父親に会うために戻った異世界で、残念なイケメンたちと出会うお話【本編完結】

さようなら日本

聖女様は演技派女優でもある

ばあちゃん、俺は今凄いものを見てる。
多分三者面談だったはずの時間は、女優三好敬子の独壇場だった。

真実七割と三割の嘘で自ら創ったシナリオを、それはそれは華麗に語った。

北欧のとある国のお貴族さまと留学先で出会い恋に落ちた母さん。愛し合う二人は結ばれて俺が生まれる。けれども母は庶民、お相手は由緒ある貴族、その重圧と価値観の違いに苦しんだらしい。
で、日本に帰ってきて母と共に俺を育てた。
夫はずっと妻と息子を思い、母も今のままでは良くないと思うようになった。
母親を看取り、有紀も卒業する。
この世にいないと説明してた有紀にも真実を話したので、卒業後は一旦父の元へ有紀をつれて帰ります。だから今年は受験しません。

なるほど、うん…
さすがカリスマ、映画できちゃうね。

普段あまり表情を変えない担任が、瞳を潤ませて興奮してる…

「お母さん、そんなご事情があったなんて…」

ちょっと脚色しすぎてるけどね…

「有紀さんには日本は狭すぎると常々思ってたんです…私」

はぁ…そうなんですね。

「お母さんの今日のお話で納得しました。」

おっと納得されてしまった。

「有紀さん、あなたの実力があれば海外の大学でも大丈夫だと思います。まずはお父様との時間を大切に…進路はゆっくり考えたらいいわ！」

いつもの教室で繰り広げられた茶番劇は、興奮した担任の言葉で幕を閉じた…