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さようなら日本

思ってたより凄い人だったらしい

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帰ってきた母と駅で合流して蕎麦を啜る。
祖母が好きだったこの店も、有紀の好きな場所だ。

「忙しくなりそうな感じなの?」

「そこまでではないけど、ちょっと騒がしくなりそうな感じ?」

「騒がしく?」

「うん、帰ったら話す。藤田さんが有紀にお土産持たせてくれたし…有紀の美味しいコーヒー飲みたい…」

おっ、藤田さんスイーツ!間違いないやつだ。
それは絶対に美味い…
でも改まっての話ってことは、もしかしてあれか?有紀は祖母の最後の言葉を思い出していた。

年齢不詳の美魔女がモジモジしている…
春斗の兄ちゃんいたら悶絶するやつだ…
あの人ホント母さん好きすぎるよな…
取り敢えずお土産食べよう…
今日も旨いなぁ、藤田さんホントに優秀…

「あの…母さん?モジモジは可愛いけど…」

「いや、だって…恥ずかしい…」

もしかして…もしかするのか…
いいよ、母さんの人生だ。
祝福しよう…兄ちゃん、残念だったな、俺の父親になる日は来ないみたいだぞ…

「藤田さんのこと?」

「えっ?藤田さんがどうしたの?」

あれ?違うのか?藤田さん良い人だぞ、イケメンだし、一流会社勤務だし、美味しいお菓子くれるし…

「あのね、母さんさ、小説の話いつも誤魔化してたでしょ?」

あ、そっち?ていうか、書いてるのは小説だったんだ…えっ…官能小説…?
いやダメだよ母さん、俺だって恥ずかしい…

「アニメ化が決まってるんだ」

ほぅアニメ化…

「で、そろそろ有紀にもちゃんと伝えなきゃなぁと…」

うんうん、与えられる情報が少なすぎて全然伝わってないけど、謎多き母は小説家で、作品がアニメ化されるのね…

差し出された紙袋に数冊の本。
あれ?このタイトル見たことあるぞ…
読んだことはないが、知ってる。

結論から言うと、母は流行りの異世界転生小説のカリスマだった。
読んだことはなくても見たことあったのは、朝のニュースで見たから…
「遂にアニメ化決定!」みたいなやつ…

母さん…思ってたのとダイブ違うけど、なんか凄い人だったんだね…

母さんが言った「いろいろ」とは、俺たち二人の今後の生活のことらしい。

「とりあえずそれ、読んでみて…恥ずかしいけど…読んだら感想聞かせてね…お風呂入ってくる!」

そう言って母は去り、残された俺は母親が官能小説家ではなかったことに安堵しつつ、本に手を伸ばした…




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