上 下
133 / 247
第4章

第14話

しおりを挟む
第14話

引き返してきた俺達は、早速商人とシオン達を集めて先程の説明をしていくと、商人と冒険者達は青褪めた顔をしていたが、シオンは俯いて考え事をしている様子だ。


「ミーツにダンク、お前達は腐人を見た後に町がどうなっていたかを見たか?」

「見てないわ。でもあれだけ大群の腐人よ?
町は壊滅したと思っても良いと思うわ。
それに、この地面に残る様々な足跡は魔物が沢山歩いた跡でしょ?だから…」


姐さんは言葉に詰まったが、詰まった先は誰もが想像できる為、姐さんに敢えて聞こうともしなかった。


「それでも町の現状を知っておく必要があるぞ。それによっては、ここから遠回りしてでも王都に向かわねばならないからな。

ミーツ、商人を抱きかかえて町の様子を空から見て来てくれ」

「え?ミーツさんって空を飛ぶ魔法も使えるのですか?水や火に氷だけじゃなかったんですね。それならそうと早く言ってくれればよかったのに」


シオンが俺に商人を抱きかかえて町の様子を見てこいと言う言葉に商人が反応して、空を飛べる事を早く知っておきたかったと、ブツブツ呟いている。

シオンもアッサリと俺が空を飛べる事をバラしたけど、状況が状況だから別に良いと思ったが、シオンは自分で商人には魔法の事を言うなって言ったの憶えているのかな?
それに商人より機転がきく姐さんの方が良いと思うんだが。

「ミーツ、早く商人連れて飛んで行け」

「シオン、そこは商人ではなくて姐さんの方がいいんじゃないか?」

「駄目だ。ダンクでは町の元々の配置から避難場所などは知らないだろ。
それに、商人の馬車の修理に力のあるダンクが必要だからな」

「確かに、じゃあ商人さん行きましょうか」


俺は商人を背負ってゆっくりと上昇すると商人は、興奮しているのか呼吸が荒く、俺の首元や耳に息がかかって気持ち悪くて臭い。

背中の商人の示す方向に飛んで行くと、先程の腐人の大群が見えてきた所で、商人は腐人の大群を見て恐ろしさでなのか、更に呼吸が荒くなってブルブル震えだした。


「あ、あの、ミーツさんの魔力は町まで持つのですよね?
今、魔力切れとかにならないで下さいよ」

「大丈夫ですから、あまり密着しないで下さい」

「む、無理ですよ~。
絶対離しません!」


うーん、正直商人の息と体臭が臭すぎるから、あまりくっ付かないで欲しいのだけどな。
仕方ない、商人の示す方向に向かって急ぎめで飛んで行こうと思って、飛ぶスピードをアップさせて行くと、腐人の大群の後に少し距離をおいた所に外壁も建物もボロボロの町に着いた。

上から見る限りでは、生きている人は居ないんじゃないだろうかと思うくらい、腐人と人型の魔物が町中をウロウロしていた。

人型の魔物は首無しで鎧を着ているデュラハンや、腕が複数生えている阿修羅みたいな魔物?が腐人とぶつかりながら徘徊している。

時折、腐人?人を食べている魔物もいて見ていて気分が悪くなる光景だ。


「ミーツさん戻りましょう。
この惨状では、きっと生きている人なんて居ませんよ」


町全体を潰したくなるような光景を見ていると、息の荒い商人は避難場所も確認しないまま戻ろうと提案してきた。


「でも、避難場所くらいは確認しなければ、ここに来た意味がないですよ」


俺がそう言うと、商人は首をフルフルと横に振ると
「ここまで壊滅してたらどれが避難場所かなんて分かりませんよ。もういいでしょ、行きましょうよ~」


避難場所も分からないと言う商人に正直飽きれて、連れてきた意味のない事を言い続ける事に苛立ちを覚えたが、苛立っても仕方ないし納得出来ないが戻る事を考えていると、何か気になる物が目の端に入った。

その気になる物とは、建物はボロボロだが、かろうじて屋根が無事で人が集まって座り込んでる姿だった。動かない所をみると腐人ではないのか?

一応、腐人の可能性もあるかもと考えて、刀を取り出して無事な屋根に降り立とうと下降していると、商人がパニックになって俺にチョークスリーパーしてしまい、俺もパニックになりながら屋根の上に落下してしまった。

幸い落下の衝撃で屋根は壊れなかったみたいで安心したが、念の為に屋根を支える様に下からブロックの柱を数本建てて屋根が崩れない様に想像魔法で作った。

商人は落下の衝撃で気を失っているみたいだから、商人の気を失っている隙に集まって座り込んでいる人の元に行くと子供ばかりだった。

踞っているから年齢は分からないが、見た目は大きい子で14才前後くらいで小さい子で7才前後くらいか?

でも、まだ腐人ではない確信がない為、直ぐに逃げられる様に、子供達の肌に手を触れると僅かだが人の温かさを感じて腐人ではない事に安堵したが、どの子も衰弱しきっていて俺をチラリとも見ない。


「ミ、ミーツさん!魔力切れですか?
そんな腐人に近づいたら、ミーツさんまで腐人になっちゃいますよ。離れて下さい!
早く戻りましょうよ!こんな場所から早く戻らなきゃ駄目なんですよ」


商人がいつの間にか気がついていて、俺が腐人といると思ったのか、パニックになりながら戻ろうを連呼しだした。

五月蝿いと思いながらも商人の元に向かうと、商人は俺に抱きついて、更に戻ろうを連呼しだしたが、俺は戻るにしてもこの子らと一緒に戻ろうと考えた。


「商人さん、戻るのは良いですけど、あの子達も一緒に戻りますよ」

「嫌です。腐人と一緒とか絶対に嫌です」


勝手に腐人と断定している商人に少し腹が立ったけど、説得しなければいけない。


「あの子達は衰弱していますけど、腐人ではないみたいなんで、一緒に戻りますよ。
幸い戻る方法はありますから」

「嫌だ!絶対嫌だ!ミーツさん、今は腐人ではないかもですけど、絶対これから腐人になりますよ!帰る方法なんて飛ぶしかないのでしょ?私は絶対あっちの腐人の側には行きません」


正直、面倒になってきた俺は商人の服を掴んで子供達の元に連れて行こうとすると、商人は俺の行動に気づいて足を踏ん張って動かなくなった。

それでも俺は強めに服を引っ張っると、服が破れて商人は屋根から落ちそうになるも、慌てて俺の手に掴まり落ちずにすんだ。


「なんて事するんですか!もう貴方を雇うのを辞めます。辞めるんですから私を元の場所に戻して下さい」

「ふぅ、分かりました。
もう雇い人ではないなら、これから好き勝手をします」


正直有り難いと思った。
これで好きに行動できると思ったからだ。
早速行動を開始する事にして、商人の手首を掴んで無理矢理ズルズルと子供達の元に連れて行くと、商人は慌てて俺を叩いたり掴んでいる俺の手に噛み付いたりしたが、それでも構わずに子供達の元に連れて行くと、商人は諦めたのかその場で座り込んだ。

俺は広めの布を取り出して子供達に被せて、ついでに商人にも目隠し用に顔をすっぽり被る様に布を被せてシオン達の元に瞬間転移した。


「「「「は?」」」」

「あらあら、ミーツちゃん使っちゃったのね。
そんなに切迫詰まってたの?」

「あーあ、使っちまったか、お前がそれを使ったって事は、かなり危ない状況だったって事だよな?」


冒険者達は目が点になっていて、姐さんとシオンは普通に状況を聞いてきた。
冒険者達はとりあえず、放置しておいて後でシオンか姐さんに説明をお願いしよう。

俺はさっきまでいた町の様子から、空から見た腐人の大群の様子までを説明したところでシオンと姐さんは苦い顔をしだした。


「ミーツちゃん、魔物はどんな魔物がいた?
それと腐人の大群はどのくらいいて、後どのくらいで、あたし達の元に着きそう?」

「魔物はまだ名前を知らないけど、人型の魔物だと思う。首が無かったり腕が複数付いていたりしていた。でも腐人が魔物を襲わなかったのが不思議だったな。

大群はもう既に着いていても不思議じゃない筈だよ。腐人の数は多分だけど、百より少し多いくらいはいたと思う」


「ミーツちゃん、腐人は人間しか襲わないわ。獣や魔物は襲わないの。偶に例外もあるけど基本は人だけね。
数はそんなにいたのね。今迄、そんなに発生したって聞いた事がないわ」


「ダンク、お前は聞いた事なくても俺は見た事も対処方法も知ってるぞ。
先の戦争後は大変だったからな。
腐人は放置するか、俺の光魔法の上位魔法を使うか、神聖魔法を使うかしか大まかな対処方法がないんだ。

数匹くらいなら剣や槍で頭を突くか切り落とせば良いが、数百人となれば今言った方法しかないな」

「シオン、放置ってどのくらいの期間放置するんだ?」

「状態にもよるが、大体30日から150日程度だな。前に放置方法取った時は数百の魔導師を使って腐人を囲むように穴を魔法で掘って放置したぞ。穴に落ちた魔導師もしたがな」


成る程、それも一つの解決方だと思うが、今回やるとしたら穴じゃなく、壊れないような壁がいいだろうな。
穴だと旅人が知らずに落ちそうだし。

シオン達と話していると、商人が大人しい事に気が付いて、商人の方を振り向くと透明な長方形の箱の様な物に入っているのか、音は聞こえないが壁をバンバンと叩いているみたいだ。

ソルトがシオンと姐さんとの会話を邪魔しないように、気を効かせたみたいだな。
相変わらず馬車の御者に座ってるソルトに目を向けると、親指立ててサムズアップを無表情で俺に向けていた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり

柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、突如として東京銀座に「異世界への門」が開かれた。中からあふれ出た鎧や剣で武装した「異世界」の軍勢と怪異達。阿鼻叫喚の地獄絵図。陸上自衛隊はこれを撃退し、門の向こう側『特地』へと足を踏み入れた。およそ自衛官らしくないオタク自衛官、伊丹耀司二等陸尉(33)は部下を率いて『特地』にある村落を巡る…異世界戦争勃発!ネットで人気のファンタジー小説、待望の書籍化!

所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!

ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。 幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。 婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。 王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。 しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。 貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。 遠回しに二人を注意するも‥ 「所詮あなたは他人だもの!」 「部外者がしゃしゃりでるな!」 十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。 「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」 関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが… 一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。 なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…

よくある婚約破棄なので

おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。 その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。 言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。 「よくある婚約破棄なので」 ・すれ違う二人をめぐる短い話 ・前編は各自の証言になります ・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド ・全25話完結

義妹を溺愛するクズ王太子達のせいで国が滅びそうなので、ヒロインは義妹と愉快な仲間達と共にクズ達を容赦なく潰す事としました

やみなべ
恋愛
<最終話まで執筆済。毎日1話更新。完結保障有>  フランクフルト王国の辺境伯令嬢アーデルは王家からほぼ選択肢のない一方的な命令でクズな王太子デルフリと婚約を結ばされた。  アーデル自身は様々な政治的背景を理解した上で政略結婚を受け入れるも、クズは可愛げのないアーデルではなく天真爛漫な義妹のクラーラを溺愛する。  貴族令嬢達も田舎娘が無理やり王太子妃の座を奪い取ったと勘違いし、事あるごとにアーデルを侮辱。いつしか社交界でアーデルは『悪役令嬢』と称され、義姉から虐げられるクラーラこそが王太子妃に相応しいっとささやかれ始める。  そんな四面楚歌な中でアーデルはパーティー会場内でクズから冤罪の後に婚約破棄宣言。義妹に全てを奪われるという、味方が誰一人居ない幸薄い悪役令嬢系ヒロインの悲劇っと思いきや……  蓋を開ければ、超人のようなつよつよヒロインがお義姉ちゃん大好きっ子な義妹を筆頭とした愉快な仲間達と共にクズ達をぺんぺん草一本生えないぐらい徹底的に叩き潰す蹂躙劇だった。  もっとも、現実は小説より奇とはよく言ったもの。 「アーデル!!貴様、クラーラをどこにやった!!」 「…………はぁ?」  断罪劇直前にアーデル陣営であったはずのクラーラが突如行方をくらますという、ヒロインの予想外な展開ばかりが続いたせいで結果論での蹂躙劇だったのである。  義妹はなぜ消えたのか……?  ヒロインは無事にクズ王太子達をざまぁできるのか……?  義妹の隠された真実を知ったクズが取った選択肢は……?  そして、不穏なタグだらけなざまぁの正体とは……?  そんなお話となる予定です。  残虐描写もそれなりにある上、クズの末路は『ざまぁ』なんて言葉では済まない『ざまぁを超えるざまぁ』というか……  これ以上のひどい目ってないのではと思うぐらいの『限界突破に挑戦したざまぁ』という『稀にみる酷いざまぁ』な展開となっているので、そういうのが苦手な方はご注意ください。  逆に三度の飯よりざまぁ劇が大好きなドS読者様なら……  多分、期待に添えれる……かも? ※ このお話は『いつか桜の木の下で』の約120年後の隣国が舞台です。向こうを読んでればにやりと察せられる程度の繋がりしか持たせてないので、これ単体でも十分楽しめる内容にしてます。

転生おばさんは有能な侍女

吉田ルネ
恋愛
五十四才の人生あきらめモードのおばさんが転生した先は、可憐なお嬢さまの侍女でした え? 婚約者が浮気? え? 国家転覆の陰謀? 転生おばさんは忙しい そして、新しい恋の予感…… てへ 豊富な(?)人生経験をもとに、お嬢さまをおたすけするぞ!

婚約破棄された不遇令嬢ですが、イケオジ辺境伯と幸せになります!

天田れおぽん
恋愛
タイトルが「イケオジ辺境伯に嫁げた私の素敵な婚約破棄」から「婚約破棄された不遇令嬢ですが、イケオジ辺境伯と幸せになります!」に変わって、レジーナブックスさまより発売されました。 よろしくお願いいたします。m(_ _)m  *************************************************  わたくしは公爵令嬢クラウディア・エクスタイン、18歳。  公爵令嬢であるわたくしの婚約者は王太子。  王子さまとの結婚なんて素敵。  あなた、今そうお思いになったのではなくて?  でも実際は、そう甘いモノではありません。    この小説は、わたくしの不運なようでいて幸運な愛の物語。  お愉しみいただけたら幸いですわ♡

前世の祖母に強い憧れを持ったまま生まれ変わったら、家族と婚約者に嫌われましたが、思いがけない面々から物凄く好かれているようです

珠宮さくら
ファンタジー
前世の祖母にように花に囲まれた生活を送りたかったが、その時は母にお金にもならないことはするなと言われながら成長したことで、母の言う通りにお金になる仕事に就くために大学で勉強していたが、彼女の側には常に花があった。 老後は、祖母のように暮らせたらと思っていたが、そんな日常が一変する。別の世界に子爵家の長女フィオレンティーナ・アルタヴィッラとして生まれ変わっても、前世の祖母のようになりたいという強い憧れがあったせいか、前世のことを忘れることなく転生した。前世をよく覚えている分、新しい人生を悔いなく過ごそうとする思いが、フィオレンティーナには強かった。 そのせいで、貴族らしくないことばかりをして、家族や婚約者に物凄く嫌われてしまうが、思わぬ方面には物凄く好かれていたようだ。

突然現れた自称聖女によって、私の人生が狂わされ、婚約破棄され、追放処分されたと思っていましたが、今世だけではなかったようです

珠宮さくら
恋愛
デュドネという国に生まれたフェリシア・アルマニャックは、公爵家の長女であり、かつて世界を救ったとされる異世界から召喚された聖女の直系の子孫だが、彼女の生まれ育った国では、聖女のことをよく思っていない人たちばかりとなっていて、フェリシア自身も誰にそう教わったわけでもないのに聖女を毛嫌いしていた。 だが、彼女の幼なじみは頑なに聖女を信じていて悪く思うことすら、自分の側にいる時はしないでくれと言う子息で、病弱な彼の側にいる時だけは、その約束をフェリシアは守り続けた。 そんな彼が、隣国に行ってしまうことになり、フェリシアの心の拠り所は、婚約者だけとなったのだが、そこに自称聖女が現れたことでおかしなことになっていくとは思いもしなかった。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。