上 下
72 / 247
第2章

アリスの話4

しおりを挟む
アリスの話4

モブ君達と宿の外で待ってると、ジャス君が頭を爆発させたまま、息を切らしながら宿から出てきたのを見て、少し可笑しくなって笑ってしまった。


「アリスちゃん、酷いよ。アリスちゃんが急いで着替えて来いって言うから、急いで着替えて出てくれば笑うんだもんよ」

「ゴメンゴメン、ジャス君。
でも、寝癖が凄い事になってるままだから、可笑しくて笑っちゃった」


 私達モブ君達が案内する場所に向かって行っていると、見覚えのある人影を見た気がした。

「ねぇ、愛、今ね撫子を見た気がするんだけど愛も見た?」

「え?いや見てないよ。居たの?撫子」

「アリスちゃん、マジかよ。
撫子ちゃんが一人で街にくるとは思えないんだけどよ。来るとしたら、多分ケインの野郎も一緒の筈だぜ」


ジャス君の言う通りだと私も思った。
確かに、城の人が撫子を一人で街に出すとは思えない。
じゃあ、今さっき私が見たのは気のせいだったのかな?

 気になって一緒に行動していたモブ君達と愛達と離れて、確認しに行った。
 そこで見たのは、やっぱり気のせいでは無くて、撫子で後ろ姿しか見えないけど男性と一緒にいる。

 多分、副団長のケインだと思うけど、英雄君はどうしたんだろう?
 私が突然別行動をした事で、モブ君達全員が私の元にやってきて、撫子を目視して確認した。


「あ、あの野郎と一緒じゃねぇかよ。
アリスちゃんが、撫子ちゃんを見たってのは勘違いじゃなかったんだな」

「ジャス君!」


 私が制止する前にジャス君は飛び出して、ケインの元に文句を言いながら向かっていった。


「おい!何でアンタが撫子ちゃんと一緒にいるんだよ!英雄はどうしたよ?」


ジャス君は後ろを向いているケインの肩を掴んで、文句を言うと

「おや?私に言っていたんですか?
て、誰かと思えば追放された。撫子のお仲間さんじゃないですか。
撫子と一緒にいるのはですね。
私が撫子と付き合っているからですよ」

「もう!ケインったら、そんな堂々と言わないでよ。恥ずかしい」


私は何かおかしいと思った。
撫子の様子がおかしい、恥ずかしいと言いながら笑っているけど、目が笑っていない?


「ねぇ、撫子?撫子だよね?
英雄君はどうしたの?」

 私も思わず、撫子達に近寄って聞いてしまった。


「えー、英雄君なら元の世界に帰っちゃったよ」


え?帰る事出来るの?確か、賢さんのご先祖様が帰る方法探したけど、見つからないままにこの世界に残ったって聞いたけど、城の人達は帰す方法を見つけたって言うの?


「ねぇ、そ、それってどうやって?
逆召喚とか?」


私は何となく嫌な予感がして、どうやって帰したかを聞いてみた。


「うーん、ケイン言っていい?」

「いいよ。撫子の手で帰したんだからね」

「えっとね。殺して元の世界に帰したの」


……私は一瞬思考が停止した。

え?、この子、今何言ったの?
殺した?英雄君を?
何で?意味分からない!


「ねえ、撫子?この世界で死んだら元の世界に戻れるの?」

「そうだよー、ケインやマーブル様がそう言ったんだから間違いないよ。
それに、殺したのは英雄君だけじゃないしね。もう、レベル上げの為に結構殺しちゃったよ」


嘘、こんなの撫子じゃない!
撫子は操られてるんでは無いだろうか!


「ケインさん、本当の撫子を返して下さい!
前に言ってた隷従の何とかで、撫子を操ってるんでしょ?こんなの撫子じゃないです!」


「煩いなぁ、撫子、お仲間達も一緒に元の世界に帰らせてあげようよ」

「そだねー、じゃあサッサと終わらせるから、ケイン、デートの続きをしてくれる?」

「勿論だとも、最後は何時ものキスだけでは終わらせないよ」


え?私達を殺すとかの話をしているなか、デートの話に持っていくの?


「撫子!アンタ自分が何言ってるか分かってるの?レベル上げるのに人を殺したとか、言ってるけど、どの位レベルが高いのよ」


「えー、どうしよっかなぁ。
ま、いっかぁ、今から死ぬんだし教えても!
私のレベルはね12だよ」

「え?12?22とか120とかじゃなくて?」

「そうだよー、凄いでしょー」


冗談を言ってる様には見えないところ、本気で12の様だけど低過ぎない?
私でさえ、レベルは20はあるのに?

私と撫子が話していると、ケインが抜き身の剣を構えて振り落として来た。
だけど、私に当たるギリギリの所をモブ君が止めてくれた。


ケインは撫子と話している私を殺そうとしていた。
モブ君が止めてくれなかったらと思うとゾッとする。

「モブ君、ありがとう」

「いえ、良いですけど貴方はこっちのアリスさんと、そちらの女性に戦わせようとしていた筈だけど、実際にはアンタが攻撃してきた。
俺はアリスさん達を守り、強くすると師匠と約束したんだ!
だから、アンタがこの人達を殺すというなら、俺が相手をしてやる」


モブ君がケインと対峙して、モブ君も剣を構えてケインと戦うみたい。
私はケインはモブ君に任せて、撫子の説得をしようと思って話しかけた。


「撫子、一旦此処を離れよう?
ケインさんの邪魔になりたくないでしょ?」

「クスクス、アリスも面白いね。
ケインが負ける訳が無いじゃない?
だから、邪魔にすらならないよ?」


 ダメだ、撫子は完全にケインを信頼?しきっている。
 私はジャス君と愛にアイコンタクトを取って撫子を囲んだ。
 そして、撫子の後ろに回ったジャス君が撫子を捕まえようとした瞬間、撫子の持ってた剣の柄がジャス君のお腹にメリ込んで、ジャス君は倒された。

愛も側面から掴もうとしていた所を、剣の鞘で叩かれて横に吹っ飛び、愛もジャス君とほぼ同時に倒された。

え?本当にレベル12なの?
と、疑うレベルでの動きだった。


「ねぇ、撫子、本当にレベル12なの?
動きがスムーズ過ぎる気がするんだけど」

「クスクスそうだよ。本当だよ?
ただし、何時もケインや城の兵士相手に訓練しているけどね?複数でね」


成る程、だから一人で多数の人の相手が出来るのか、でもだからって撫子を正気に戻すのを諦めた訳じゃない。

色々と考えていると、撫子が私に抜き身の剣で斬りかかってきた。

速い!反応出来なくて思わず目を瞑った。
すると『ガキン』と音がして恐る恐る目を開けると、ビビとポケ君が助けてくれた。


「アリス、仲間内の問題だろうから、手伝う気は無かったけど、アリスが危ないと思ったから手を出しちゃったけど、良かった?」

「ビビ、ありがとう。ポケ君もありがとう」


ビビは撫子の剣をダガーで受け止めて、ポケ君は槍を撫子の顔スレスレの所で止めていた。


「アリスばかり、こんなに仲間がいてズルイズルイ!
 ケイン!引こう!アリス、今回は私が引いてあげるけど、次は殺すからね!
街でも、後ろを気にしなよ?」


 撫子はそう言うと、後ろに飛んでケインの元に向かった。
 ケインはモブ君と睨めっこしたまま、剣を構えていただけだったから、撫子の言う事を聞いて剣を構えたまま、後ろに下がって撫子と消えて行った。


「「モブ!兄ちゃん!大丈夫だった?」」

「あぁ、あの人中々の強者だよ。
剣を交えてたら、俺負けていたかも知れない」


「やっぱり、城の騎士副団長の肩書きは伊達じゃないって事なのかな?
逃げられちゃったけど、さっきはありがとね。ビビとポケ君とモブ君」

私の騎士副団長と言う言葉に、3人は驚いているみたいだ。


「え?アリスさん副団長って?」

「実はね、私達はこの世界の住人じゃないの。それで、さっきの女の子は勇者でね。
この国の城の人達に召喚されて……」


と、私達がオジサンと会うまでの経緯と、オジサンと別れてまで残った事の説明を、モブ君達3人にした。

そして、これからの作戦や、強くなる為に何すれば良いかを一度宿に戻って、考える為にジャス君と愛を起こして宿に戻る事にした。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

転生したら死にそうな孤児だった

佐々木鴻
ファンタジー
過去に四度生まれ変わり、そして五度目の人生に目覚めた少女はある日、生まれたばかりで捨てられたの赤子と出会う。 保護しますか? の選択肢に【はい】と【YES】しかない少女はその子を引き取り妹として育て始める。 やがて美しく育ったその子は、少女と強い因縁があった。 悲劇はありません。難しい人間関係や柵はめんどく(ゲフンゲフン)ありません。 世界は、意外と優しいのです。

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]

ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。 「さようなら、私が産まれた国。  私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」 リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる── ◇婚約破棄の“後”の話です。 ◇転生チート。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。 ◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^ ◇なので感想欄閉じます(笑)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。