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第一章 プロローグのプロローグ編

27 破壊剣

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 七色に輝く剣。
――バタフライレインボウ。

 私がそう名付けました。
 柄に蝶、刃渡りは七色に光るみてくれだけは最高にイイ剣です。
 これを見せれば多少相手を怯ませる事くらいは出来るでしょうと、寮の部屋から持って来ました。
 宅配で自宅から寮へ送った為に探すのに時間が掛かりましたが、ギリギリ遅刻せずに間に合った様です。

 それに数名には効果がある様で、持って来た甲斐があると言うものですね!

「なんでお前がデストロイソードを持っているんだ……」

 今回立会人を申し出てくれた王子が此方へ指を差します。
 余り人に対して指を差すのは感心しませんね。しかもデストロイだなんて、この剣は何かを破壊する様な野暮な剣じゃないです。

「……何をアレク様は持ってるんですか」

 目を見開いた一人。ハルさんがテルルへ問いかけています。……仲間まで驚かす積りは無かったのですが。

「あれはその昔、蛾の魔物をアレクが倒した時にドロップしましたの」

「蛾ですか……蝶ではなく?」

「ええ、間違いなく蛾でしたわ。それよりも貴女のお友達も代理に立って頂けると理解しても宜しいの?」

「あ、紹介する間も無かったですね。此方ローナ――「ハルさん。私の事は謎の魔法少女と」

「謎の魔法少女?」

「私の正体がバレると色々面倒なので」

「んーそうだよね、ごめんね。私みたいな平民と仲良くするととばっちりに会っちゃうもんね」

「いえそう言うネガティブな訳ではかくてですね――「いいの!気にしないから!でも分かったテルマイル様、こちら謎の美少女です!」

「え?美少女!?ハルさん!魔法しょ――「謎の美少女ですか。中々自分を美少女と言える人はこの世界でも少ないでしょうね。謎の美少女さん、貴女の力お借りしますわ」

「え、あ、だからそうじゃなくて」

「おぉ、謎の美少女さんも私に助力して頂けるんですね。その佇まいは魔法が得意と見ましたが如何です?私魔法はからっきしなので今度教えて頂けれ――バフッ!」

 何故かテルルから肘が鳩尾にクリーンヒットします。何故?

「立会人の王子に申し上げる。当初の予定では二対一の勝負だったはずですが、そちらの強引な理由付けで三対一となりましたが、こちらも一人助っ人を入れさせて頂きたい!謎の美少女嬢よここへ」

 テルルは謎の美少女さんをグイッと両手で前に押し出します。
 何故でしょう、テルルの肩が震えている様に思えます。

「謎の美少女?……その女はローナ……コホン。まぁ一人くらいなら別に構わないと思うがアリス嬢、それでもいいかい?」

「わ、私はもうなんでもいいです!」

「そ、そうかい?じゃ三対二で今回の決闘を開始する事にする。なおこの勝負に負けた者は代理人含め即刻自主退学して貰うのでその積りで」

 王子の宣言に私は相手を見ます。
 なにせ相手は二人と聞いていたので、三人に増えた事に多少のイラつきが在ったのは認めましょう。

 ですが増えたであろう一人を見て私の中のワクワクが今にも爆発しそうです。

「なんだかんだと言って修行を付けて頂けるのですね、剣聖勇者殿」

 私は嬉しさの余り、ズイズイと師匠の方へ近づきます。

「ちょ、それよりお主なんて物を持っとるんじゃ!」

 今更ながら私の剣を指摘して来ます。
 ですが師匠。そんな簡単な手には乗りませんよ?
 驚いた振りをして油断を誘い一気に来るつもりですね。

 しかも既に仲間とも打ち合わせが済んでいる様です。
 残りの二人も驚きを通り越して恐怖に顔を歪めてます。なんと完璧な演技力。
 これは本当の本気で行った方がいいですね。
 ならば此方ももう一人の助っ人と打ち合わせをした方がいいですね。

 付け焼刃の作戦となりますが、打ち合わせは大切です。

 そうと決まれば早速彼女の元へ――。

 あれ?――謎の美少女さんは私が近づくとその分距離を取ります。

「どうしました?謎の美少女さん」

「あ、いえ。すみません。その剣を一度仕舞って貰えますか」

 おっと、これはいけません。抜き身で持ち歩く物でもありませんでしたね。

「これでいいですか?」

「え、ええ。それで何?」

「それなんですがね。向こうも何か作戦がある様なので此方も何か作戦をと思いまして」

「そう。でもどんな作戦も無意味よ。相手は剣聖勇者。私達に勝ち目は……」

 確かに師匠は強いです。ですが油断を付く事は可能かも知れません。

「……あ、悩む事もないのか」

「どうしました?」

「この勝負勝てるかも知れません」

「聞きましょう」



 
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