ、ミーツちゃんの決闘までに間に合うかしら。いつもは誰も寄り付かないのに、こんな時だけみんな使うのね」
「まあ、落ち着け、なんとかなるだろう。
闘技場の中に入れないでも、どうなったか着いたら分かるだろうしな。それよりシーバス、お前は落ち着け」
「お、お、俺は落ち着いてるぜ。ミーツさんが負けるようなことはないと思うが、もしミーツさんが負けたらと思うと俺はどうしたらいいんだろう。妹たちと一緒に俺も移籍するべきか、それとも俺はこのままこのパーティにいていいのか、悩む問題だ」
並んでいる時、決闘でミーツが負けたらとのことを考え、爪を噛んで落ち着かないシーバスをダンクとシオンが落ち着かせようとする。
長い列を並んだ彼らは自分たちの番になって、ようやく転移ができ、転移先はギルド本部近くの転移屋で、着いた途端に急ぎ足で闘技場に向かう一行は、闘技場周りに設置されていたモニター画面に釘付けになった。
モニター画面とは、闘技場で戦いやイベントが始まったら闘技場周辺に現れる複数のモニターのことで、闘技場に入られなかった人たちのための物である。
ダンク一行は、そのモニターを見て立ち止まった。その内容は丁度ミーツが対戦相手に腕を斬り取られた様子であった所だった。
「うわあ、ミーツさんが負けちまう」
「落ち着けシーバス!ミーツの顔をよく見ろ。
焦った顔はしてないだろ!」
「そうねえ、でも何で、わざと斬られるようなことをしたのかしら」
ミーツが負けると思ってそうシーバスが始めに焦った言葉を発し、それを落ち着かせるシオンとダンクだった。
「私は最初から見てたけど、君たちのリーダーって、大して強くないんだね。士郎くんは見た目通り強くないの分かるけど、君たちが強いから期待して彼に全額賭けたのに無様に負けたらどうしてくれるの!」
彼らにそう声を掛けたのは、彼らが所属しているギルドマスターであった。
彼女は『膨大な魔力がある=強い』という認識がある傾向があって、一瞬でギルドの転移用の魔力タンクを満タンにできる能力があるのだから、愉快な仲間たちの中でダントツで強いと思い込んで、ミーツが決闘すると聞くと否や、借金をしてまでミーツに賭け、それだけではなく、同じ地区の知り合い皆んなにもミーツに賭けたら大儲けできると言い回っていた。
それなのにミーツの戦いが、最初から逃げ惑うばかりで、偶然にも放った魔法が対戦相手に当たって退場させられたものの、対戦相手に腕を斬り飛ばされたのを見て、まだ結界の外に弾き出されたわけではないが、モニター画面を見ていた彼女と同じ地区の住人たちは悲鳴を上げていたところに、仲間であるダンクらが来たことで、負けたらどうしてくれるんだと言い掛かりを吹っかけていた。
「そんなの知らないわよ。あたしは一言も仲間内以外でミーツちゃんが勝つなんて言ってないわよね?だったら、貴女が勝手にミーツちゃんに全額賭けたんだもの。自分自身の責任なんだから知らないわよ」
「そうだな。ダンクの言う通りだ。
だが、あんたの味方をするつもりはねえが、ミーツは恐らく負けるつもりはねえと思うぜ。だからもうちっとばかし、信じてやってくれや」
「シオンさん、本当か?本当にミーツさんが負けることがないか?俺はミーツさんのあんな焦った顔見たことないぞ?暴食竜と戦った時でさえ涼しい顔で倒していたんだぞ!
それなのに…。ってああ!何やってんだよミーツさん!反撃チャンスだったじゃねえか」
ミーツに全額賭けて負けそうになっている姿を見て、ダンクらに詰め寄る彼女だったが、ダンクは知らないと彼女を突き放し、シオンはミーツのことを信じているようで、シーバスはおろおろと戸惑うばかりで、モニター画面に釘付けのまま、ミーツの戦いに口を出していた。
苦戦していた様子のミーツの戦いも、最後にはなんとか勝ったことで、詰め寄っていた彼女を始め、同じく全額賭けていた同地区の者たちは歓喜し、発狂している者も少なくない。
「ふふふ、やっぱり勝っちゃったわね。
見てよミーツちゃんのあの顔、何か悪いことを考えているような顔をしてるわ」
「そうだな。アイツなりに何か考えがあるんだろうな」
「はあ~~、負けると思って焦ったぜ。ミーツさんになんであんな手を抜いた戦いをしたのか、後で問い詰めてやる!」
ミーツが対戦相手に勝ったことにより、それぞれ思ったことを口に出し、勝ったことに冷静に喜んでいた時、ミーツが考えた対戦相手の名前と死んでも変更してはならない名前の発表をされたことにより、闘技場内はもちろんのこと、モニター画面を見ていた大勢の人々は、一瞬の沈黙のあと、闘技場内と同じか、それ以上に笑いが起こった。
「ミーツちゃんのあの笑みは、これのことだったのね」
「ハッハッハ!こりゃ傑作だ。ミーツもよくやるもんだ」
「ク~~ッ!流石ミーツさんだ!でも、これだと相手も再戦の決闘を申し込むんじゃねえか?」
「そうねえ、ありえるわね。今回はミーツちゃんのことを舐めて二軍で挑んだみたいだし、あ!もしかしたら…」
一頻り笑ったあと、ダンクはミーツが考えたことに気付いたが、豪雨が闘技場を揺らして静まり返させたあとに、先に対戦相手がミーツに再戦を挑んだことにより再戦の決闘が決まり、賭けの対象はミーツは相手のパーティ名の変更と生涯解散ができないことで、相手は今回のミーツの賭け対象の取り消しで、名前を元に戻すだけだと賭けは一つであるが、元々相手がミーツの仲間であるアマとアミを要求したことで、賭けは二つに増え、ミーツはその二つとも名前のことで使ったことで、今回もそのまま賭けについて二つのままで進められた。
「こうしちゃいられないわ。あたしたちはミーツちゃんと同じパーティだから、ベンチに入れるはずよ。
急ぎましょう。多分だけど、今回ミーツちゃんは全力で戦うはずよ。急がなきゃ直ぐに終わっちゃうわ」
「そんなに急がなきゃいけないほど、ミーツは強くなってんのか?相手もそれなりに強いんだ。そこまで一方的じゃねえだろ」
「ミーツさんの実力は確かにあんなものじゃねえ。俺もさっきまで狼狽えていたからよく見てなかったけど、ミーツさんは多分、ダンクさん、アンタより強いと俺は思っている」
「そうねえ。まだミーツちゃんが戻ってきて一度も手合わせをしてないからなんとも言えないんだけど、お互い本気で戦えば、あたしは負けるでしょうね。それより早く行くわよ」
こうしてミーツがチンカス相手に圧勝する様子を見たダンクたち一行であった。
因みに、ダンクたちが所属するギルドのギルドマスターは賭けによって大勝ちするも、闇金からも金を借りてまで賭けたことにより、勝った賭け金の大半を取られた結果となった。
他の同じ地区の住人たちは、端金でも勝ったことで大金を手にして他所の地区に引っ越したのだった。
このミーツの決闘を機会に、冒険者たちの決闘ブームが始まったのであった。
そして、ミーツが暗殺者に狙われるキッカケになったのも、この決闘後からだった。
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