溺愛攻めを怒らせた

母

あれが…嘘だとは思わない。
それなりに愛された。

過保護なほどに……

言葉と気持ちが矛盾し、あれ、と思う。
もうずっと会ってない母親。
ハルのおかげかせいか疎遠になった。
今はもう、会いに行きたいと言えば、条件付きで許してくれるだろう。
だけど…

「……はぁ」

頭をかかえる。
自分の気持ちがわからない。
会うのが嫌なのは、はっきりわかる。
こめかみを抑え、苦しくドロドロとしたものを吐き出しそうになる。
視界がぼやけ、なんとか気持ち悪い思いを我慢した。
……
 

一度、会ったことがある。
いつもどっしり構えているロンとは違い、ロンのお母さんは、少しおどおどしていて自分に自信が無さそうに見えた。
毒親のイメージ、とは遠そうな。
だけどロンは、母親とかたくなに連絡を取ろうとしない。
最初から、いないものかのように振る舞う。
…

急に俺に、ロンのお母さんから連絡が来た。
今までまったく、ロンへの連絡さえなかったというのに…
やっぱり…と思った。
ロンへの心配は一切なかった。
ただ、来て欲しい行事に行くようお願いします。と丁寧に言われた。
あれが、何年も連絡がなかった息子に対してなのかと疑問に思った。

また、ロンのスマホに母さん、の文字が浮かぶ。
けたたましい音が、ロンの母親を表しているようだった。
…

連絡を無視してたら、ほとんど連絡も来なくなった。
思い出すと…嫌な記憶だらけだ。
まだ謝られてないこと。
ヒステリックになり、おかしなことを言い激昂する母。

大人になったら縁を切る、とよくそういう時思ったものだ。
綺麗な言葉と同じくらい、よく酷い言葉を投げつけられた。
母が祖母から言われたことがある言葉を。
まったく同じ言葉を。 

『お母さんに傷つけられたの…！あの言葉で…！！』

泣きながらそう言っていた母が目に焼き付いている。
その時、ぼくの意識は遠くにあった。

ぼくは、自分が傷付いているのかさえわからない