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第6章

第5話

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「またドラゴンか、これで何十回目だろう」

 あれから数十個の扉に手を掛けて開けたが、その全てがドラゴンだった。
 最初の扉の古(いにしえ)のドラゴンを倒したあと、次の扉に入ったら赤竜と青竜と呼ばれる所謂、炎ドラゴンと氷ドラゴンの二匹と戦ったものの、どちらも焦熱剣と凍結剣によって一刀両断で倒した。前回のようなボーンドラゴンになるのは、あの古のドラゴンだけのようで、あの古のドラゴンを倒したあとは再度戦うことはなかった。
 炎と氷のドラゴンの次や、またその次などは、土のドラゴンに風のドラゴンといったドラゴン続きで、今目の前にいるのは、また通常のよりも巨大な赤竜一匹が横たわっている。

「はあ、もうサクッと倒して次開けよう」
【俺様はもう飽きたぜ。お前さんの持ってる普通の剣でも倒せんじゃねえか?】
【私様は焦熱みたいに軟弱者ではないですから、お前様にいつまでも付き合います】
【誰が軟弱者だ!ちょっと飽きたって言っただけだろうが!お前さんはここで待ってろ!俺様だけで倒してくらあ】

 焦熱剣は凍結剣に軟弱者扱いされたことに怒り、焦熱剣だけで扉の中に入ろうとしたら、焦熱剣は見えない壁に弾かれた。

【ふふふ、貴方だけで倒すのではなかったのですか】

 また凍結剣が焦熱剣を挑発するから、そろそろ注意すべきか考えていたら、弾かれた焦熱剣を残して俺と凍結剣だけが赤竜が寝そべっているフロアに吸い込まれた。しかし、これまで赤竜も大概倒してきているから焦熱剣の言う通り、今回は凍結剣に頼らずに大剣を取り出して戦おうと赤竜の首を狙って斬りかかると、弾かれると思っていたのに案外すんなりと首を刈り取ることが出来て、赤竜をI.Bに収納後に元に戻ったらゼロが拍手をしながら迎えてくれた。

「マスターおめでとうございます。もうマスターは魔剣に頼らずとも、普通のドラゴンならその辺のナイフ一本でも倒せるでしょう」
「え?ゼロはなんであんな簡単に倒せたか知っているのかい?」
「おや、マスターはご自身の称号に竜殺しの称号があるのご存知ないのですか?」

 彼にそう言われて自身のステータスでの称号を確認して見たら、彼の言う通り竜殺しの称号が増えていた。彼が言うには、称号は特定の魔物を倒したから現れるものもあって、〇〇殺しとある称号はその〇〇に当てはまる魔物は簡単に倒すことができるというものだった。

「はあ、こんな称号要らない。でも、これでドラゴン戦は焦熱剣と凍結剣に頼らなくてもよくなったから良しとするかな。
 それはそうと、一緒に扉の中に入らなかったのによく俺がドラゴンを簡単に倒せたかが分かったね。なにか覗き見スキルとかあるのかい?」
「はい。もちろん習得しております。ただ氷骨ドラゴン以降、戦闘時から戦闘終了までのマスターの観察状況を知るために、私の目以外に監視の虫を放っていますした」

 いつの間にと思って自身の身体や、周りを見渡しても元から付いてきていたであろう虫はおろか、新たに付けたという監視の虫は見当たらなく、何処にいるのかを聞いたら、何もない所を突然掴んで、手の平を俺に向けて見せてくれたものの、小さ過ぎてどこにいるのかが分からない。

「マスター用に地下で取り込んだ監視虫を参考に私用に作りました」
「へ?そんな物いつの間に」
「マスターが苦労の末に倒した氷骨ドラゴンを倒した直後に作りました。
 解析自体は監視虫を回収した時に理解しましたので、それを私が所有してます鉱石と別のアイテムを使用して作りました」
「へー、お前って凄いんだね」
「いえ、マスターの為でございます。
 この私が作った監視虫でマスターの戦い方を解析し、より良い戦い方法を考えるためでございます」

 淡々と話す彼の言葉に驚くも、無表情のまま次はどの扉を開けますか?と言う彼にスルーかよっと軽いツッコミを入れてから、適当に目に付いた扉を手にかけたとき、彼は開けようとした俺の手を押さえて開けるのを止めた。

「マスター、この扉は最後にするか、開けるのを止めた方がいいです。 最初に戦ったドラゴンなどこの扉の中にいる魔物に比べると普通のゴブリンと暴食竜ほどの違いの差があります。
 それほど厄介な敵だと判断してください。どのような魔物かは、現状ではマスターがご興味を持たれると困りますのでお教え出来ませんが、今のマスターでは勝つことはできないでしょう。せめて、もっとレベルを上げるか、実力を身に付けてからでないと、いくらマスターでも死ぬことになります」
「あのドラゴン以上に、そんな強敵がいるのか」

 どんな魔物がいるのか興味はあるものの、開けてすぐに閉めれば良いだけなのだが、少しでも閉めるのが遅ければ強制的に中に吸い込まれるため、ここは我慢して、宙に浮いている扉の一つを開けたら、超巨大なプテラノドンが飛び回っていた。

「やっとドラゴンじゃなくなったけど、今度は恐竜づくしかも」

 そう呟いたあと、いつものように開けた扉の中に吸い込まれて戦うことになり、ドラゴン戦に比べたらプテラノドンや暴食竜などの恐竜などは、ただのトカゲにしか見えず、飛び回っているプテラノドンの背中に想像魔法での転移で乗ったら、普通ヤツと比べて、十倍ほどの大きさなため、足場は少々滑ること以外は安定しているから、大剣を片手に首元まで走って首を斬って絶命させた。

 巨大プテラノドンはI.Bに収納後、地上に転移して降り立つ。そして、また魔法陣の間に戻り次の扉を開けて中の敵を倒すといった作業を繰り返しを行う。
 こういった作業も、最初に戦ったドラゴンほどの強敵以外でだと、ほとんどの敵が雑魚だった。

 古のドラゴン戦以降で聞いた話によると、この数多くある扉の中にはジャイアントゴブリンやゴブリン王と呼ばれる最弱といわれるダンジョンボスがいるとのことで、これに当たるまで戦い続けようと決めるも、もうそろそろ飽きてきたこともあって、適当なところで倒したあと、もう魔法陣に乗ってしまおうかと思いつつも、次こそはと期待しながら次の扉に手を掛けてしまう。 
 気が付けば数百以上はあった扉の数が、数えられる程度の扉を残した状態までになっていた。

「あれだけあった扉がたったこれだけになったのに、まだゴブリン王が出ないって、本当にいるのか怪しくなってきたな。ジャイアントゴブリンさえも出てこないんだから」
「マスターが信じるも信じないも勝手ですが、間違いなく存在しています。
 そして、あの扉だけは開けないようにして下さい。ここでマスターがいなくなれば、私が二本の魔剣を持ってヤマトに上がらないといけなくなりますから。それに私が起きた意味も存在理由も失うことになりますので、どうかご無事なうちにヤマトに行かれることを願います」
「そんな存在理由を失うとか言うなよ。
 分かった。残りの扉も……数えたら十個しかないし、開けたらいけない扉を除いて残り九個の扉だけど、あと三個の扉を開けたら、どんな魔物だったとしても魔法陣に乗ることを約束するよ」

 そう彼に言って、残りは全部で十個の扉があって、開けてはいけない扉を除くと残り九個のうち三個の扉についてどれにしようか悩む。
 宙に浮く扉は三個で正面に三個のうち一個はダメなやつで、両側面に残りの四個、そうなれば今まで開けた扉の経験からいって、宙に浮いている扉は翼の生えた魔物ばかりで、超巨大プテラノドンを始め、数十匹にも群れをなすワイバーンやグリフォンなどが多く見られた。
 ワイバーンはプテラノドンと見比べても大した差はなく、個体差で火を吹いたりするくらいの雑魚だった。

 正面の扉は強めであるドラゴンや、暴食竜などの凶暴な魔物が多く、残りの側面の扉は今のところ関連性が見られない。
 ジャイアントオーガやトリケラトプスこと三本角の進化したであろう、全身に角の生やした恐竜が居たり、様々な肉食恐竜の群れがいたりと開けて見ないと分からない感じだが、ゴブリン王がいるとしたら側面の扉だろうと考えるも、ここにきて最強とされる正面の扉を開けたいという気持ちが拭いきれなく、開けてはいけない扉を挟むようにある扉の一つを開けたら、巨大な闘牛が横たわっていた。

「マスター!これが開けてはいけない扉です!
お早くお閉め下さい!」
「デカッ!今までドラゴンとか恐竜の大きいやつ多かったけど、ここまで大きいと強そうだな」

 俺が思っていた扉が開けてはいけない扉ではなく、その隣が開けてはいけない扉だったのだった。
 彼の早く閉めろという言葉よりも、大きく横たわる牛に驚き感想を言ったところで、手の感触の扉が消えて、中に強制に吸い込まれた。

「マスター、これはベヒーモスという魔物でございます。ドラゴンの種類にもよりますが、ドラゴンよりも強いです。またベヒーモスもあの個体だけではなく、ドラゴン同様に種類がおりますが、今のマスターでは勝率一割か一割未満といったところでしょう。
 あれほど開けてはいけないと仰いましたのに、開けてしまいますとは。
 もう開けて中に入ってしまったからには、戦うしかありませんのでマスターは頑張って倒して下さい。
 私も出来る限り支援を致しますので」
「ベヒーモスって、よくゲームとかに出てくる滅茶強い魔物だよな。やっぱり側面の扉にしておけば良かったかも」

 そう呟いても今更なことで、フロアに引っ張られ、中に入ったときにバランスを崩しながらもフロアに足を踏み入れると、横たわっているベヒーモスはゆっくりと目と口を大きく開けて、息を吸い込み続けた。

「マスター、逃げて下さい!私のスキルでの結界シールドでもあれは、全く防ぐことは出来ません!」

 俺の後方にいるゼロはそう言って、地面に寝そべって地面と同化した。
 古のドラゴンのブレスのようなものを発射するのだというのは分かるが、古のドラゴンのブレスでも防ぐことのできる彼のシールドでも防ぐことができないとは、どれだけの破壊力なのだろうかと思いつつも、向けられている口の方向から避けて逸れても、俺を追い掛けるように向きを変えて行く。

 これは完全にロックオンされていると思い、焦熱剣と凍結剣を手に取ろうとしても、扉の前に置いてきていたのを思い出して、こんな強敵を前にやっちまった感が出て今更だが、せめてI.Bに入れておけばよかったと後悔した。

「あ、俺、終わったかも…」

 そう呟いたあと、ベヒーモス自体が光輝いて口から巨大なレーザー砲が発射された。
 俺の目の前に突然、壁が出現してレーザー砲を防いでくれたものの、壁の中央に位置する箇所が真っ赤な色に変化して、ドロドロと溶け出しているところで、これでは防ぎきれないと判断し、うつ伏せになったら俺の頭上でレーザー砲が壁を貫通して通り過ぎた。

「マスター、ご無事ですか?オリハルコンの壁の塊を出したのですが、一時的な時間稼ぎにしかなりませんでした」
「うん無事だよ。ありがとう。俺の手元にはお前がくれた大剣しかないけど、なんとか戦ってみるよ。負けて死んだらごめん」
「私とマスターは一心同体です。ですのでマスターが死ぬ時は私もご一緒します」

 またも淡々と言う彼の言葉に今はそれどころじゃない状況に、ハイハイと適当に返して、レーザー砲を吐き終わったベヒーモスに向き直ると、クールタイム無しで再度口を開けて発光して口の中が光り出す。

「今度はもうお前の好きにはさせない!」

 これまで使っていた焦熱剣や凍結剣みたいにいかないことは分かっているが、大剣にもMPを注ぎ込んで想像魔法で燃え盛る炎の大剣を想像してみるものの、これまで使っていた喋る魔剣たちと違って想像通りに大剣は燃え盛るも、刃の部分が燃えるだけで焦熱剣とは程遠い剣になる。
 このままではまたレーザー砲を撃たれて、今度こそ終わりだと思うため、刃の部分が燃えただけの大剣を手にベヒーモスの頭部に想像魔法による転移で移動し、頭部に剣を突き立てるが、硬くて刃が刺さらず、刃を燃やした所為もあってか大剣の強度が弱くなってバラバラに折れてしまった。
 悪いことは続くもので、ベヒーモスの頭部の角がバチバチと帯電しだして、角と角の間にいる俺は帯電していた雷が直撃し、身体中に電気が走り回って感電して気を失いそうになるが、必死で想像魔法で治療と身体中から電気が抜ける想像をしていき、角に帯電していた雷が消える直前に鎧の効果でダメージが軽減され、なんとか生きながらえることが出来た。 
 
 しかし、まだベヒーモスの攻撃は止まらず、レーザー砲を放ったときと同じように、身体中が光だして口からレーザー砲を発射されるも、ゼロはどこかの地面に潜って消えており、何もない所に発射されていくレーザー砲は、上に弧を描くようにカーブしてベヒーモスの頭上にいる俺の元に降り注いでくることで、想像魔法による転移でベヒーモスの後方に転移して逃げたら、自身の攻撃を頭上から食らったベヒーモスは頭の毛先が焦げた程度で、何事もなかったかのように再度口を開き再度レーザー砲の準備を開始しだした。

「大剣は折れたし、自身の攻撃で自滅を期待したけどそれも無駄に終わったし、いったいどうしたらいいのだろうか」

 絶望的な状況でどうしたらいいか分からず、そう言葉が出てしまったが、俺には手にする武器はなくとも想像魔法があるため、ベヒーモスが死ぬ想像をしながら想像魔法を使うも、そんな想像では流石に死なない。
 だが、出来ることは全てやろうと拳にMPを注ぎ込んで、拳が最強で最硬に硬くなる想像をしながら拳を握りしめてベヒーモスの視界に入らないように動き回り、死角になった箇所を殴っては離れ、時には頭部に転移して頭を殴っては離れるということを続ける。
 しかし、殴り続けていてもただの打撃なため、大したダメージを与えられていないとそう思っていたとき、腹に突き刺した拳がベヒーモスの腹にそのまま埋まって抜けなくなった。

 ベヒーモスの首は柔らかく、腹にいる俺に口を向けてレーザー砲を発射する準備が始まり、このままでは完全に死んでしまうと思って突き刺さった拳をベヒーモスの腹から抜こうともがくも、腹の筋肉が締まって余計に拳が抜けなくなって焦る。
 焦れば焦るほどなにも想像が出来なくて万事休すといったところで、ベヒーモスの身体と口がカッと光ったとき、俺の前にゼロが現れ何重にも重ねたシールドを張って放たれたレーザー砲を防ぐも、火に当てた飴細工のように簡単に溶けていく彼のシールドと共に彼の身体や顔の皮膚が溶けて中の機械が露わになりながらでも、俺の前から離れようとせずにいる。
 小さな身体の背後にいる俺にもレーザーの攻撃は喰らい、剥き出しの顔の肌は焼け焦げ、鎧も強すぎる攻撃に対処できないのか、黒く変色するだけで、鎧は溶けはしないものの、鎧ごしに強い痛みを感じた。

 彼はレーザー砲を喰らいながらも、壊れて無くなった肘から先を前に突き出して地面を捲り上げてレーザー砲を防いだ。彼の行動に先程は俺と一心同体と言っていたのも事実だったのだと、彼の自身を挺して身を守ってくれたことに適当に受け流したことに反省する。

「マスター、申し訳ございません。
わ、私はここまでのようです。ベヒーモスがあの攻撃をするたびに壁や地面が壊れていないのはご存知でしたか?これが倒すキッカケになればと思います」

 彼はそう言ってあとペタンと座り込んで、倒したあとで口付けを要求しますと言って瞳の光が消えた。

「クソがあ!分かった!壁だな!確かにお前が地面を捲った部分は無傷だ。あとは俺に任せろ。後でいくらでも口付けくらいしてやるからな!」

 自らの身体を犠牲にしてまで俺を助けたことによって機能停止になったゼロにそう叫んだあと、彼はI.Bに収納し、ベヒーモスの腹に埋まったままの拳ごと天井付近まで想像魔法による転移で移動して、そのまま落下して、ゼロがどうやって壊れない地面を捲ったのかは分からないが、地面に向かってベヒーモス自身の体重でダメージを与えるようにベヒーモスの背中から落ちたら、凄い衝撃が響き、硬いベヒーモスの腹ごと俺にもダメージが伝わってきたものの、ベヒーモスは今回初めて苦しそうな呻き声をあげた。
 これで確実にダメージを与えることが出来ると考え、未だに抜けない拳ごと天井付近に再度転移して落ちるということを何度も何度もやることで、次第に腹の筋肉が緩んで突き刺さった拳が抜けたが、それでも転移して落ちるということを続けていると、ベヒーモスからボキッと鈍い音が聴こえ、横たわったままピクピクと痙攣しだして、口からブクブクと泡のような物を吐き出した。

「今の音は背骨か?それとも体内のどこか重要な骨かも」

 泡を吹いているものの、まだ生きているベヒーモスに容易に近づくのは危険だが、念のため頭部に転移したら、頭にある角がバチバチと音を鳴らして雷を放つが今度は簡単に避けた。
 雷を放ったあと、再度帯電しだす角を思いっきり殴ってへし折ろうと試みるも、逆に俺の拳の骨が折れた。

 だが、こんなことでへこたれてはいられない。こんなことで弱気になれば、俺を庇って身を挺して機能停止になったゼロに顔向け出来ないと思い、拳を想像魔法で再生治療しながら角を何度も殴り続けては、雷を避けるといったことをやっていたら、砕けた骨の拳は想像魔法で治療する度に硬くなり、それによって角もヒビが入って一本だけだが叩き折ることが出来た。

 これにより、もう片方の角は帯電すらできなくなったものの、身動きができないだけで泡を吹いていたベヒーモスは口を開けてレーザー砲を発射していた。
 レーザー砲はまたも弧を描いて頭上に降りかかるも、来るのが分かっている物に当たる訳がなく、これもベヒーモスの尻尾付近まで行って避けたら、今度は首を上に向けて連続で複数のレーザー砲を発射し出した。

 降り注ぐ複数ものレーザー砲の逃げ場はベヒーモスの身体の下しか無くなり、想像魔法による転移によって身体の下に転移した。
 ベヒーモスの身体の下に転移したら、数百トンもの重量がのし掛かり、その上ベヒーモスは見た目通り以上の重さに気が遠のいて行きそうになるのを歯を食いしばって正気を保つ。

 レーザー砲によるベヒーモスの身体の振動が消えた頃、すぐさま転移で身体から抜け出したら身体中の骨が軋んですぐに跪いて動けなくなるも、こんな好機をベヒーモスに与える暇を与える訳にはいかないため、軋む身体を気力で無理矢理動かして次のレーザー砲発射に向けての発光しだすベヒーモスの頭部にまた転移して、頭に向けて拳を振り下ろす。

 ベヒーモスの頭部は自身のレーザー砲を喰らっても平気でいられるはずで、殴っても手応えは全くといって無いものの、だからといって攻撃を止める訳にはいかず、地面を殴る感覚にあるベヒーモスの頭部を一発一発を全力で力込めて拳を振り下ろし、次のレーザー砲が発射されるまでに決着を付けようとするが、次のレーザー砲発射までに決着着けるのは間に合わなかった。

 放たれるレーザー砲は頭上に降り注ぎ、間一髪で転移による回避に成功するも、人間では考えられないくらいに首が曲るベヒーモスのレーザー砲は逃げ回る俺を追いながら部屋中にレーザー砲が追いかけてきた。
 追尾してくるレーザー砲は、どう想像したか分からないが、手を付いた壁が捲り上げて防いだ。その後もどうしても回避が間に合わないレーザー砲は身体で受け止め、全力で散り散りになる肉体の回復に務める。

 しかし、一発一発のレーザー砲の発射持続時間が短いため、レーザー砲が切れる度に再度発光しだす。そこで近づこうとするものなら、力が貯まり切る前に発射して発光して貯め出すのを見て、ベヒーモスは自身に余裕がないのだと気が付いて、発射後に発光しだすのに合わせて近付くのを繰り返すと、打ち止めになったのか、短いレーザー砲を発射した直後に過呼吸のように息を切らしだす。

 これを機にベヒーモスの何処を見ているか分からない目に力一杯に想像魔法で強化した拳で潰したら、悲鳴をあげるも抵抗する体力がないのか、悲鳴だけで動きがないことでもう片方の目も潰そうとしたら目を閉じられてしまうも、俺の拳は瞼ごと目に突き刺さる。

 両目を潰されたベヒーモスは悲鳴をあげたあと、残りどれほど残っているのか分からない体力で首を振り回して微弱ながらに発光しだして、手当たり次第レーザー砲を吐き出すも、当たらないレーザーなど何も怖くはなく、心置きなくベヒーモスの頭部にて殴っていたら、偶々頭部に降り注ぐレーザー砲が直撃したものの、その威力は今までのダメージに比べれば痛いのは変わりないが、大したダメージにならなくて、ダメージを受けながらそのまま頭部を殴ると、レーザー砲と俺の拳が合わさってか、殴ったときにあれだけ硬かった頭が柔らかくて拳が頭に突き刺さった。

 ベヒーモスは断末魔の叫びと共に息絶えた。
 念のために頭部に突き刺さった拳を中でかき回して反応がないか確認後に、ベヒーモスから降りたら扉と魔法陣が出現した。
 完全に安全になったと思ったら気が抜けて、仰向けになって倒れるも、すぐにゼロのことを思い出してI.Bに収納していたゼロを取り出した。 彼はロボットらしい剥き出しの複雑な配線に焦げた鉄などが見える。
 手足も半分以上無くなっていて、MPの供給でどれほど回復するか分からないが、唇があったであろう箇所は空洞になっていて、覗き込むも暗くて中がどうなっているか分からない。

 彼が俺を庇ってレーザー砲を受けて口付けを約束した手前、このまま放ったらかしにするわけにもいかず、空洞に舌を入れてみたら、俺の舌に複数の触手が絡み付いた。

「キョウリョクナマジックパワー、オヨビ、マリョクヲ、カンチシマシタ。
コレヨリ、サイセイノタメニ、キョウセイキュウシュウヲカイシシマス」

 ゼロの機械的な声がそう言って舌に絡み付いた触手の締め付けが強くなって、なんとなくMPを吸い取られている感覚もあってか、彼の皮膚や髪に無くなった手までもが再生しだし、髭面だった顔も最初に見た子供の容姿に戻り、服までもが再生したところで舌に絡み付いた触手が取れ、再生された閉じている瞼(まぶた)が開いた。

「ベヒーモスは無事倒されたのですね。マスターの実力だと一割未満ほどの勝率でしたのに、どうやって倒したか、後で記憶を読み取らせて下さい」
「まあそれくらいなら良いよ。お前が一心同体とか言ったときは、一人で逃げる気満々だろうと思っていたけど、本当に危ないときは身を挺してまで助けてくれるなんて思ってもみなかった。 だから照れ臭いけど、礼を言わせてもらうよ。ありがとう」
「私は主であるマスターを守るために、このオリハルコン以上の硬度を持つ神の鉱石で作られた壁の解析を行っていましたのであの状況では仕方ないことだと推測致します。この神の鉱石ですが少量なら持っていって大丈夫でしょうが、どうされますか?これを加工できる者が今の時代にいるかどうかは定かではございませんが」
「オリハルコン以上の鉱石なんてあるんだね。
 手に入れることができるなら持って行こうか、何処かで役に立つことがあるかも知れないしね」


 淡々となんの感情もなく話す彼に、礼を言ったあと頭を撫で、消える前にベヒーモスをI.Bに収納して、オリハルコン以上の鉱石があることに驚くも、ベヒーモスのレーザー砲によって簡単に溶けたオリハルコンのことを考えたら、そんな鉱石があるのも納得のできる。
 この地面や壁からは少量しか取れないそうだが、少量でも取れるなら取って置こうと彼に回収をお願いして、神の鉱石の回収が終了したと彼の言葉を聞いたのち扉から出たら、扉の前に置いてきていた焦熱剣と凍結剣がよくやっている口喧嘩をやっているのを見て、笑いが込み上げてきて大笑いした。

 二本の剣は急に笑い出した俺に困惑してお前さんの頭がおかしくなっただの、お前様がおかしくなったのは焦熱の所為だとまた喧嘩をしだす剣たちの横で疲れが溜まっていたからか、横たわったら瞼が重くなって意識を失った。


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