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第6章

第3話

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 ゼロが指差す方向に進んでいたら海に辿り着いた。

「え、ここ?間違えてないか」
「ここから行くのが一番の最短ルートです。
マスターは私がお守りしますので、安心して付いて来て下さい」
「いや、守られなくても戦うけど…。
いったい、どうやってこの先を進む気なんだ」
「先程、あの場所でも言いましたが、私はたくさんのスキルを所有しております。そのうちの幾つかに、水中でも呼吸ができて、なおかつ地上と同じように動くことができるスキルがあります。今回はそれをマスターに使おうと思っていますが、よろしいでしょうか」
「う、うん。いいけど、いい加減そのおっさんの顔は変えないか?」
「そうでございますね。しかし、ここは監視の目が多いようですので、もう少し人目に付かない場所に移動してから変わりたいと思います」

 彼にそう言われて辺りを見渡すも、何処から見られているか分からない。あの時のとても小さな小蝿かとも思ったが、小虫なんてそこら中にいて、どれが監視用のカメラなのか見当も付かないでいる。

「マスター、監視は虫だけではありません。
例えば、そこに生えています木の枝に隠されていたり、遠目で見つめて襲い掛かってくることのない魔獣の瞳に、道端に落ちてます小石まで、様々な物が監視の道具となります。
 それに、上手く隠れているつもりでしょうが、人も隠れています。ここは気にしないで先に進みましょう。その前にマスターにはお召し物を着ていただきます」
「お召し物って、洋服のことか。確かに監視が沢山あるなか全裸は不味いよね。仕方ない、股間の違和感は気になるけど服を着るとするよ」
「マスター、失礼します。マスターにはもっと相応しいお召し物を着ていただきます」

 I.Bに収納していた服を取り出して着ようとしたら、ゼロはもっと相応しい物を着て欲しいと、彼は俺と同じように何もない空間から鎧を取り出した。

「マスター、あなた様にはこのようなお召し物を着ていただきます。私もマスター同様に、アイテムボックスのスキルを所有しております。
 そして、中にマスターに必要な物から不必要な物まで様々な道具が入っています。先程地下で収納したオリハルコンの壁の塊や、鉱石類も収納しています」

 彼がマジックバックらしき物を持ってないことから、彼もI.Bみたいなスキルはあるんだろうと推測していたものの、思った通りI.Bを持っていて、彼が渡してくれた物は純白の兜なしの全身鎧だった。 俺は鎧なんてガラじゃないと思っていたのだが、折角くれた物を着ないわけにもいかず渋々、どうやって着ればいいのか分からずに鎧を身体に当てて考えていたら、彼が手伝ってくれてなんとか着ることができた。 
 着てみたら何処かの騎士かと思うほど格好になるも、裸の上から直接着ているのにあまり鎧を着ている感覚がないのに驚いた。


「マスター、その鎧は何色にも染まる鎧で、マスターが火のダメージを受けましたら、鎧も赤く染まり火に強くなります。氷でしたら青くといった感じで、様々な色に変わり強くなります。ただし、強過ぎるダメージを受けた場合は、最初はそのまま受けてしまう場合があります」

 彼にそう言われて、試しに想像魔法で炎を出したら、鎧全体が赤く染まった。
 その炎をそのまま赤く染まった鎧の身体に当てたら、ほんのり温かい程度になってて驚く。
 しばらく何もせずにいたら元の色に戻り、今度は想像魔法で出した冷気を鎧の色が変わる前に当てたら鎧が凍って、凍えるくらい寒くなったものの、少し経てば冷んやりと清々しい気持ちになった。

「へえ、面白いね。でも全身鎧以外では無いのかな?ちょっと、俺向きでは無いと思うんだけどさ。それに、確かに言われた通り、急に冷気が当たると直ぐには対処出来ないんだね」
「いーえ、マスターにはピッタリの物でございます。マスターはこれまで何度も死にかけたり、実際に死んだことも記憶をスキャンして読み取りました。
 その危機的状況のときマスターは鎧を着ていれば、助かる見込みがあったと思われます。
 ですので、これからは戦闘の時は着用することをお勧めします。
 鎧が凍ったのも、マスターが出した冷気の威力が強過ぎたのだと推測致します。ある程度の威力でしたら無効化、もしくは軽症で済みます。しばらくすると、鎧が適応しますので強いダメージを受けた場合は我慢をして下さい」


 俺の記憶を読んでいる彼にこうも言われてしまえば反論もできず、渋々言うことを聞き入れて彼と共に海の中に入って行ったら、浜辺から入ったのに、すぐに水深の深い所になっていて、足が地面に付かずに水の中に沈んでしまったものの、息は普通にできるのに驚く。
 彼の言葉の言う通り呼吸が普通にでき、I.Bから焦熱剣を取り出して振っても水の抵抗もなく、普通に振れる。

「マスター、この水の中で炎の魔剣はご遠慮して下さい。その魔剣をお使いになり続ければ、この海の中の生物が全て全滅させてしまいますうえ、全滅と共に面倒な自体を起こしてしまいます可能性がありますので、炎のと同様に氷も遠慮して下さい。代わりといってはなんですが、魔剣ではないですがこれをお使い下さい」

 彼は一本の純白の大剣を手渡して来て、それを受け取って振ってみたら、軽くて大剣を振っている感覚がなく、ここはありがたく使わせてもらおうと焦熱剣をI.Bに収納しようとしたら【俺様はもう不要なのかよ】と不機嫌な声が聞こえた。

「いや、ここじゃ焦熱剣は強過ぎるみたいだから、ここでは使わないってだけだよ。この水の中が終わればまた使うからさ」
【チッ、仕方ねえな。俺様の出番待ってるからな!凍結のヤツは今後も使わなくていいからよ】

 焦熱剣は不貞腐れながらも、言うことを聞いてくれてI.Bに収納し、彼は暗い海底でも難なく歩けるように数十個もの光の球を出して歩いて案内してくれているなか、クジラの何倍もの大きさの生き物たちが泳ぎ、光の球に誘われるように襲い掛かってくることもあったものの、彼のスキルによって弾かれたり、真っ二つに斬られて彼のI.Bに収納されたりしていく。
 他にも大王イカや巨大タコなど海ならではの独特な形をした生態の生き物や、分かりやすい形の海竜など、彼が倒し損ねた魔物は俺が斬り倒して、倒した物だけ自分のI.Bに収納していった。

「マスター、もう少し歩きましたら、目的の魔法陣に辿り着きます」
「う、うん。俺には右も左も分からないから任せるよ」
「それと、魔法陣の近くにまだありましたら、マスターのスキル習得のための役に立つ石板があります。私がまだ眠りに就く前は、この辺りはまだ海などではありませんでしたから」

 まだこの辺りが海ではなかったって、彼はいったいどれほどの長い期間眠りについていたのだろうか。
 彼はヤマト生まれだと言っていたが、ヤマトの歴史はそれほど長くからあるのだろうか、今俺が考えても分からないだろうが、全てはヤマトに着いたら色んなことが分かることだろう。
 彼の事とヤマトについてを考えながらも、海底の底を歩いていたら、彼の言う通り所々に苔やフジツボがびっしりとこびり付いた石板らしき物を見つけた。
 文字は汚れとフジツボで見えなくなっており、一部が大きく欠けている物もあるものの、役に立つスキルならと、仲間たちと合流できたときにでも皆んなに見せようと思ってI.Bに全てを収納した。

「マスター、これは読む必要がない物です。
 頭の中に直接語りかけてくる物でございます。ですが、今此処で触ってスキルの習得するのはお勧め致しません」

 彼の言うことを聴きつつ、目につく石板は手当たり次第に収納していたら、いつの間にか紫色に光る魔法陣の近くにきており、汚れも欠けてもない石板を彼が見つけて魔法陣に乗らないように気を付けながら見てみるも、暗くてよく見えないことで一旦この石板もI.Bに収納した。

「それではマスター、行きましょう」

 彼はそう言うと手を差し出してきた。
 俺はその手を掴み、共に魔法陣に乗った。



□□□□□

 ミーツが罠の階層で落とし穴に嵌ったころ、ヤマトのギルド本部のとある部屋では、ミーツたちの行動を見ていた者たちがいた。

「ああああー!ミーツちゃんが落ちちゃったわ!」
「ダンク落ち着け!ミーツがこんな所で死ぬタマじゃねえの、お前も知ってるだろが!」


 そうダンクとシオンだった。
 彼らはヤマト行きの飛空艇と呼ばれる魔力が原動力で飛行する船によって、ヤマトに無事辿り着き、真っ先に冒険者ギルドの本部に向かったのだった。
 ギルド本部ではギルド証を持った冒険者であれば、全世界の何処であろうが所在が分かる仕組みになっているのが彼らは知っていたからだった。

 彼らは以前にもヤマトに来たことがあって、ギルド本部ではそういったシステムがあるのを憶えていたのだ。
 そして、彼らがミーツの名前と何処でギルド証を発行し、ギルド証に刻まれた番号をダンクが覚えているところから受付に説明したら、ミーツはトップシークレットで検索できなかったものの、彼らはしばらくの間、別室で待たされた。 ミーツを長く監視している者がいるということで、彼らを特別にギルド本部でも限られた者しか入ることが許されてないでろう、とある部屋に別室から移動を命じられ通された。

 そこで彼らを待ち受けていたのはレインだった。彼は初めてミーツと会ったときに想像魔法のスキルを持っていることに気付き、ヤマト行きを誘ったのだった。
 しかし、ミーツはそれを断り、まだやることがあるとかで一旦レインも諦めたものの、想像魔法の使い手はヤマトにとって、世界にとっても重要なため、どうしても諦めることができなくて、早々に皇族の力を使って監視の魔導具を使ってでもミーツを監視していたのだ。

「あ、あなた様はレ、レイン殿下!
ダンク!頭が高いぞ!頭を下げろ!」
「あらん、あたしは良いのよ。
レイン様お久しぶりね」

 ギルド本部のとある一室に通された彼らは、目の前にいるレインを見て、シオンはすぐさま跪いて頭を下げるも、ダンクはフレンドリーにレインを呼んだことでシオンは不敬を働いたと思って、ここまできたのに終わったと思った。
 しかし、シオンの考えとは違った展開になった。

「ダンクさんお久しぶりですね。
さあ、シオンさんも気にせずにお立ちになって下さい。
 あなた方はミーツさんが大切にしているお仲間なんですからね」
「いや、しかし、あなた様はヤマトの皇族で…」
「レイン様がこう言っているんだし、シオンちゃんも立たなきゃ」

 部屋にはレインとダンクにシオンにソルトだけのため、シオンは渋々立ち上がるも、レインのことが見れなくて俯いていた。
 だがダンクはレインが何故、ギルド本部の部屋に一人でいるのかが不思議に思って理由を聞いたところ、ミーツの監視についての説明をして更に、その監視の映像を見られるのが皇宮を除けば、ここしかないと言われて二人とも驚いた。


「え、じゃあ、レイン様はここでずっとミーツちゃんを見てたの?」
「ははは、そんな訳ないじゃないですか。
 皇宮ではこの映像を録画して編集までしてもらって、時間のある時に家族で見てましたよ。でも時々私のスキルで短時間ですが、リアルタイムで家族で見ていた時もありましたよ。
 今回こちらに来たのは、ミーツさんの検索をしている冒険者がいるっていうんで来てみたんですよ。そうしたらダンクさんにシオンさんじゃないですか、良かったですよ。皇族廃止団体の者達が私の動向を探って、ミーツさんの存在を知って検索したんじゃなくて」

 俯いていたシオンはレインの顔を見るまでもなく、恐ろしくて震え上がった。

「レイン様、威圧が漏れているわよ。
 これくらいじゃ、あたしは平気だけど、シオンちゃんが怖がっちゃってるから、ちょこっとだけ抑えてくれるかしら。それに貴方なら、ミーツちゃんを検索したのがあたしたちだって、最初から分かっていたんじゃないの?」
「あはは、すみませんね。お二人はミーツさんの所在が知りたいんでしたね。ミーツさんは今、ヤマトに向かうための古(いにしえ)の一つであるダンジョンにいますよ。
 ほら、今ならギガ暴食竜を単独で戦っている映像が見れますよ。
 ダンクさんの質問ですが、結論から言いますとご存じでした。
 ですが、私のスキル使用で知りましたが、これについては燃費が悪いですので、あまり多用ができませんから、大事なことでは無い限りあまり使用しないんです。今回はミーツさん絡みでしたから使用しましたが、いつでもは使いません」

 ダンクの言葉にレインは漏れ出た威圧を抑え、部屋の壁に掛かっているカーテンを開けると、ミーツがギガ暴食竜を倒し、仲間たちに抱きつかれている映像が映り出されていた。


「あらあら、ミーツちゃんったら暴食竜を単独で倒せるだけの実力を持ったのね。この短期間で凄いわ」
「有り得ない。あいつが暴食竜をだと…。
しかも普通の暴食竜でもSSランクの冒険者が単独は厳しいというのに、まさかあいつが…」

 現在のミーツの実力を知った彼らは驚いた。
 本来ギガ暴食竜は、単独で倒すならSSランクの5人組パーティの冒険者でないと難しいとされているからだ。
 それをまだ騎士時代だったときから知っているシオンは、映像に映り出されているギガ暴食竜の横たわった姿を見ても、信じられないといった感じで見つめていたが、ダンクは単独でも倒せる実力があるため、驚くのは驚いたものの、凄いわと言うだけで終わった。

「私はまたやることが残っていますので、また編集してもらって、あとでまた見させてもらいます。お二人はしばらく彼の動向を見守って下さい。
 あー、それとシオンさんが知りたがっていることは、ある程度は資料にまとめてありますから、あとで魔導人形のメイドに持って来させますね。 あとは、ミーツさんの魔導人形のソルトは、こちらでメンテナンス検査しますから、ミーツさんには直接お返ししますね」

 レインは彼らにそう言うと、ソルトと共に部屋を退出した。
 レインが部屋を退出してしばらく経つと、一人のメイドが部屋に入り、しばらくの間彼らの世話とシオンの弟であるケインの調査の報告結果の資料とさまざまな書類を持ってやってきた。

「え、世話ってあたしたちを監禁でもするのかしら?」
「いえ、滅相もございません。私は直接レイン殿下に世話するようにと言われて、参りました所存でございます。
 それに、その気になられれば、いつでも実力で皇族の住まう皇宮に忍びこめるダンク様を私如きが止められるはずもありません」
「ふーん、だったらいいけど、なんかいい気がしないわね」
「俺は返って資料に目を通せる時間ができたから嬉しいが、ミーツの動向に飽きたら、ダンクはそこのメイドと、街にでも出掛けたらいい」
「う~ん、じゃあ飽きたらね。それまでは不自由させないでよ」
「了解致しました。この部屋についてもミーツ様という冒険者のことについても、最機密情報として承っています。
 とりあえずのところ、こちらで寝泊まりができるように部屋を広く広げて、生活に必要な物をご用意致します」

 メイドはそう言うと、部屋の壁に埋め込まれているタッチパネルを操作して部屋を広く広げ、指パッチンで部屋にフカフカのベッドを二つに、テーブルや椅子など必要な物を用意し、部屋の隅で待機しだす。
 それからはしばらくミーツの動向を見守っていた彼らは、ミーツが落とし穴に落ちたのを見て狼狽えているのだった。

「でもシオンちゃん。ミーツちゃんが生きてるってどうして思うの?映像が真っ暗になっちゃったけど、こんなのを見てまだ無事だと思うの?」
「ああ、あいつなら無事なはずだ!
 現に暗いままだろうが、これであいつが死んでたら、死体が出るはずだ。
 大体あいつとの付き合い自体は短いが、俺たちが生きてることを信じないでどうする!」
「そ、そうよね。たしかにシオンちゃんの言う通りね。あたしもミーツちゃんは生きてることを信じるわ」
「それがいいだろう。俺はしばらくの間、街に出て行く。何か進展があればレイン殿下がくれた通信機なるもので連絡しろ。
 これからダンクはどうするんだ?これから来るミーツの新しい仲間たちを迎えに行って合流するか」
「そうねえ。でも多分、あたしが迎えに行かなくても向こうから来ると思うわ。
でも、やっぱり迎えに行っちゃおうかしら。
メイドちゃん、今、どの辺りにいるかちょっとギルドに問い合わせしてきてくれるかしら」
「はい。かしこまりました。それでは失礼致します」
「む、誰だ?」
「あら、ホントね、どなたかしら?」

 部屋を退出したメイドと入れ替わりで一人の男が部屋に入って来た。

「申し訳ありません。私はこのギルド本部では上位に位置する者でございます。諸事情で名乗ることができませんが、レイン殿下の使いの者と言えば、お分かりになられると思います」
「ああ、分かった。理解した」
「レイン様のってことは、ミーツちゃんのことね」
「はい。映像で見られて既に知っておられると思いますが、あの冒険者はレイン殿下のご指示によって、あの罠に嵌ったのです…がふ」

 男はミーツが罠に嵌ったのを指示したのがレインだと言った瞬間、ダンクは彼に向かって殺気を放ち、彼がこれ以上話せない状況にしたのだ。

「ダンク落ち着け!この男はレイン殿下の使いだって言ってるだろ!痛めつけるなら、話を聴いたあとでもいいだろが」
「ふう、分かったわシオンちゃん。ただし、つまらない理由なら貴方は殺すわよ。レイン様も相応の罰は受けてもらうわ」
「は、はい。了解致しました。殺気を解いて下さってありがとうございます。
 では、説明をさせていただきますが、私も詳しい理由については聞かされていませんが、罠に嵌めた理由としては、彼が持つ特別な力によって、彼にしか目覚めさせられない古代の魔導人形の所に行ってもらうためだとか…でございます。ゴプ」

 男の説明を聴いたダンクは再び強い殺気を彼に放ったことで、話し終えた彼の口から血を吐き出した。

「も、申し訳ございません。ま、まだ、話が終わってません」
「そう、でもどうせ大したことじゃないんでしょ?貴方は悪くないかも知れないけど、もう話さなくてもいいわ。死になさい」
「待て待て待てダンク!まだミーツがあの落とし穴の罠で死んだと決まった訳じゃないだろが! それについさっき信じるって言ったばかりだろうが!
 彼を殺したところで今の現状は変わらないし、彼の話し振りだとあいつはまだ生きてるってことだ。最後まで話を聞こう」
「ハアハアハア、さ、流石はシオンさん、貴方がいなければ、私はこうして続きを話せなかったでしょう」
「御託はいいから、早く話してちょうだい」
「はい。了解致しました。シオンさんの言う通り、あの者はまだ生きてます。
 ですが、あの罠の名称である黒き絶望の時間は通常の時間では流れませんので、長ければ数ヶ月。短ければ数日間はこちらの映像の通り暗いままでしょう。
 ですが、時間経過によって暴食竜がいる階層まで落ちます。
 落ちても彼なら助かるとレイン殿下は仰ってました。そこで、彼一人なら導かれるであろう魔導人形の所まで行くと予想されてます」

 彼は言い終わると、自身がダンクの殺される覚悟を持って目を瞑ったものの、ダンクからの殺気も拳も飛んで来ないことで、恐る恐る目を開いてダンクを見ると、涙をボロボロと流して黒い映像が映し出されている画面を眺めていた。
 シオンも、やっぱりこれしきでは死なないかと、どこかホッとした感じで、テーブルの上に乱雑に置かれた書類に手を伸ばす。
 こうして、説明を終えた男は無事に部屋から退出できるようになって、残ったダンクとシオンは黒い映像をひたすら眺めているのだった。








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