上 下
89 / 247
第3章

第16話

しおりを挟む
第16話

「ミーツさん、マジで凄いな!」

俺が巨大な蠍を倒してI.Bに収納した所まで、遠くで見ていたガメニが近寄って来て、俺をまるで英雄でも見るかの様に、キラキラした目で見つめて来た。

「お前さっき、オッサンって言ったろ?
でも、咄嗟の事だったけど助かったよ」

 俺は刀を収めて、槍を片手に持ちながらガメニに近付いた。

「だろ?咄嗟に出ちまったんだよ。なるべく言わない様にするから悪かったよ、ミーツさん」

「まぁ、良いけど俺も助かったし。
ビッグなんとかって巨大な魔物はこの先にも出るのか?」

「あぁ、滅多に出会わないけど出るぜ。
前にビッグゴールドスコーピオンが現れた時は冒険者達が、10人犠牲になったんだぜ」

「そうなのか?倒した事ないのか?」

「無いな、オレがこのダンジョンに来た時はまだ冒険者の数は30人程いたんだぜ」

「マジか?ガメニ以外に寝ていた冒険者の数は5人しかいなかったぞ?
 その冒険者たちも冤罪で捕まったのか?
あ、冤罪ってのはな、濡れ衣つまり、やってもいない罪を負わせられる事を言うんだ」

「それが、さっきミーツさんが言ってた冤罪ってやつなのか。オレの聞いた話だと、此処に連れて来られる前に、全てここのギルドマスターと話しをしている人が連れて来られているみたいだぜ」


 成る程な、それならレイン様の事で王様に会わなきゃいけないな。
でもって、レイン様のレリーフだけじゃ、王様に会うのは弱いから、このダンジョンをクリアして王にこのダンジョンボスを献上しなくては、ガメニ達をも解放させるのは難しそうだ。


「ガメニ、何が何でもこのダンジョンをクリアするぞ!そうでないと、お前達も解放させるのは難しくなりそうだからな。
この、えっと何だっけ?ビッグなんとかみたいな巨大化した魔物は後どういった奴がいる?」

「ビッグゴールドスコーピオンか?
さっきレッドモスと戦ったろ?アイツも巨大化した奴が襲いかかってくるぜ」

「この二階層にか?」

「いや、そんなの聞いた事ないな。 他の階層で運が悪ければ出会うぜ」

「成る程、じゃあこの先も出会う可能性は高いって事だな。俺の運は低いからな、それにこの蠍はもう出てこないんだろ?」

「多分な。倒した事ないからなんとも言えないけどな」

ガメニとゆっくりと話していると、広場の中央に位置する場所で、地面から砂を掻き分けながら今倒した魔物が現れた。

ゲームかよ!って思う程早く、ゲーム用語で言えばリポップっていうのか?
てっきり、この階層の中ボスか階層ボス的な魔物だと思っていたのに、何か裏切られた気分だ。

巨大蠍はまだ俺達の事を気が付いてないみたいだから、ガメニに指示して、ゆっくりと後退して蠍に見えない場所に移動した。

「おい、ガメニ、あの広場を通らないルートで下に降りる階段はあるのか?」

小声でガメニに話しかけると、ガメニも小声で答えてくれて、あるにはあるけど凄く遠回りになるらしい。

それなら、もう無理して倒さないで先程みたいに凍らせて先に進むか!

「ガメニ、俺がさっきみたいにアイツを凍らせるから、その隙に地下に降りるぞ」

 そう言って、広場が見える位置まで戻ると蠍は居なくなっていた。
 アレ?居ないな、これなら素早く壁際に張り付きながらだと通れるか?

 広場を見ていると、俺の肩をトントンとガメニが叩いている。
 考えてるのに鬱陶しいな!って思って振り返ると、ガメニは泣きそうな顔で歯をガチガチしながら、何も言わずに上を指差した。

すると、壁の上には巨大な蠍が壁の上の部分を器用に動き、俺達をジッと見ていた。

「ヤバイ!走れ!」

俺はガメニに言ったが、ガメニは震えて動けないでいた。俺はガメニの手を引っ張り広場に出ると、巨大蠍は広場中央部に大ジャンプして戻って来た。

 あの巨体で大ジャンプって反則だろう!
 俺は咄嗟にガメニを広場の壁際に押して、先程と同じく蠍の胴体に飛び乗り、一番危険な尻尾を切り落として、次は鋏って所で鋏の部分が急に伸びて、俺を挟もうとした。

 間一髪で避けられる事が出来たから良かったものの、先程の蠍とは少し違うようだ。
 とりあえずの所、蠍から飛び降りて対峙していると、先程切った尻尾が再生しだした。

 そして、レッドモス同様に赤く変色しだした。
 俺はこのまま全身が赤く染まれば危険だと判断して、-40度の冷凍の想像魔法を当てると、効いてないのか、冷気が水滴に変わっていった。

さっきと違い過ぎて、ヤバイと感じつつ見ていると、その水滴も蠍の胴体に着く頃には蒸発してしまっているのか?蠍が見えなくなるくらい蒸気が広場いっぱいに立ち込もった。

 このまま見えないんじゃ、本当に危ないと感じた俺は、突風の想像魔法で蒸気を飛ばして、蠍の現在の状況を見ると、赤く変色しだしていたのも、全体が真っ赤に染まって俺の危険信号が鳴っている。

 俺はガメニに目線だけ向けて、先に行けと合図を出した。
 ガメニはそれに気づいて、ゆっくりと壁際を歩きながら蠍の横を通過しようとした瞬間、蠍がガメニに鋏を向けた。

 ガメニは壁際で固まってしまっている為、俺は動いてガメニと蠍の間に立ち塞がり、今一度冷凍の想像魔法を使い、蒸気を広場に作った。

 ガメニも蠍も見えないけど、これでガメニが移動してくれる事を祈って、蠍と戦う事にしたが、どう戦おうか?
 蠍が居た場所は把握しているから、尻尾がある辺りに移動して、刀を振ると『ガキン』と音がして尻尾を切れないでいた。

切れないと分かったら、とりあえずは後ろに下がって距離を取っていると、蒸気が晴れだして蠍が俺と対峙しているのが分かった。

ガメニはちゃんと逃げたかを確認すると、股間を漏らして、まだあの場所にいた。

「ガメニー!何やってんだよ!
折角、蒸気を作って隙を作ったのに何で移動してないんだよー」

そう俺が叫ぶと、ハッとしたガメニが走って蠍が壁の上に付いても攻撃出来そうにない通路に入って行った。

 横目で見てガメニの心配は無いと安心したが、コイツはどうするかを考え中だが、どうするかな。思いっきり考えられる冷気を当てるか?
それとも、逆に火を当ててみるか?

ものは試しで、直径5mの炎の大玉を作り、蠍に向かって飛ばして当てて見ると、炎が吸収されて蠍が倍近く大きく膨れ上がった。

目の前の蠍に、すかさず同じ炎の大玉を10個程作って当てて行った。

・・・・・

9個目の炎を当てると、大きさは広場一杯の俺の立ち位置も危うくなるくらいの大きさになってしまったが、蠍も動きが鈍く、鋏を動かそうと思っても、大きくなり過ぎて自分の関節に引っかかっていた。

最後の10個目の炎の大玉を当てると、当てた瞬間、蠍の身体が内部で沸騰しているかのようにブクブクと水泡が出来出した。

 何かおかしいと思った俺はガメニが入った細い通路に向かって入った。
 その瞬間『パーン』と風船が割れるような音と共に蠍が弾け飛んで、蠍の肉塊と炎がこの階層全体に降り注いだのでは無いだろうかと思うくらい、広範囲にひろがった。

 俺達のいる細い路地にも炎が降り注いだから、俺は想像魔法で簡単なドームを壁で作って防いだ。
 小さく空気穴としてと、辺りが分かる様に穴を開けていたから、炎が降り終わるのをジッと待っている状況だ。

 しばらく待っていると、炎も肉塊も降り終わりを迎えて、辺りが静かになった。
 壁の一部を大きく開けて、広場の方に向かうと広場の中央に位置する場所に、一本の剣が地面に突き刺さっていた。

 俺はその剣を手に取り、地面から引き抜くと引き抜いた瞬間、地鳴りが聞こえ剣身が綺麗に真っ赤に染まった剣が出てきた。
 剣の大きさはロングソードより少し大きめの両手剣といった感じだ。
グレートソードかバスタードソードに近いかも知れない。

 刀身を触ってみようと指を近づけると、触ってもないのに熱さが分かる。
 鞘が無い為、とりあえずの所はI.Bに入れて置こう。

しばらく、またリポップしてくるか様子を見る事にしたが、現れる気配がない為、ガメニと地下三階に移動する事にした。

まだ、地下二階なのに先は長いな。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

転生したら死にそうな孤児だった

佐々木鴻
ファンタジー
過去に四度生まれ変わり、そして五度目の人生に目覚めた少女はある日、生まれたばかりで捨てられたの赤子と出会う。 保護しますか? の選択肢に【はい】と【YES】しかない少女はその子を引き取り妹として育て始める。 やがて美しく育ったその子は、少女と強い因縁があった。 悲劇はありません。難しい人間関係や柵はめんどく(ゲフンゲフン)ありません。 世界は、意外と優しいのです。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。